ありんす探偵社へようこそ   作:善太夫

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続 亡国の吸皿姫

「やったぁぁああ! ようやく届いたぁぁ! お待ちかねのと・く・て・ん・小説ぅう! いやっほうぅぅ!」

 

 城砦都市エ・ランテルベーカリー街221B『ありんす探偵社』では助手のキーノが大騒ぎしていました。

 

 キーノは片手にA5サイズ位のダンボールの包みをもってクルクルと踊っています。

 

「と・く・て・ん! キーノちゃんの亡国の吸血姫! はやく読みたいなぁ! ウフフフフフ」

 

 ありんすちゃんは呆れたようにため息をつくとキーノに言いました。

 

「ちかたないでありんちゅ。キーノは今日お休みで良いでありんちゅよ」

 

「ありがとう! ありんすちゃん! いやっほうぅぅう!」

 

 キーノは小躍りしながら自分の部屋がある屋根裏に急ぐのでした。やれやれ。どちらが幼女かわかりませんね。

 

 

※   ※   ※

 

 

「さて、読むぞ!」

 

 キーノはベッドにうつ伏せになると『亡国の吸血娘(5さい)』を開きます。サイドテーブルには飲物を用意してまさに準備万端です。

 

 あれ? 『亡国の吸血娘(5さい)』って……ん?

 

 ゴホンゴホン。私の記憶が確かなら……それ……主人公がありんすちゃんのヤツです。たぶん。

 

 読み進めていたキーノの顔が険しくなっていきます。どうやら15ページ程読んで、さすがにおかしいと気がついたようです。

 

「……こ……これは……」

 改めて表紙を確認します。アインズ、いや、鈴木悟の肩に乗っているのはキーノではなくありんすちゃんです。

 

「……ニセモノ……か? なんという事か……いったいどうしたら……」

 

 キーノは頭を抱えるのでした。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

「……仕方ない。こうなったらオークションで手に入れよう」

 

 キーノは悲痛な表情で決断します。軍資金は招き猫の貯金箱を壊して用意した十万円です。ブルーレイBOXが合わせて三万円で買えましたから充分すぎる金額のはずです。

 

 キーノはスマホでメル■リやヤフ■クに出品された『亡国の吸血姫』を探し始めました。

 

「うーん……落札金額は七万円から、か。ずいぶんと足元をみられたいるものだな。……仕方ない。七万円で入札っと……うーん。どうせならハンドルネームを『国墜としのキーノちゃん』とでもしておけば良かったかな? しかし個人的には『モモン様LOVE』にこだわりがあるからな……ああ、モモン様。私は頑張ります」

 

 熱心にスマホの画面を眺めるキーノの顔がだんだん青ざめていきました。なんという事でしょう! 各オークションに出品された『亡国の吸血姫』の価額がどんどん上がっていくのです。

 

 みるみるうちに二十万円の価額に跳ね上がり、謎の人物『純白の花嫁』に次々と落札されていくのでした。

 

「……なんという事だ! いったいこの人物は何者なのだ? これでは全ての『亡国の吸血姫』を落札するつもりなのか? そ、そんな馬鹿な……」

 

 あ然とするキーノの目の前で出品された『亡国の吸血姫』は全て高値で落札されていくのでした。

 

「……私はヒロインなのに……」

 

 結局、キーノは一冊も落札出来ませんでした。

 

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 ナザリック地下大墳墓 第十階層──

 

「良いわね。金に糸目はつけないわ。出品された『亡国の吸血姫』は全て落札するのよ!」

 

 アルベドの指揮の元、一般メイド達がパソコンの画面を真剣な眼差しで監視しています。

 

「……アインズ様、いいえ、モモンガ様のヒロインはこのわたくしだけ! 例え特典小説の中でもわたくし以外の女があの御方のヒロインなんて許されないわ。このナザリックの全力をもっていかがわしいキーノとやらの存在を抹消するのよ。そう、例えるならあれは悪貨。そのままにしておいたら良貨を全て駆逐してしまう。ああ、モモンガ様。貴方のヒロインはこのワ・タ・ク・シ……」


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