07:特典物はどのようにして作られるのか
店舗特典のキャラクターがヒロインAばかりだ。
店舗特典に自分の好きなヒロインBがいない。
そんな経験はないだろうか。
実は店舗特典は店舗側がお金を出して作る関係で、メーカー側からどのキャラクターかや、どういった特典にするかは基本的に指定することはできない。
店舗側から「ヒロインAでタペストリーを作ります。構図はサンプル画像のように――」と指定が来るのだ。
だから人気が出そうなキャラクターに偏ってしまい、一部キャラの特典がなかったりする。
基本的にと言ったのは、メーカー側でお金を出して特典を追加してもらうこともあるからだが、体力のある大手メーカーくらいしかそんなことはできない。
なので、特典物についてはメーカー側は店舗側からの希望に従うのみである。
店舗がどれほど特典にお金をかけるかは、その作品の期待値による。
売れることが約束されていればメーカー側から「お金出すから作って」とお願いしなくても、『抱き枕・タペストリー・ドラマCDの3大特典!』とかになったりするのだが、売れるかどうか読めない、売れるか怪しい作品だと『テレカのみ』になったり『特典物無し』になったりする。
他にも特典が豪華になるかどうかは“とある店舗”の判断次第という側面もある。
名前を出すことはしないが、その“とある店舗”の特典物が1つだけだった場合、その他の店舗がどれほどその作品を大プッシュしようとしても、つけられる特典は1つだけ。
“とある店舗”が2大特典なら2つまで、3大特典なら3つまでと、特典数や豪華さは“とある店舗”が基準になっている。
なぜかと言われればそこが最大手だからで、“とある店舗”以外の店舗を優遇してしまうと、「うちでは取り扱わない」と怒ってしまうからだ。
「そんな馬鹿な」と信じられないかもしれないが、一度どのメーカーのどの作品でもいい、特典物のページをじっくりと見てみて欲しい。
まず間違いなく“とある店舗”の特典物が最初に紹介されているし、他の店舗がキャラクター1人なのに対して、“とある店舗”では2人以上となっていることも多い。
このように“とある店舗”が最も豪華で尊重されなくてはならないから、他の店舗が「抱き枕とタペストリー作りましょう!」と提案してくれても、「“とある店舗”さんがテレカのみなので……すみません」と断らざるをえないこともある。
発売日に未開封の中古が山積みにされている光景を見たことがあるエロゲユーザーは多いだろう。
あれは複数買いをしたユーザーが特典物とゲーム本体1本だけを手元に残し、その他をすべて売り払ってしまうために起こる。
よく批判される某アイドル商法と同じ事をエロゲ業界もしているわけで、歪だと感じなくもないのだが、『はじめに』で話した通りそういった複数買いをしてくれるユーザーに業界全体が支えられているのが現実である。
だからこそメーカー側も豪華な店舗特典をつけることに必死になるし、なんとかして“とある店舗”を口説き落とそうとする。
店舗特典はメーカー側ではコントロールできず、キャラが偏ってしまうことを避けたいと思いつつも、どうにもできないのだ。
もし期待している作品の特典が微妙だった場合、メーカーよりも店舗に希望を送ってみるといいかもしれない。それで店舗が動いてくれるかどうかはなんとも言えないが、決定権を持たないメーカーに文句を言うよりも、そちらの方がまだ効果はあるだろう。
もちろん「このゲームなら複数買っても良い!」と思ってもらえることは大変嬉しいのだが、どうか無理のない範囲でゲームを買ってくれればと思う。
商売的にはそうも言ってられないのだが、買ってくれて遊んでもらえるだけで、クリエイターとしてはとても嬉しい。
複数買いした作品が原画だけ特典だけのがっかりゲーにならないよう、より精進していきたいものである。