このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
京都産業大学、東京大学、芝浦工業大学の研究チームが2019年10月に発表した「Rapid Prototyping of Paper Electronics Using a Metal Leaf and Laser Printer」は、プリンタとアイロンを用いて、金属箔を電子回路にするプリンテッド・エレクトロニクスのラピッドプロトタイピング手法だ。
銀ナノ粒子インクなどの化学薬品やレーザーカッターを使用する従来の手法ではなく、市販レーザープリンタとアイロンを用いるため、作成が容易で低コストだ。
ユーザーは、任意のイラストソフトウェア(Eagle、Adobe Illustratorなど)で電子回路を設計し、レーザープリンタで印刷。印刷物の上に金属箔、その上から160度以上に加熱したアイロンで熱圧着を実行する。最後に、電子回路以外の金属箔を手やブラシで払うと完成する。
トナー転写紙を用いると、印刷した電子回路をさまざまな素材にアイロンで転写できる。転写した素材の上から金属箔をアイロンで圧着して作成する。素材を選び転写することで電子回路が曲がって壊れないのも特徴。さらに、銅箔と低融点ハンダを用いれば、電子部品をハンダ付けもできる。
実験では、木材とサテン生地でサンプルを作成。枡の表面に圧着し、LEDを装飾することで光る文字を演出。サテン生地上に圧着し、衣類に取り付けてウェアラブルデバイスとして機能した。その他の活用にも期待したい。
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