80~90年代のアイドルと芸能界が描いた「空っぽな東京」
2020年1月5日
知る!TOKYO1980年代後半、空前のバブル景気を東京で目の当たりにした人たちは今、同じ東京で何を思い、何を感じ、どう生きているのでしょう。その時代を知る編集者の中川右介さんが、アイドル評論家・中森明夫氏の著作をベースに当時の東京を振り返ります。
今も東京にいる彼の、「未完の東京物語」
私が中森氏と知り合ったのは最近ですが、読者としては、彼が世に出た頃からよく読んでいました。彼が書くものが私の関心のある分野のものが多かったからです。
しかし初めて彼の署名のある記事を読んだときは、正直なところ、その内容以前に「中森明菜」をもじったペンネームに、明菜ファンとして不快感を感じました。
この本ではそれが彼が考えたペンネームではなく、勝手に付けられた経緯も描かれています。そうと知っていれば、もっと素直に彼が書いたものを読めたのにと、と思いました。多分、中森氏が自分で明菜をもじって付けたペンネームだと誤解している人も多いはず。その誤解が解ければいいなと思っています。
さて、前述のように「東京物語」とは、地方出身者の東京での物語です。
『青い秋』は、東京に出てきた青年が、60歳を前にしてなおも東京にいて、1980~90年代の東京を振り返る物語です。彼はまだ東京にいるのです。
真の「東京物語」になるためには、彼は故郷へ帰らなければならず、帰って東京を思う時に、ようやく彼の「東京物語」は「完結」となります。
もちろん、中森氏には「東京物語」として完結させる義務はなく、「未完の東京物語」であっても、それは何ら問題はありません。
『青い秋』には、1970年代から2010年代までのほぼ半世紀の東京のさまざまな「ところ」の、さまざまな「とき」が凝縮されています。
東京は変わる――だが、ある日を境にして劇的に変わるのではなく、毎日、毎秒、少しずつどこかが変化し、気づくと、大きく変わっている、そんな都市です。
そこに生きる「私」は、定職のない自由業というか自営業で、結婚せず、子供もいません。就職、転職、独立、結婚といった人生の「転機」、区切り、境い目のないままに生きてきた人です。
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