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#4『あんスタ!』こだまさおり&松井洋平&桑原 聖によるアルバム全力レビュー&インタビューを期間限定で公開

2020.01.02 <PASH! 2020年1月号>

2wink、Trickstar、Edenをピックアップ!

 PASH!PLUSでは、2020年1月7日まで、PASH!2019年10月号から4号連続で掲載された『あんさんぶるスターズ!』アルバムシリーズのスタッフインタビューを限定で掲載! 2020年のお正月、アルバムを聴きながらおおいにもりあがりましょう!

※本インタビューは2019年12月に発売したPASH!2020年1月号掲載のものです。

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作詞家・こだまさおり&作詞家・松井洋平
&プロデューサー・桑原 聖座談会

2te

スバルは天性のアイドルの才能があると思う

――2wink、Trickstar、Edenのユニットとしての魅力を教えてください。

松井 2winkは、プライベートとアイドルとしてのイメージが離れているユニットですよね。楽曲はテクノポップで明るい感じですが、あそこまで抱えているものが大きいとは…。でも逆に、努力で人はどんな姿にもなれることを体現しているユニットでもあると思います。自分たちが望む方向へ、自分たちを引っ張っていけるふたりというか。

こだま 紆余曲折しながらも、ふたりでひとつの2winkという彼らの理想にちゃんと近づいていますよね。

松井 もしかしたら、生まれた瞬間にふたりで喜びあった姿が、ふたりにとってはゴールだったのかもしれなくて。そこに、ぐるっと回帰していくようなイメージもあります。でも、彼らには良い先輩がいますから、この先もきっと大丈夫だと思います。

桑原 楽曲面でいうと、1年を通した彼らの心境の変化を、同じ音楽ジャンルのなかで時期に沿って描くことができたユニットでもあると思います。

こだま 確かに。私は2winkの歌詞を書くことが多かったのですが、ふたりの心境をにじませることが多かったと思います。

――Trickstarはいかがでしょうか?

松井 主人公だけど主人公じゃない、本当にトリックスターな存在ですよね。

桑原 主人公はスバルだけど、リーダーは北斗というのが面白いですよね。

松井 でもやっぱり、スバルの引っ張っていく力や、最後に踏ん張れるところが彼のすごさだと思います。それに、他のキャラクターが口をそろえてスバルは天才だって言うんです。それは恐らく、実際にスバルを前にした人が感じる部分なんだろうな、と。

こだま アイドルって、単純に言えば他人を笑顔にすることができる人だと思うのですが、スバルは、それを天性の才能でできる人ですよね。

松井 そうなんですよね。英智は天才たちの心を折ることで革命を成し遂げたけど、折れない心を持つことで更なる革命を成し遂げた明星スバルという天才、この対比がすごくいいな、と思います。

桑原 でもそんなスバルも、この4人じゃなかったらここまでのことはできなかったと思わせる、絶妙なメンバーバランスですよね。

――Edenはいかがでしょうか?

桑原 最初にユニットの説明をされたときに、「EveとAdamが合体してEdenになります」と言われたときの衝撃が忘れられない(笑)。楽曲を作るときはまだ細かい人物設定は分からなかったのですが、とにかくこの4人の圧倒的なアイドル性を描きたいなと思っていました。

こだま まだ個々のキャラの深掘りがされているわけではないけど、それでもすごい情報量のあるユニットですよね。

松井 気軽に潮干狩りに来たら、最初のひとすくいでバケツいっぱいになっちゃった、みたいな(笑)。個人的には、茨先生の存在が大きいと思う。どこまで見通しているのか…。楽曲的には、ユニット名のとおり、旧約聖書の神のイメージで書いていたので、割と書きやすかったですね。

各曲ピックアップ

2wink

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Play “Tag”

