カルロス・ゴーンを関空から連れ出した「元グリーンベレー」のハードボイルドすぎる人生

関空でゴーンを連れ出した元グリーンベレー

 カルロス・ゴーン被告が関西空港からプライベートジェットに乗り込む際、2人の米国旅券所持者が同行していたことがわかってきました。米「ウォール・ストリート・ジャーナル」によると、この2人は米陸軍特殊部隊グリーンベレー隊員で警備会社を経営していたマイケル・L・テーラーと、その関連の警備会社関係者のジョージ・アントニー・ザイェクという人物です。

 同紙によると、ゴーンの脱出にはさまざまな国籍の10~15人が集まり、チームを組んだといいます。そして、このチームが日本を20回ほど訪問し、全国各地の空港を視察。それぞれの出国チェックの状況を観察し、最終的に関西空港を選んだということです。チームのうち、このプレイベートジェットに同乗したこの2人以外の情報は、まだわかっていません。

In Carlos Ghosn’s Escape, Plotters Exploited an Airport Security Hole 「ウォールストリート・ジャーナル」2020年1月6日n Carlos Ghosn’s Escape, Plotters Exploited an Airport Security Hole 「ウォールストリート・ジャーナル」2020年1月6日n Carlos Ghosn’s Escape, Plotters Exploited an Airport Security Hole 「ウォールストリート・ジャーナル」2020年1月6日

アフガニスタンで人質解放に尽力

 このテーラーという人物は、米陸軍でテロ対策部門にも就いたことのある人物で、80年代前半にはグルーンベレーとしてレバノンの首都ベイルートに勤務しています。彼はそこで夫人と出会っており、レバノンに強いコネクションがあります。

 退役後は主に人質案件でFBIや国務省とも仕事をし、80年代後半には4年間も政府に協力して麻薬密売やマネーロンダリングの潜入捜査を行ったとこもあったといいます。まるで映画のようなハードボイルド人生を送ってきた人物です。2009年にはアフガニスタンのタリバンに拉致されていたニューヨークタイムズ記者の解放に参加しています。

 他方、民間軍事教官としてレバノンのキリスト教マロン派民兵の訓練もしていたようです。なので、アラビア語を話せるといいます。

業務内容のトップは「人質交渉」

 なお、テーラーは退役後、こうしたさまざまな政府系の仕事を請けながら、民間警備会社を経営していました。マサチューセッツ州を拠点とする「アメリカン・インターナショナル・セキュリティ社」です。

 そこで同社の企業名を検索してみたところ、さまざまな情報が出てきました。

 同社の実態については、ブルームバーグの企業情報では、業務内容のトップに「人質解放交渉」が挙げられており、以下に「情報収集」「価値評価」「危機管理」「訓練」「警護」と並んでいます。警備会社というよりは、いわゆるPMC(民間軍事会社)に分類されるような会社のようです。

American International Security Corp(ブルームバーグ)American International Security Corp(ブルームバーグ)American International Security Corp(ブルームバーグ)

水増し請求で収監の過去

 ところが、そんなハードボイルド人生を送っていたテーラーは、2012年、レバノンで米麻薬取締局の秘密捜査を請け負ったいたとき、本国に呼び戻され、逮捕されます。汚職に関与した罪でした。

 その事件の詳細については、上記氏名で検察してみたところ、当時の地元紙アーカイブに出ていました。

 同社は2000年代後半、アフガニスタン駐留米軍の訓練を請け負っていたのですが、そこで巨額の水増し請求を行ってたことが発覚。2010年から捜査機関横断の合同集中捜査が始まり、2012年に摘発されて有罪となったようです。

 米軍の訓練を請け負うくらいなので、PMCとしての実力は充分にあり、しかも米軍にコネもあったのでしょうが、おそらくこの事件で彼は、米軍発注の仕事を失ったのではないかと思われます。

Former Green Beret to return to Boston after 14 months in Utah jail (ソルトレイク・トリビューン 2013年11月29日)Former Green Beret to return to Boston after 14 months in Utah jail (ソルトレイク・トリビューン 2013年11月29日)Former Green Beret to return to Boston after 14 months in Utah jail (ソルトレイク・トリビューン 2013年11月29日)

社員2名??

 いずれにせよ、彼はそれなりに海外慣れしており、おそらく度胸も据わっているのでしょう。レバノンでの顔も広く、きわどい仕事の経験も豊富に積んできているものと思われます。こうした「実績」から今回、ゴーン脱出の「チーム」に入ったのでしょう。このチーム全体における彼の役目は不明ですが、その実績からすれば、リーダー格の立場なのかもしれません。

 なお、同社については他にもさまざまな企業紹介サイトに紹介されているのですが、あるサイトには業務内容として「人物警護」「イベント警備」「空港警備」「ビル警備」「危機管理」ともあります。空港警備という項目が気になりますが、今回の事件と関係あるのかはわかりません。

 業務開始は1984年、法人化が1994年、社員数2とあります。社長はマイケル・テーラーとあります(なお、前述のブルームバーグの企業紹介には社長名は記されていません)。このあたりはまだ全体像が謎です。

American International Security Corp.(BBB)

https://www.bbb.org/us/ma/woburn/profile/security-systems-consultants/american-international-security-corp-0021-50905