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#1『あんスタ!』こだまさおり&松井洋平&桑原 聖によるアルバム全力レビュー&インタビューを期間限定で公開

2020.01.02 <PASH! 2019年10月号>

流星隊&Ra*bits&Kngihtsの楽曲制作秘話を作詞家&音楽Pに直撃!

 PASH!PLUSでは、2020年1月7日まで、PASH!2019年10月号から4号連続で掲載された『あんさんぶるスターズ!』アルバムシリーズのスタッフインタビューを限定で掲載! これは第1回の記事です。2020年のお正月、アルバムを聴きながらおおいにもりあがりましょう!

※本インタビューは2019年9月に発売したPASH!10月号掲載のものです。

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作詞家・こだまさおり&作詞家・松井洋平
&プロデューサー・桑原 聖座談会

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実在するアイドルに楽曲を提供している感覚

――『あんスタ!』初のアルバムシリーズですが、全体としてはどのようなテーマで制作されたのでしょうか?

桑原 「一年間をとおした、ファンやユニットメンバーへの感謝の気持ち、愛」がテーマです。なので、アルバムの初回限定盤はプレゼントボックス仕様にしました。ソロ曲は、持ち歌として元々あったものを、学年の終わり頃に収録したというイメージです。

――アルバムの第1~3弾で登場した流星隊、Ra*bits、Knightsの魅力について教えてください!

こだま 最初にメインストーリーを読んだときの印象から、だいぶ変わりましたよね。

松井 そうですね。でも、流星隊だけはあまり変わらない気もします。彼らは変わることを良しとしないユニットなのかな。個々の考えは違うけど、5人揃ったときのブレなさは一番だと思います。

こだま 返礼祭で一年生同士が激しく喧嘩していたのも、高校生らしくてすごくいいなと思いました。

桑原 確かに。イベントストーリーでキャラクターがすごく丁寧に深堀されているから、例えば千秋の「笑顔を守る」という言葉ひとつとっても、より深みが出ましたよね。今ではほんとに正義のヒーローのような存在で、流星隊のことを嫌いな人っていないんじゃないでしょうか?

松井 悪の組織くらいかな(笑)。個人的には、初代流星隊は今の5人に近かったんじゃないかと思っていて。「ヒーローになりたい」という衝動があったからこそ、流星隊と名乗ったと思うんですよね。

桑原 なるほど。流星隊は代々続いているものを継承していくユニットで、一方Ra*bitsは一年生がやりたい方向へと、なずなが導いてくれている感じですよね。

松井 そうですね。Ra*bitsは継承してきたものはないですが、なずなのValkyrie時代があったからこそ、一年生3人を自分が望む方向に強制しようとは絶対にしない。意外と背中を見せるタイプだと思います。

こだま 確かにそうですね。あと、Ra*bitsは意外と自分たちの戦略を練っていますよね。悪い子になってみよう、とか。

松井 かわいいって言われるのは嫌いだけど、しっかりかわいいを演じていますしね(笑)。Knightsは、伝統でもあり王道でもあり革新でもあり…自分たちに自信があるからこそ、真っ向勝負の人たちですよね。

こだま プロ意識が強くて、いつもハイクオリティなライブを見せてくれそうなイメージがあります。

桑原 Knightsはいちばんアイドル然とした、フィクションを演じてくれる存在だと思います。ただ、僕は昔、fineこそが王道だと思っていたんです。そしたら「fineは”王者”なんです」と言われて。当時は”王者”の音楽と”王道”の音楽の違いが分からなかったのですが、ストーリーが進み、彼らの向かう方向性が明らかになるにつれ、だんだんと彼らの”王道”感がわかってくるようになりました。

松井 『あんスタ!』において英智は”皇帝”であり、”王様”はやっぱりKnightsのレオなんですよね。皇帝は神様に選ばれた存在だけど、王様は一国を強固に支配して、騎士と深い忠誠心で繋がっているというイメージ。それと”王道”という言葉のイメージがバシっとハマりますよね。ユニット内でバチバチしている時期もありましたが、それすらレオの手の内なのかな、と。「俺の首を取りたかったらいつでもこいよ」と言ってきそうな雰囲気がありますよね。

――今回初のソロ曲が作られましたが、ソロ曲を作るときに大切にしたことを教えてください。

桑原 実在するアイドルグループのソロ曲は、その人のパーソナルな部分をフィクションに置き換えて歌詞にする、という作り方が多いと感じているのですが、それと同じことをしています。僕らは夢ノ咲のアイドルたちが実在していて、彼らに提供する曲を作っているという意識なんです。

こだま 実際にアイドルのソロ曲を作るときも「今私はこういうことを考えているから、こういう歌詞を歌いたいんです」っていう話をよくしますよね。

松井 唯一、現実のアイドルと違うとしたら、この子たちのほうが素直に自分のキャラクターを出そうとしているのかも。例えば僕は、70年代のアイドルソングって意外と”キャラソン”だと思っていて。アイドルというキャラクターを作り上げて、それにあてはまる曲を歌っているんですよね。反対に、例えば守沢千秋とかは「俺はこういうことを歌いたいんです!」って紙にぎっしり書いて提出してきそうじゃないですか(笑)。千秋や鉄虎や光など、等身大の自分らしい言葉で伝えたい!という子は、特に素直な歌詞になっていると思います。

――キャラの学年により作詞の仕方を変えている部分はあるのでしょうか?