桑原 節分祭で歌ったイメージで、「ふたりの鬼ごっこ」というテーマでお願いしてます。
松井 鬼ごっこは英語でなんて言うんだろうと思い調べたら「Play tag」という言葉をみつけて「こんな奇跡ある?」と思ったんです。タッグ(tag=ふたり組)を演じる(play)というこの言葉が、本当はふたりでひとつなのに、あえてふたりであることを演じている葵兄弟の在り方にぴったりくると思いました。ふたりを演じていただけで、本当は「ふたりぼっちのひとり」なんだ、と。そんな僕らがふたりでひとつの鬼になったらファンのみんなを捕まえちゃったから、今度はみんなが僕らを追いかけてね、って。その意味の「僕らを追いかけて」という歌詞です。もうひとつ、「鬼」という言葉は、実の父から気持ち悪いと言われ人間じゃないものとして扱われていたという意味での「鬼」でもあって。でもそこまで深く考えずに、2winkのふたりが、幸せな瞬間は分け合えるんだと気付いた歌詞だと思っていただいていいと思います。まだまだふたりの物語は続きますし、彼らの世界観が完全に出来上がっているわけではないのですが、“それでも僕らは十分幸せで、これからも幸せになれるんだ”と。そんな自分たちが感じた幸せを、もっとたくさんの人に分けたいという2winkの願いがこもっています。最終的にファンのほうを向くのが、たくさんの人を喜ばせてきた彼ららしいなと思います。

2wink Introduction

桑原 テーマは「2winkなりの自己紹介」。2winkはまだ自己紹介ソングがなかったので、1stアルバムのこのタイミングで作ることにしました。
こだま クラブのオープニングのような雰囲気というオーダーがあったので、最初は薄暗くて、けれど少し顔も見えるところから曲が始まるイメージで歌詞を書きました。女の子はライブにオシャレして行くと思うのですが、2winkの子たちは、女の子のそういう姿に対して「ちゃんと見えてるよ!」って言ってくれそうだと思い、「オシャレしたMusic Lover」という歌詞を入れています。ふたりの名前を入れてほしいというオーダーもあったので、どう入れようか考えました。片方はすぐ見つかると思うのですが、ぜひ探してみてください。

SwEeT MeLlOw MeLoDy 葵 ひなた

桑原 この曲、実は発注のときにテーマを書き忘れていました(笑)。キーワードは「甘いもの」「いたずら」「笑顔」「楽しいこと」。
松井 この曲では、はっきりと「好き」という言葉を使って、聴いている方をドキッとさせたいという思いがありました。甘いものを食べると人はメロメロになっちゃうから、「メロディー」と「メロウ」をくっつけて「MeLlOw MeLoDy」にして、「メロメロ」という言葉を使いたかったんです。甘いものが嫌いなひなたですが、甘いもの好きを演じるために、人が甘いものを食べているときの表情をよく見ていたと思うんですよ。その表情がすごく素敵だったから、だんだんひなた自身も甘いものが好きになったんじゃないかと思い、「幸せそうな君が好きだから」という歌詞を書きました。でも、100%甘いもの好きになったわけじゃないので、タイトルを大文字と小文字が入り乱れたものにしたんです。あと、このタイトルには実はもうひとつ、歯を磨かなきゃ虫歯になるぞっていう意味もあって。デコボコの文字が、歯抜けのように見えるじゃないですか。僕は、2winkって幼児番組で人気が出る気がしていて。この曲を歌って、「歯を磨かないとこんなことになっちゃうぞ」と言っていそうなイメージが湧いて、このタイトルにしました。

