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父との別れを経て喜美子は 自由に ただ無心に初めての作品を作り上げました。
♪~
あれから3年。
喜美子 31歳になりました。
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も 涙に負けるもんか」
♪~
♪「やさしい風に吹かれて」
♪「炎は再び舞い上がる」
(八郎)おはよう。(喜美子)あっ おはよう。
フカ先生からや。うん。
今年は ハイカラな絵葉書やな。うん。
喜美子の絵付けの師匠だった深野心仙先生とは年賀状のやり取りが続いています。
どこやろ ここ… きれいやなあ…。
武志! 起きぃ 朝やで。
(武志)う~ん…!
今日から学校やで!
沢村 足蹴り~!
膝蹴りや! こうや!
やらんでええ! もう はよ用意しぃ。
嫌。着替えるで。
嫌。はよ着替えなさい。 もう。
(マツ)おはよう。おはよう。
おはよう おばあちゃん。テレビ欲しいなあ!
ええから もう。 はよ。
はよ やりぃ。何やんのん?
冬休みの宿題や。
ないって言うてたやん。漢字の宿題出されてたんやて。
(マツ)そんなん今からやって間に合うのん?ほんまやで。
武志!なに腹筋してんねん はよ やりぃ!
(百合子)おはよう。おはよう 百合叔母ちゃん。
テレビ欲しいなあ?もうええから。
(百合子)お義兄さんは? もう作業場?うん。
おととい あかまつに行ってやったやろ。
ああ 美術商の佐久間さんに誘われてな。何で?
昨日 あかまつのおやじさんがお義兄さん来てた言うてたもん。
百合子 あかまつ行ってるん。
ああ 最近 行くようになってなあ?へえ~。
誰と行ってんの?ともちゃん 結婚したやろ。
信にいや。
信作!? あんた 信作と飲んでんのんいつから?
2人で飲むようになったん 最近やな。原付きの免許取る相談乗ってもろてんねん。
原付きの免許は危ないからあかん言うたやろ。
あかん言うお姉ちゃんをどう説得するか相談乗ってもろてんねん。
わざわざ飲まんでも…サニーでコーヒー飲みながらでええやん。
そや 銀座どうなったん?
決まったで。
(百合子)え…。
こら 武志! なに膝蹴りしてんねんもう はよ やりぃ!
銀座で個展 決まったん?
うん! すごいよなあ。すごいやん!
金賞を受賞したことで陶芸家 川原八郎の名は広く認められ展示会や個展を開催するようになりました。
出品作が高い値で売れる時もあり生活は 以前よりは楽になりました。
…が 八郎は 楽になるどころか息苦しさが どんどん増していました。
なあ テレビ~。
もう その話 終わり。買うてやれへんからな。
お金持ちなったんちゃうの。
なってへんわテレビ買うほどのお金持ちやない。
友達んとこはな…。よそは よそ。 うちは うち。
はい 行ってらっしゃい。行ってきま~す。
エイッ!それ 友達にやったらあかんよ!
されてもあかんよ!は~い。
八郎には 弟子がいます。
去年の秋に窯業研究所の柴田さんに頼まれ通いで 2人の若者を預かることにしました。
(畑山)おはようございます。おはよう。(稲葉)おはようございます。
今日は ここ きれいにしといてな。先生は…?
陶芸教室や。 どっちか一人 付き添ってな。ケンカせんと。
おっ。はい。
うっ。 お前 なに 髪に投げつけてんねん!あっ 痛っ!
ごちそうさまでした。あっ ええよ うちやっとく。
ああ…。これな。ありがとう。
テレビな中古やったら手ぇ届くんちゃう?
武志がテレビ欲しい言うのんは沢村見たいからやで。
キックボクシング。テレビで試合なんか見せてみぃ?
もう ますます まねして大変やで。
ごめんな? どっちがええ?
(2人)こっち。ええ? ええ… ど… どないしよ…。
どっちも似合ってるで。せやな。 今日は どこで講演?
今日は 講演やないねん陶芸教室の先生や。
あっ 言うてたな。まあ いろんなことやるようになってえ。
頼まれたんですぅ。頼まれたら 断れん。
お義母さんも頑張って下さい。はい。
ほな 行ってらっしゃい。行ってきます。
大阪の料亭から頼まれた花瓶なあれ あとは釉薬かけるだけやろ準備しとこか?