松井 出来上がった歌詞を改めて見てみると、全体的に一年生はストレート、三年生は円熟したものになっているのですが、二年生が一番ひねているかもしれません。

こだま 17歳ですもんね。大人と子どものはざまの微妙な年代というか。

松井 過渡期ですよね。先ほど桑原さんが、ソロ曲は既存の持ち歌を一年の終盤に収録したイメージと仰っていましたが、もしかしたら収録時に歌詞や歌い方を変えているかもしれないですよね。一年をかけて成長したタイミングだからこそ、できる表現や歌える歌詞もあったかもしれません。

桑原 確かにそうかもしれませんね。そういうところまで想像しながら聴いていただくと、より楽しんでいただけると思います。

各曲ピックアップ

流星隊

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アンリミテッド☆パワー!!!!!

桑原 ユニットの後輩たちが卒業を控える先輩に感謝を伝えるライブ「返礼祭」。この曲はそれをイメージして「みんなにありがとうの気持ちを伝える」というテーマで作っていただきました。
松井 ただ、身内よりもファンに向けて気持ちを表すほうが彼ららしいと思ったので、ファンへの感謝に重きをおきました。今までの「君たちを守る」という歌詞ではなく、「その守る力は君たちからもらっていたんだよ」と伝えています。ひとりのファンのために、ファンと流星隊がいる、そんな関係性を歌えたら素敵だなと思いました。

ALWAYS HERO! 守沢千秋

桑原 守沢千秋が描くヒーロー像を歌詞にしていただきました。
松井 千秋が、「こういう歌が歌いたいんだ!」と持ってきたものをそのまま歌詞にしたイメージです。歌詞にある「ジャスティス・ブレイズ」は彼が考えた技の名前です(笑)。千秋なら、「ヒーローの歌だから技の名前は必要だろう!」って言いそうで。彼のなかでは、アイドル=ヒーローだと思うので、そんな彼らしさをまっすぐに表現した一曲です。

まりんぶるう・らんでぶう 深海奏汰

桑原 「母なる海」というテーマでオーダーした曲です。
こだま 歌詞を全部平仮名にしたことで、より奏汰くんぽさが出せたと思います。でも、ちょっと切ない雰囲気にもしたくて。この海のどこかに、何か忘れてきたものがあるような…そんな切なさも織り交ぜています。
松井 奏汰くんは神様として崇められていた頃に違う世界に強く憧れて、外の世界としての海への想いが強いのかなと。流星隊は彼にとって大きな海のような存在なのかもしれないですね。平仮名の歌詞は子ども番組で歌っていそうで、アイドルとして幅広く活躍している奏汰くんをイメージできますよね。

IRON HEART TIGER! 南雲鉄虎

桑原 この曲のテーマは「漢を磨くッス!」です(笑)。
松井 (笑)。彼は、自分のソロ曲を作るときに誰かに相談したと思うのですが…そうなると行く先はひとつですよね(笑)。そこで紅郎に「ややこしいことは考えるな。お前はお前らしさを出せ」と言われたのかな、と。そこで「分かったッス!」と吹っ切れて書いてもらったのがこの歌詞、というイメージで作りました。

真昼の残像 高峯 翠

こだま この曲は、「憂鬱なんだけれど…」というテーマでオーダーいただきました。本人が言う「鬱」とはちょっとちがうイメージで憂鬱を描こうと思い、男性シンガーソングライターがアイドルに提供した曲というつもりで書いたんです。最初は『空に薄い月』というタイトルでしたが、凛月とイメージが被るのでこのタイトルに変えました。夜になり徐々に月がくっきりと見えてくるイメージを、翠の心境の変化に重ねています。
桑原 この曲の歌収録は『あんスタ!』史上一番時間を掛けました。翠は一年で最も成長したキャラでもあるので、どの時期を描くか判断が難しくて。でも、収録したのは一年の終わり頃を想定していたので、1番は淡々と、2番から少しずつ明かりが見えてきて、最後は感情が溢れ出るような歌い方にしています。

