ESCHER (エッシャー)

「M.C.エッシャー」・訳者不明(Benedikt Taschen )


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これはアート関係専門古書店の店頭でよく見かけるシリーズである。私のは無造作にダンボール箱に放り投げてある中から掘り起こした。画集というと大型本で重いのが多く収納に困るが、このシリーズは版型こそ大きいが、簡易製本で薄く軽いので助かる。定価の印字はないが、500円から1000円くらいで入手できる。ドイツの出版社の日本語版であるが、詳細は不明。ちょっと見るにはこの程度ので十分ではないかと思う。
エッシャーという人、見るからに狷介孤高の人物で、実際、人付き合いが苦手だったと言われている。その作品も狷介孤高で、今ではこの種の作品を作る人も多くなったが、先駆者であろう。彼の作品は、自然とか美と言った、見る者に迫る来る感動ではなくて、脳の平衡感覚が失われる非日常的な感動である。
あれがこうなって、これがあれになって、それで……、とどこまで行ってもキリがなく、見る者は無限地獄に落ちる。われわれは始点があって終点がないと落ち着かない。表があれば必ず裏があるに決まっている。そういう世界の住人だから怪しむに足りない。だからメービウスの輪の世界はやっぱり違和感があるのだ。
表紙画のタイトルは「婚姻のきずな」という。どこから始まっているのかわからない、永遠の連環である。エッシャの作品は数学や物理で説明できるものあると思う。だまし絵的なもの、目の錯覚を利用したもの、平面の利点を利用したもの、それらの組み合わせによるものもある。私はすべてが好きというわけでなくて、プラナリアやだんご虫の這ってるもの、周辺部に向かって細かくなっていくもの、天地のわからないものは不安で気持ちが悪くなる。どちらかと言えば、だまし絵的な作品がよいと思う。


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「滝」 1961年作。エッシャーの作品で最も有名な作品の一つである。
集合住宅のようだ。右側に洗濯物を干している女性が、下には空を見上げている男性がいる。左には古代のシダ植物が茂っている。ひときわ目立つのは水路である。上から流れ落ちる水が水車を回し、ジグザグの水路を通って、また下に落ちて水車を回す。なんと夢の永久機関ではないか。平面だとこうも簡単に実現できるのだ。水は蒸発するから、たまに加えればよいだけである。これなら原発は不要だ。しかも環境汚染の心配は無用である。こんな安上がりなエネルギー源もない。柱の位置が狂っているけれど、それは四次元の世界のことで二次元の世界では問題にならない。
もうくたびれ果てて、二次元の世界に行って遊んでたい。この絵の中にもう一人増えたら、それは私だと思っていただきたい。決して捜索願なんか出さないようにお願いします。Xとyだけの世界ってどういう気持ちになるんだろうか。想像しただけでも楽しい。




画像「描く手」 1948年作。ニワトリが先か、卵が先か。左手が右手を描いて、右手が左手を描いて、出来上がると絵から飛び出してくる。一番初めはどっちが先に描きだしたのだろうか ? 左手が無いと右手は描けないし、右手が無いと左手は描けない。
どうもこれは起源の謎を暗示しているようだ。
われわれの常識で言う起源なんてものは宇宙には無くて、グルグル回って永遠の連環を構成しているのじゃないか ? だから宇宙では、始点とか終点なんていう考え方はナンセンスで、すべてメービウスの輪状態でつながってるのかもしれない。…と私は思うだけである。このまま描き続けると、平面から人が現れるわけだ。二次元の世界からやってきた人は、四次元の世界が窮屈でつまらないと思うだろう。お気の毒に……






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