はじめに
- 「クッション」についての文がかなり長い上に、努力値振りの調整先もないです。調整だけを見に来てくださった方は申し訳ありません。
- 専門用語等をできるだけ抑えましたが、それでも意味が分からなければ遠慮なく質問なさってください。
こんにちは。相変わらずの駄文ですがお付き合いください。
「クッション」の意味
ポケモンにおける緩衝材とは何なのかと申しますと、抽象的な言葉で表せば「受けが成立しないような高火力ポケモンの技をいったん受け止めてパーティへの圧力を緩和する役割」のことを言います。意味が分からないと思うので、四種族のポケモン達の力を借りて具体的に説明いたします。
【想定】
自分:トゲキッスウインディトリトドン vs アイアント相手
自分のトゲキッスと相手のアイアントが対面したとしましょう。
こちらのトゲキッスより相手のアイアントの方が素早く、さらにトゲキッスはアイアントのアイアンヘッドを耐えませんので、「対面不利」です。
アイアントは炎四倍弱点ですのでウインディに交代すればいい…と思いきや、ウインディよりアイアントの方が素早いうえ、ウインディはHP振りのみではアイアントのアイアンヘッド+ストーンエッジを耐えません。ウインディによるアイアントの受けは成立していないのです。
しかし、ウインディはストーンエッジだけなら耐えるので、アイアントに対面から勝てると言えます。
ここで、トリトドンがクッションとして役に立ちます。
アイアントにウインディではなくトリトドンを繰り出し、アイアントにあくびを決めれば、アイアントの苛烈な攻撃を一旦耐え凌ぐことができる、というわけです。その後の立ち回りでウインディをアイアントと対面させてしまえば、今度はウインディがアイアントの攻撃を耐えられるので「対面有利」となります。
受け切れない相手エースアイアントの攻撃をいったん受け止めてトゲキッスやウインディへの圧力を減らす"緩衝材"、これが「クッション」の意味するところです。
「クッション」を採用する理由
「受けを得意とするポケモンに頼れば相手ポケモンを何度でも受けられるわけだが、それでなぜいったん受け止めるしかできないクッションを使うのか?」
と思われてしまうかもしれません。もっともらしい疑問ですが、以下の二点を理由に挙げて論破します。
一点目は、環境自体の問題として、受けという行為が非常に"脆く、弱い"からです。
先ほど挙げたアイアントがまさにその一例でしょう。鋼+格闘+岩+電気の範囲を全てめちゃくちゃな火力で繰り出してくるアイアントを、後出しから受けきれるポケモンはいません。受けポケモンの筆頭として同じく先ほど名前を挙げたアーマーガアや、皆様を苦しめているであろうサニーゴ(ガラル)ドヒドイデナットレイなどでさえです。
アイアントの他にもサザンドラヒヒダルマ(ガラル)など受けを許さない高火力広範囲アタッカーは環境に名を連ねています。受けが"脆い"と言ったのはこういうことです。
また、例えばアーマーガアがミミッキュの前に着地したとしましょう。アーマーガアはミミッキュに有利です。何故なら、相手が剣舞シャドークローでゴリ押そうとしてきても、鉄壁かビルドアップを使えば逆に詰ませることができるからです。これは真理です。
これを逆から考えてみたら─すなわち、アーマーガアは鉄壁かビルドアップを使わないとミミッキュを安全に対処できない、と考えたらどうなるでしょうか。もしアーマーガアが鉄壁を使うタイミングで、相手がヒートロトムに交代してきたら?特殊アタッカーであるヒートロトムの前に鉄壁は何の意味もなさず、かといってアーマーガアを失えばミミッキュに勝てない…という状況は容易に想像できます。当然こちらの取る手は交代であり、そのターンヒートロトムはノーリスクで行動できることになります。つまり何が言いたいのかと言えば、受け切る為の行動は得てして隙が多いということです。受けが"弱い"と言ったのはこういうことです。
二点目は、クッションは有利対面の創出に寄与できるので、バトルの結果としての勝利を迅速に実現できるからです。
先ほど説明した通り、一体の強力なポケモンに対してこちらも一体の受けポケモンで対処しようとするとどうしても限界があるものです。
しかし、よく見てみると、現環境には「多少の相性不利をダイマックス(以下「DM」と略します)によって無理やり押し切れるので後出しからの受けは成立しづらいが、対面からなら比較的処理が追いつきやすいポケモン」が多いです。
先ほど挙げたアイアントもその一例で、後出しから受けられはしないものの、ウインディやエースバーンなどを対面させてしまえば比較的楽に勝つことができます。また、トゲキッスにダイジェットを使わせてしまえば、先攻大文字で焼き払った上で、そのまま自身が相手のパーティを全壊させてしまうなんてことも可能です。アイアントが強いのは受け出しを許さないからであって、有利対面を作ってしまえば簡単に沈みます。そしてその有利対面を作るチャンスを生むのがクッションであるというわけです。