いや 喜美子 調合は まだ分からんやろ。
釉薬はええよ 僕がやるさかい。ほな行くわ。
失礼します。失礼します!
付き添いは1人でええ 言うたやんな?
行きます。行きます!いやいや… 1人でええ。
陶芸教室いうてもそんな大層な人数やないねん。
行きます。行きます!
2人は いらん。 1人は残って掃除や。
(畑山)行きます。(稲葉)行きます!
行きます…。よしっ!ええの?
うん。 ほな 行くで!行ってきます!
行ってきます!はよ はよ はよ!2人ともケンカせんとな? 頼むで!?
(八郎)もうええから 分かった分かった…。もう…。
母は 武志が学校に行っている間小学校の おかあさん合唱団に参加することになりました。
もともと喜美子が誘われたのですが…。
回想 ほやけど 週1回でも厳しいわ。ハチさんの手伝いがあるし。
(緑)ハチさんの手伝い?(照子)粘土そろえたり釉薬の原材料 調達したりしてるんよ。ええ!
個展の準備があるしお弟子さんのことも ほっとけへん。
すっかり陶芸家の奥さんやなあ。
ハチさんの10歩も20歩も後ろ下がってんねんなあ?
ほやでえ 100歩ぐらい下がってるわあ。(笑い声)
(佳織)結婚したら後ろ下がるんは当然やで?
いやいや…喜美子にしたら信じられへんことやで?
(有子)メンツが足りんのやてうちも駆り出されてなあ。
へえ~。あと1人は 欲しいねんなあ。
いやるやん!えっ?
おかあさん合唱団 参加しませんか!
いやいや いやいや。いやいや いやいや!
ほな 行ってくるわな。
うん 帰りにホットケーキとコーヒーも行ってきたらええよ。
ええの? 洗濯は?
やっとく。 今日は お天気もちそうやし。悪いなあ。
ええ ええ。やるのは洗濯機やし 楽なもんや。
ほんまや。 直子も お正月来た時びっくりしてたやん炊飯器に冷蔵庫まである言うて。
あの子も 一発当てる言うてた商売まあまあ順調みたいやしな。
楽さしてもうてるわあ。
この上 合唱団に ホットケーキにコーヒーやなんて…。
お父ちゃんおったら 叱られるな?
うちは 生き生きしてるお母ちゃんの方がうれしいで?
ほな 行ってきます。うん 行ってらっしゃい。
夜 武志が寝たあと…。
かわはら工房で2人で過ごす時間が喜美子と八郎 夫婦だけの時間です。
今は 大量生産の茶わんやお皿の注文は受けていません。
喜美子は 誰に頼まれるでもなくコンクールに応募するでもなく自由に作品作りを続けています。
♪~
喜美子の作る夜食のおむすびには顔がつくようになりました。
頂きます。
痛い…。
痛い。
痛い 痛い 痛い 痛い 痛い!
崩れたやん。(笑い声)
僕な この時間が一番好きや。
今日 あの2人な陶芸教室で ずっとケンカしとったで。
もう… 弟子 辞めさしてもええかな…?
う~ん…。
柴田さんには 僕から言うとくさかい。
分かった。ほな 2人には うちから言うわ。
ハチさんは 作品作りに専念しぃ。
銀座の個展 何て言われたん?
前回売れんで残った作品は出しても また売れんやろう言われてる。
ほな 新たに作るん?50か 60か。
個展は5月やろ?5月の連休な。
それまでに 50~60…。
あんま時間ないやん…。
ほんで 目玉になるようなすばらしい作品を最低でも1点か2点 新作でな。そうか…。
すばらしい作品て 何やろ…。
どういうのをすばらしいて言うんやろな…。
見てて飽きひんもんが そうなんちゃう?
ハチさんの金賞取った作品な?ず~っと見てても飽きひんねん。
1時間でも 2時間でもず~っと見てられる。
また次の日も見てられる。3時間でも 4時間でも。
ず~っと。
ず~っと見てても飽きひんねん。
すばらしいなあ思うよ?
ほな この下のやつは?
5分が限界やな。(笑い声)
冗談やで。
ほやけど それは…ハチさんとしても違うやろ?
川原八郎ならできる。
もっかい言うてええ?うん?この時間が一番好きや。
一日の終わりの この時間な喜美子と2人の…。
もう この時間 取り上げられたら生きていかれへんかもしれん…。
誰が取り上げるん 誰も取り上げへんよ。
♪~