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 積み上がった本や書類は、天井にまで届きそうだった。12列の移動式書架にも入りきらない資料の山は、大蔵省の報告書や自民党の封筒に洋書、半世紀前の新聞の束も。俳優の司葉子さんは「もう、途方に暮れているんです」という。

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戦争を後世に語り継ぐ手引きとなる資料や蔵書や遺稿。それらが埋もれ、消えつつある。映画「この世界の片隅に」の片渕須直監督は危機感を抱いています。
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故人の蔵書、どうすれば。俳優の司葉子さんもそんな悩みを抱える一人。大蔵事務次官や衆院議員を務めた亡き夫、相沢英之さんの思い出を聞きました。

 自宅の地下室を埋めるのは、4月に99歳で亡くなった夫の相沢英之さんが集めた資料だ。戦後に大蔵事務次官や衆院議員を務めたが、戦中に大蔵省に入り、陸軍主計少尉として従軍や抑留も経験した。

 「集めてきた本人の思いを無駄にしたくないのですけど、何が重要なのか、私にはわからないし、整理をしようにも、くたびれてしまって」。行く当ては、決まっていない。

 この中に、なにか大事なことが書かれた資料があるのではないか。司さんの話を聞きながらそう思ったのは、実際に「宝」が埋もれていた話を知ったからだ。

 「資料が残っていたおかげです」と経済思想史が専門の牧野邦昭・摂南大准教授(42)はいった。大阪の自宅でパソコンに向かっていた2014年夏の夜、思わず「えーっ!」と大声を出した。古書サイトで売られていたのは「英米合作経済抗戦力調査(其(その)二)」。1万8千円だった。

 開戦前に陸軍の通称「秋丸機関…

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