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【東京】

<明日へ2020>(5)性的少数者らの交流センター 一橋大学大学院生・本田恒平さん(24)、山内浩平さん(23)

打ち合わせをする山内さん(左)と本田さん=国立市の一橋大で

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 国立市の一橋大で、同性愛者だと暴露(アウティング)された大学院生の男性が校舎から転落死したのが二〇一五年八月。不幸な出来事をきっかけに、有志の卒業生らが構想を練り、昨秋にジェンダーやセクシュアリティー(性のあり方)を学び、学生やLGBTなど性的少数者が交流できるセンターを大学内に設置した。今春からの本格稼働を目指し、議論を重ねる日々を送る。

 LGBTの居場所づくりを進める卒業生らの団体「プライドブリッジ」と、一橋大ジェンダー社会科学研究センターとの共同事業だが、運営の中核を担うのは学生で、主要メンバーは、ともに大学院生の本田恒平さん(24)と山内浩平さん(23)。全国的にも珍しい大学内の活動を、「一橋大から、LGBTなどへの理解を全大学に広めていきたい」と話す。

 現在、約十人の学部生と大学院生がイベントの企画やLGBTに関する研修、拠点施設として機能させるための情報収集などをしている。まずはホームページの立ち上げに着手し、学内での映画上映会の開催も検討している。

 本田さんと山内さんには、センターを育て、発展させていきたいと強く思う動機がある。

 本田さんは高校時代、留学先で出会った女性と、大学四年のときに偶然再会した。転落死した男性の妹だと知らされて使命感が芽生え、男性の命日に学内で献花台を設置する活動などを続けてきた。LGBTの積極的な支援者を意味するAlly(アライ)で「人権は万人が保障されている。百パーセントの気持ちはわからなくても、みんなで追求していかなくてはいけない」と力説する。

 山内さんは大学に入って自分がゲイだと気付いた。別の大学の当事者サークルに入り、仲間に恵まれたが、大学の日常生活では、教授や友人のゲイをばかにするような言葉に傷ついた。今春に就職するが、学内でカミングアウトするつもりはない。「理解はまだ広がっていない」と強調する。

 転落死があったとき、山内さんは大学一年で、現場のすぐ近くの体育館にいた。何があったのか詳しく知らされず、事件のことは忘れていた。翌一六年、ニュースで亡くなった人がゲイの男性だったと知り、当事者サークル「ORB(オーブ)」を作った。

 最盛期は二十人の当事者が集まったが、山内さんの就職とともにサークルも解散する。後を託すのが、春以降もかかわっていくセンターで「一人でもいい。同じような当事者やアライの人がいると心の支えになる。この場がそうなってくれれば」と期待を込める。

 本田さんは「自分の責任ではないことを背負い込まないよう、まずは一橋大に誰かに相談できる環境をつくっていきたい」と前を見据える。 (竹谷直子)

 

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