Ra*bits

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に~ちゃん応援団☆ 仁兎なずな

こだま この曲は「に~ちゃんに任せろ♪」がテーマでしたが、1年生3人と、ファンのどちら向きにもとれる歌詞にしました。なずなは、ファンの子たちからも、きっと「に~ちゃん」という愛称で呼ばれているのかなって。なずな自身が頑張り屋さんだから、そんななずなに「頑張れ」って言われたら素直に頑張ることができそうですよね。
桑原 なずなって、決して余裕があるタイプではないと思うんです。なので、この曲はあえてキーを高めに設定して高い音域を頑張って歌うことで、彼の一生懸命さを表現しています。

Higher↑ Higher↑ 真白友也

桑原 テーマは「色濃い日常を自分なりに」。普通であることがコンプレックスの友也ですが、それでも少しずつ成長しているんだよ、というメッセージを込めました。でも、友也を見ていると「普通」とは何だろうと思わされますよね。ある意味、普通が一番すごい気もしますし、そもそも友也はそんなに普通ではない気も…(笑)。
こだま 普通を打破しようとジタバタ頑張っている姿を描こうと、新生活一年目の右も左も分からない状態をイメージしています。そういうタイミングって人生において何度かありますよね。同じように頑張っている人たちに向けた応援ソングなんですが、同じ応援でも、なずなのスタンスとはまた違っているのが面白いですよね。

スタート♪ ダッシュダッシュ! 天満 光

桑原 この曲のテーマは「ダッシュダッシュ」です。光くんは本当にスーパースターだと思う。3年生になったときの姿が楽しみですよね。
松井 光は難しい言葉を使うイメージがないので、なるべく飾り気のない言葉を使っています。一年生の光にとって初めてのソロ曲だと思うので、今現在の彼が歌いたいことを自分で考えて作ったイメージです。前向きで元気いっぱいの、本当に光らしい曲ですよね。でもどこか今の自分に満足していなくて、これからもっとすごくなれるんだぜ!という彼の決意もにじませています。

Knights

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Grateful allegiance

桑原 テーマは「伝えたい言葉」。今までのKnightsは仲間との絆を歌うことが多かったのですが、今回はファンへの感謝の気持ちをストレートに表現していただきました。
松井 なので、「愛を込めて」というフレーズを5人全員に歌ってもらいました。歌う順番にもこだわっています。ただ、やっぱり少し距離感は残しておきたくて。「kiss」という言葉ひとつとっても、男女間のものではなく「運命がkissをくれる」というイメージで使っています。キスという言葉のときめきはそのままに、特定の誰かを想像させないように…。焦らしプレイですね(笑)。この曲に関しては、今の5人が揃ってから作った曲だと思います。

Birthday of Music 月永レオ

桑原 テーマは「メロディが生まれる瞬間」。インスピレーションが走り出したら止まらない、レオの衝動を歌詞にしてほしいというオーダーでした。
松井 僕も自分でも曲を書きますが、とにかく音楽を作る瞬間って嬉しいんですよね。その純粋な喜びを解放するとどんな歌詞になるんだろう、と考えました。自分でもその喜びのかけらを知っているから、それをできるだけ表現したいな、と。歌詞の「柔らかな唇が紡ぐ言葉が~」は、自分の曲を歌ってくれる誰かがいることの喜びを表現しています。レオは、その喜びを知っている人だと思うから。あと、どこかに遊びを入れたくて、歌詞の冒頭の英単語の頭文字を繋げると「CDEFGAB」と音階の英語表記になるようにしています。

真夜中のノクターン 朔間凛月

桑原 「ひとりの夜とピアノ」というテーマです。この曲がいちばんKnightsっぽいですよね。
こだま 夜に生きる孤独を、失恋や遠距離恋愛の孤独に置き換えたイメージです。誰とも混ざり合えない世界でひとり、離れた場所で眠っている誰かのためにピアノを弾いているような情景を歌にしました。

With My Honesty 朱桜 司

桑原 テーマは「いつでもそのそばで」。清く正しいけれど、たまには少し甘えたい…そんな、母性をくすぐる要素を入れてほしいとオーダーしました。
こだま 「honesty」という言葉を使いたくて、タイトルに使用しています。今の司くんの気持ちを正直に歌った歌詞ですね。曲によって二人称の表記を変えているのですが、この曲では「貴女」がちょっと甘えん坊だけど礼儀正しい司くんらしいかなと。歌う人や曲調にあわせて「貴方」だったり「キミ」だったりと選んでいるので、そんなところにも注目していただけたら嬉しいです。

取材・文/鈴木 幸 (c)Happy Elements K.K 

■第2回 紅月、UNDEAD、 Switchはこちら

■第3回 MaM、Valkyrie、fineはこちら

■第4回 2wink、Trickstar、Edenはこちら! 

DATA

 ■あんさんぶるスターズ!

あんさんぶるスターズ!公式サイト:https://ensemble-stars.jp/discography/

あんさんぶるスターズ!CDシリーズサイト:https://www.fwinc.co.jp/EnsembleStars/

通常版CD各3,000円+税、発売元:フロンティアワークス

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