SPICY BREEZE 葵 ゆうた

桑原 テーマは「ピリッと刺激的な冒険」。ゆうたは2winkのスパイシー担当ですからね。
こだま 今までの2winkの曲はお互いに向けた曲が多かったので、この曲ではアイドルからリスナーに向けた距離感で、というオーダーでした。曲調も王道アイドルソングという感じだったので、歌詞もまっすぐですね。強炭酸のCMみたいなイメージです。王道アイドルっぽく、キスやウインクなど、ドキッとする単語も入れてみました。松井さんの『SwEeT MeLlOw MeLoDy』も同じ意図が込められているのは、偶然ですが面白いですよね。「Feel so free」という歌詞は、別にひなたといるのが窮屈というわけではなく、いつもより自由な気持ちをゆうたなりに表現したというイメージです。
桑原 2winkはふたりとも斉藤壮馬さんが担当していますが、ご本人がすごく器用に喉の使い方を変えて歌い分けてくれているので、それにハマるように収録用の機材も変えています。ふたりで歌う曲に関しては、アンニュイな曲の場合は元気なひなた君から録ってアンニュイ要素をゆうた君で足していく。逆に明るく元気な曲は、ゆうた君で明るく歌って、ひなた君でさらに頑張る。そんな感じで収録しています。

Trickstar

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Infinite Star

桑原 テーマは「夢の咲く場所」。SSで歌った曲ですね。この曲は僕が作曲を担当しました。
こだま すごいメロディーが来たなって思いましたよ。
桑原 収録のときも、キャストさんたちから「すごく良い曲ですね」って言ってもらえて嬉しかったのですが、毎回ハードルが高いんです。
こだま この曲でSSに勝つんですもんね。
桑原 そう、Edenの『THE GENESIS』に勝つ曲なんです。『THE GENESIS』も、最強の曲を作るつもりで作っていたのに、今回でさらにその上をいかなきゃいけないんです。矛盾なんですよ(笑)。最強の矛と盾をひとりでやれって言われているようなものなんです。
こだま 私もSSの曲を作ることになってプレッシャーを感じました。歌詞の一言目から悩んだのですが、「キセキシリーズ」の集大成であるSSで勝つ曲にするためには、メインストーリーのことまで入れなければと思い、「はぐれた」から始まる歌詞にしました。それと、ラストの「太陽も霞むくらいのStar」はスバルに歌わせたいと思って入れた歌詞です。アプリでそういうセリフがあったんですよね。どの曲もそうですけど、その子のことを考えながら歌詞を書いていると頭の中にシーンがフラッシュバックして、急いでシナリオを読み返すことが多いですね。

My Starry Point 明星スバル

桑原 テーマは「明日をキラキラするために」。この曲はセクションがすごく多くて難しいんです。
こだま でも、柿原(徹也)さんが見事に歌い上げてくださってさすがでした。「明日をキラキラするために」というテーマなので、聴いている人が辛いときや後悔したときに元気が出るような歌詞にしたくて。『あんスタ!』では他の子の応援ソングもたくさん書いてきましたが、スバルには“ワクワクしている自分のことが好きになれるんだ”というスタンスでぜひ歌ってもらいたいなと。スバル君は抱えているものが大きすぎるから、そんな彼が自分自身を好きだという姿には本当に励まされると思うんですよね。
松井 なるほど。スバルのソロ曲と聞いて、最初はキラキラを前面に押し出していくのかと思ったけど、歌詞を見たら意外と「人間・明星スバル」が現れていて。生々しいと言っていいか分からないのですが、こんなに自分を見せてくれるとは思わなかったんです。でも今のこだまさんの話を聞いて、自分を曝け出すことによってみんなを応援するってすごいなと思って。それが、彼自身の成長なのかもしれませんね。

Welcome to the Trickstar Night☆

桑原 テーマは「ここから初めまして」で、Trickstarの自己紹介ソングです。Trickstarにも今まで明確な紹介曲がなかったので、持ち歌のひとつとしてあったほうがいいな、と思い作りました。
こだま ライブで盛り上がる楽しい曲というイメージです。一番こだわったのは、メンバー紹介の部分を、自分については歌わずにみんながその子について一言ずつ歌う形にしたこと。このほうがTrickstarらしい気がしますよね。
松井 最後は真緒に丸投げしているのも彼ららしくてすごく面白いですよね(笑)。

