こんにちは。釣りを趣味としながらAI開発を本業としています、つりくず(@kuzu_tsuri)です。今回も、釣りに役立ちそうなAI論文を発見したので、ご紹介いたします。
イギリスのバンガー大学のMonkmanらは、機械学習技術を使って、写真から魚の大きさを測定することに成功しました。この技術が応用されれば、釣った魚の写真をスマホで撮影するだけで、体長測定ができるようになるかもしれません!Monkmanらの研究を詳しく見ていきましょう。
目印がなくても魚の大きさが予測可能に
Monkmanらの研究のポイントは以下の通りです。
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研究の詳細を以下で述べます。
簡単そうで難しい!画像から物体の大きさの測定
今回のテーマは非常に単純な課題に見えます。確かに、写真に写っているものの大きさを測定することは既存の技術でも可能です。
では、なぜ2019年にもなって、魚の大きさを機械学習で測定しただけのものが論文になるのでしょうか。理由は、既存技術には「カメラの解像度の固定が必要」という制約があるためです。
カメラ画像から物体の大きさを測定するためには、特定のカメラにて、同一の解像度、同一の条件で写真を撮る必要があります。そのため、カメラの種類が変わることで、AIから導き出せる測定結果が変化してしまうのが現状の問題です。
そこで、研究者らは様々なカメラで撮影された魚の画像を利用し、魚の大きさ(体長)の測定に取り組みました。
ちなみに今回ご紹介する論文は、単純に魚の大きさを測定することがモチベーションなのではなく、どんな条件でも物体の大きさを認識できるモデルを構築することが主なモチベーションとなっています。
R-CNNにてシーバスの画像を学習
今回の論文では魚種を絞って学習を行います。というのも、いきなり全ての魚種の画像を学習をさせるのは、データの収集の観点、および学習するアプローチが正しいかを判断するという点において難易度が上がるためです。
そこで、Monkmanらはスズキを対象の魚種として選定しました。スズキといえば別名シーバスと呼ばれており、釣り人のみなさまでしたら狙ったことがある人もたくさんいらっしゃると思います!私自身、シーバスが対象魚種ということで、テンションが爆上がりです!
具体的には、どのようなアプローチで学習させたのでしょうか。
まずは、データの収集とアノテーションを行いました。機械に学習させるにはスズキの画像データだけでなく、その大きさ(体長)と紐づける必要があります。そのため、インターネット上から918件のシーバスのデータを集めて、学習と評価に利用しました。
集めた画像には、写っているスズキが何cmなのかをアノテーションする必要があります。そこで、釣り人が投稿したスズキの大きさのデータを利用し、アノテーションを行いました。このようなデータが集められたのもの、スズキが世界中の釣り人にとって人気の魚種であるがゆえになせる技ですね!
次に、このように地道に収集したスズキのデータを、「Region Controversial Neural Network(R-CNN)」という手法で学習しました。
R-CNNはまず画像データを解析し、意味の持つ物体でありそうな候補を提案します。その後、この候補をリサイズし、CNNにより特徴の抽出を行います。その抽出した特徴量と実際のスズキの体長を紐づけて学習し、スズキの体長を予測できるモデルができあがります。
93%の精度でスズキの体長を測定できるモデルが完成!
地道な学習を続けた結果、93%の精度で予測できるモデルの構築に成功しました!
この時のカメラの解像度は400 × 300 pxです。これより解像度をあげるとより精度が上がり、266 × 201 pxまで解像度を落とすと精度が53%に低下することがわかりました。
研究紹介は以上です。
性能の良いスマホカメラでも解像度が1920 × 1080 px近くあるため、この技術を応用することができれば、スマホで撮影した魚から体長の測定ができるようになるかもしれません。
また、定点カメラを湾内に配置することで、その日、どれくらいの大きさの魚が釣り場にいるのかデータが取れるようになるかもしれないですね。
特に定点カメラは、データ量が膨大になる特性上、画質が低いことが多々あります。今回ご紹介した技術が応用できれば、画質が低い定点カメラでも、より良いデータをたくさん取れるようになるかもしれません。
いずれにせよ、釣りをする方にとっては期待の技術となりそうです!
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今回紹介した論文:Monkman et al, 2019, Method in Ecology and Evolution, vol10,2045-2056- DOI
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釣りを趣味としながらAI開発を本業としています。Twitter:@kuzu_tsuri