STARSEEK WAYFARER 氷鷹北斗

桑原 北斗は親の敷いたレールに乗るかどうかの葛藤を抱えていたので、テーマは「自分の信じる道」にしました。
松井 キーワードに「旅」や「レール」という言葉があったので、「電車の旅」というイメージが湧いたんです。電車の旅って、目的地に最短距離で到着できますが、それって結局、英智が用意した道だと思ったんですよ。でも北斗は、時間がかかるかもしれないけど、歩いていくことを選んだんです。歩くことによって出会える人たちを大切にしていこうって。歩くスピード感なら、電車では一瞬で過ぎていく風景をちゃんと見ることができるんです。その風景を見せるために呼び止めてくれたのがスバルだったのかなって。あと北斗っぽくていいなと思うのは、「もう、迷わないとは…誰も言えない」っていう歌詞。これから先も旅は続いていくし、誰かと一緒に旅をしているからこそ言えるセリフだと思うんですよね。

MAGICIAN’S PLAY! 衣更真緒

桑原 テーマは「器用にカッコよく」です。
松井 『Welcome to the Trickstar Night☆』でも出てきましたが、丸投げされている真緒くんをどうポジティブに捉えるか考えたときに、「成長するチャンス」なんだ、って。これをメッセージとして伝えれば大丈夫だと思って書きました。あとは、魔術師という言葉をどうしても使いたかったのですが、Switchとかぶらないようにするのが難しくて。ただ、トリスタのメンバーにとっては魔法使いといえばやっぱり真緒なので、そこは大事にしようと思いました。ちなみに、「裏や表だって俺だから」の歌詞は、若干トランプを意識しています。マジシャンといえばトランプですよね。
桑原 この曲にはマジで共感しかないんです(笑)。「急なHELP CALL、Noって言いたくないのさ。誰かが頼ってくれるときがやっぱりもっと成長するチャンスだろ?」ってここまできれいには思わないですけど、「はい」か「イエス」しかないんですよね(笑)。真緒の気持ちがすごくよく分かります。

Walking On My Sunny Road 遊木 真

桑原 テーマはシンプルで「チェンジ」。真の変わりたい気持ちを書いていただきました。
こだま 真君のひたむきさを目いっぱい歌詞にしました。彼はすごく素直で嫌みがなくて、そこが彼の最大の美徳だと思います。スニーカーというモチーフや、「メゲてちゃもったいないもんね」という歌詞で、真君っぽさを出せたかな、と思っています。Trickstarはアルバムを通して聴くとすごく完成されている感がありますよね。さすが主人公ユニットだと思います。ソロの方向も四者四様で、だからたくさんの人に響くのかな、と。ラストの「大きく一歩」という歌詞は、真君が自分の意志で今まさに前に踏み出そうとしている感じを描きました。

Eden

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Dance in the Apocalypse

桑原 テーマは普通に、「楽園の戯れ」。
こだま 何が普通なんですか?(笑)
桑原 松井さんからしたら普通です。
松井 俺、これだけは言わしてもらうわ。「楽園の戯れ」の意味が全く分かれへんかったから!(笑) 「楽園の戯れ」って何?
桑原 (笑)。キーワードは別にあって、「中心の舞台」「刺激的」「ぶつかり合いを求めている」という言葉をお伝えしていましたね。
松井 Edenの曲なので、AdamとEve両方の感じを出そうと思いました。歌詞の「誘いに乗った言い訳をあげる」は、“自分の意思でエデン(楽園)に来たんじゃないと言ってほしいんだろう?”というトラップユニットのEveらしさ、「跪いて望めばいいだけ」は、そこに来た人間を圧倒的に支配するAdamらしさを表しています。「堕とされたいんだろ? 飛んでみたいんだろ?」の歌詞は、“お前たちは所詮人間の身だから飛ぶことはできない、でも飛びたければ堕ちてみろ、堕ちたら飛んでる気分になれるから”という…要するに完全な神様目線なんです。そんなEdenですが、茨にとってはEdenですら道具な気がしていて。歌詞に「乱反射」という言葉を使ったのですが、全員で「乱」と叫んだら、観客は自動的に(乱)凪砂を見ちゃうっていう。多分、カメラも抜きます。これは100%茨先生の計算で、Edenはすごく緻密に作られたユニットだと思っています。あと、曲調に合わせてセクシーな感じにしようと思い、他のアイドルでは使わない言葉をあえて入れています。タイトルの「Dance in the Apocalypse」には“終末で踊れ”という意味を込めたのですが、日本でいう踊念仏みたいな感じでしょうか。陶酔しきって踊っちゃうような、音楽の原点に触れるような楽曲なのかなと思ってます。

Sunlit Smile!  Eve

桑原 テーマは「サマーライブ、サマーラブ」。サマーライブで歌ったイメージです。Eveとしての1曲目は『Trap For You』でしたが、サマーライブでTrickstarと戦った曲は、どちらかというとこっちの曲がイメージなんです。
松井 これはもう、アイドル曲を書くことに思いっきり全振りしましたね。多分これ、CM曲に使われていると思うんです。サビを歌った後にふたりが「刺激的ってこういう感じ」って、コスメ系のCMにありそうじゃないですか。「お姉さん感」というワードもあったので、少年に対する「もっと期待してるぞ」みたいな感じが、Trickstarへの期待感も出せていいなって。ラブソング感も出したのですが、日和がああいう感じで、外向きには誰か特定の人を向いたキャラではないので、ラブソングを書いても不自然じゃないんです。夏に聴きたい曲になってくれたらいいなと思っています。と同時に『Trap For You』のトラップユニットの感じも少し出したくて、「日差しのせいにすればいいね」と、とにかく誰かのせいにしてみました(笑)。

The Beast of the End  Adam

桑原 テーマは「戦場の覇者、鼓舞」ですね。
こだま これはもう、オータムライブのトリスタと向かい合ったステージで、凪砂が歌い出したらスバルもハッと止まっちゃうぐらいだったっていうのを曲で表現できたらいいなと思いました。「軍隊の指揮官」というキーワードもあったので、戦場という一見アイドルらしからぬ言葉も使っています。
桑原 この曲のポイントは乱 凪砂のビースト感ですよね。2番に「Wow!!」という凪砂の雄叫びが入っています。
こだま 本当に凪砂さんにやっていただけるとは、とびっくりしました。
桑原 収録で「ビースト感もらっていいですか」とお願いしたのですが、超カッコよくて一発OKでした。 
こだま すごかったです! 
松井 彼らは、あくまでも勝つ前提なのがすごいですよね。向かってくることはいい、むしろ向かってこい、という態度なのですが、それはなぜかというと「奪いとったその希望は美しい」から…っていうのが、彼らの怖いところだと思います。

生まれ堕ちたこの世界で 乱 凪砂

桑原 テーマは「時の物語」で、「人の優劣」「争い合う悲しみとかはかなさ」というキーワードで書いていただきました。凪砂って感情があるのかないのか分からない人だから、そもそもソロ曲を作ること自体がすごく難しい作業でもありました。
こだま 徐々に凪砂さんの情報が出てきていたタイミングだったので、ストーリーを読みつつ、彼の超越した雰囲気を表現しようと書かせていただきました。「人はまた哀しい本能できっと間違えてしまうけど、その度にやり直せると信じる力」など、視点が主観ではなくどこか人ごとなんですよね。でも決して突き放しているわけではなく、純粋に分からないものを理解しようとしている感じだと思います。
松井 彼は、本当に人間のことが分からないんですよね。だけど、キセキシリーズを通してTrickstarに気付かされた部分もあるのかな、と思います。

Poison Strategy 七種 茨

桑原 テーマは「ストラテジー・アンド・タクティクス」。彼の緻密な戦略を歌詞にしていただきました。
松井 敬語にするか迷いましたが、1曲目なのでいいかなと思い敬語にさせていただきました。「あなたという宝石の輝きを奪うために」という歌詞はすごくラブソングっぽく聴こえますが、彼にとってはそれも戦略で。あざとさを出すためにラブソング感を出しているだけで、“あなたの誇るべき輝きを奪ってなくしてしまう”という意味を込めています。怖いですよね? でも、「躊躇もしないで、飛び込んだのはあなたですよ?」って。相手のせいにしてしまっているんですよね。茨という人間は、相手を認識した瞬間に、その関係がもう決まっているんですよ。ただ、凪砂に対してだけはそれを決められなくて、だからこそ彼に対して強い興味や深い思い入れがあるのかもしれないです。でも、大概の人間は、この歌のとおりになっちゃうと思います。もう全部、戦略(笑)。でも、タイトルで「Poison」って言ってるのにあなたが勝手に勘違いしたんでしょ、って。怖いですね(笑)。

Fantastic Days◎ 巴 日和

桑原 テーマは「太陽色の宝石」です。
こだま タイトルの「Fantastic Days」は、そのまま「いい日和」からつけました。日和はわがままだけど優しいし、お金持ち特有の天真爛漫さや育ちのよさがありますよね。なので、「とびきりの自分でいればいいね」の歌詞は、本心からそう思っているイメージで書きました。でも、「日の当たる場所に会いにおいで」なんですよね、“行くよ”じゃないんですよ。あくまで“来させる”のが日和らしさだと思います。すごく真っすぐで素直だから、“なんでそんなところにいるの? こっちはこんなに楽しいから、来ればいいね!”ぐらいの感覚で呼び掛けているイメージです。
松井 同じお金持ちでも、英智は病気のことがあるから、生まれた瞬間からどうしても手に入らないものがあって。そこが日和と英智の違いですよね。

Back-alley Monologue 漣 ジュン

桑原 テーマは「ひとりのハイエナ」で、キーワードは「自分の存在価値」「暗闇に咲く花」です。
こだま 今、この場所が大切で、それを絶対に手放したくないというジュンくんの気持ちを歌詞にしました。冒頭の「縋れないプライドじゃ偽物だ」という歌詞は、縋りたくないと思うポイントはもう超えているというか。そこに行くためなら何でもやるというジュン君の貪欲さを思って書きました。
桑原 ジュンは、日和に拾い上げてもらった今のポジションにしがみついているところがすごくいいですよね。
こだま それをカッコ悪いと思っていなくて、むしろカッコ悪いと思うことのほうがカッコ悪いと思っていると思います。そんなところが、どん底から来た人ならではなのかな、と。最後に、「孤独だった世界の終わりにたどり着くTrue World」で、アルバム1曲目に戻ってください、みたいな(笑)。
松井 True Worldといえば、Edenでございますっていう。ループが始まって無限にアルバムを聴ける仕様(笑)。
こだま ジュンにとってのTrue Worldが、今の自分がいるEdenがある世界なんですよね。
桑原 Back-alley(路地裏)という言葉も、ジュンっぽさがありますよね。
こだま ジュンって路地裏感がありますよね? 路地裏の上から光が差して、見上げたら日和がいた、みたいなイメージが思い浮かんで。
松井 分かります。ジュンは、みんなが内側に持っている貪欲さを一番むき出しにしてる人かもしれないですね。『あんスタ!』のキャラクターは、桃李ですら根っこは貪欲なので、裸にしたらみんな同じ思いを抱えているのかなと思います。

取材・文/鈴木 幸 (c)Happy Elements K.K 

■第1回 流星隊、Ra*bits、 Knightsはこちら

■第2回 紅月、UNDEAD、 Switchはこちら

■第3回 MaM、Valkyrie、fineはこちら

DATA

 ■あんさんぶるスターズ!

あんさんぶるスターズ!公式サイト:https://ensemble-stars.jp/discography/

あんさんぶるスターズ!CDシリーズサイト:https://www.fwinc.co.jp/EnsembleStars/

通常版CD価格:各 3,000円+税、発売元:フロンティアワークス

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