あくまで一例ですが、アイアントにトリトドン受け出しからあくび→交代で出てくるトリトドン突破用の草技持ちに対してトゲキッス受け出し→DMを切ってダイジェットと動いてしまえば、先行大文字で一発KOを取られるアイアントはもはや役に立たなくなり、今度はトゲキッスが全抜き体制に入れる、といった形です。
要は、「受けが成立しない相手が多いのならば、いっそのこと受けきるのをあきらめて、相手がこちらのポケモンを受けきれない状況を先に押し付けて勝つ」という考え方です。実際、今まで書いた通り、現環境には受けが成立しない相手が多いのですから、強力な相手への対処法として「受け」よりも「クッション」の方が効果的であるのです。
以上、「受け」と比較した際のクッションの優位性について説明しました。では、次にトリトドンの説明に入ります。
クッションとしてのトリトドン
クッションとしてのトリトドンの強みをまとめると以下のようになります:
- 防御性能が高い
いかにクッションの役割が「いったん」相手の攻撃を凌ぐに過ぎないといえど、運用に際して交代際+対面時の一撃を受けなければならないのは事実ですから、防御性能はクッションとしての性能に直結します。
この点、トリトドンは高めのHP種族値を持ち、さらに特性込みで水・電気無効、炎・鋼・岩・毒半減、これに対し弱点は草のみと非常に優秀な耐性も兼ね備えます。
草技4倍弱点という点はデメリットに見えて、実は同時に大きなメリットでもあります。
トリトドンはその防御性能の高さの為、草技以外でなかなか崩されにくいですが、草技は半減受けしやすいので、後続の展開の起点にしやすいからです。
例えばトリトドンにギャラドスが出されたとして、相手は下手に草技以外を撃てばあくびを入れられてしまうので草技を撃ちたいところですが、これにトゲキッスなど制圧力の高いポケモンを軽い負担で出せれば、今度は相手がトゲキッスを受けるために四苦八苦する羽目になる、といった具合です。
- あくびを習得する
おさらいになりますが、クッションの役割は「有利対面を作るチャンスを生む」ことです。
ゆえに、クッションにはそのチャンスを作るための手段が必要です。具体的には「相手の攻撃をもう一発受けたうえで後続に繋ぐ」「相手を一度退却させる」「そのまま自分が突破されたとしても後続に残せるような何らかの補助をする」のいずれかです。もっと具体的に言えば、一番目には「後攻とんぼがえり/ボルトチェンジ等の技又は危機回避や脱出ボタン等のギミック」、二番目には「あくび/ほろびのうた」、三番目には「トリックルーム/麻痺や睡眠状態の付与」などが、それぞれ該当します。
あくびという技は、このうち二点目と三点目を兼ね備えた技です。相手が退却すれば二番目を満たし、居座って無理やり突破してくれば三点目を満たすからです。
従って、クッションをさせるにあたり、この技の存在は大きなアドバンテージとなります。
- 相手次第で受けにもなれる
トリトドンは自己再生を習得するので、虫技の無いアイアントやミミッキュ対面等では受けが成立する可能性があります。また相手の行動回数を削減できるあくびも受け性能の拡大に貢献しています。
一体のポケモンが複数の役割をこなすことは非常に重要なことです。何故なら、ランクバトルに参戦可能なポケモンは圧倒的に多いのに対し、パーティの上限はたった6体であるからです。
例えば「クッション」と「対電気タイプ」に一枠ずつ割いていたところ、これをトリトドンの投入によって両方とも解決できれば、空いた一枠に違うポケモンを入れてパーティ全体の対応可能範囲を拡張することができる、ということです。
この点、トリトドンはボルトチェンジによる逃げを許さず、もう片方の一致技をも半減以下に抑え込んでいます。
但し強引なダイアークとスカーフトリックには注意が必要です。
以上、トリトドンのスペックについて説明しました。次に、具体的な運用について検討していきます。
具体的な運用
ということは、クッションの性能を引き出すには、適切な味方と組み合わせる必要があります。
まず推奨したいのが飛行DMエースです。トゲキッスリザードンルチャブルスピンロトムなどです。
彼らは一ターンの猶予さえあれば全抜き体制を整えられるのに加え、彼らへの対策としてはウォッシュロトムヒートロトムバンギラス等が用意されている場合が多く、ここをトリトドンで補完することで、その一ターンの猶予を容易に作り出せるからです。
そして、飛行DMエースの裏に忍ばせておきたいのが高速広範囲スイーパーです。ドラパルトやスカーフサザンドラヒヒダルマ(ガラル)等です。
飛行DMエースの空爆で精魂尽き果てた相手を一掃したり、逆に序盤に圧力をかけておいて飛行DMエースにまとめて薙ぎ払わせる為です。
今挙げたスイーパー達はいずれも後出しするにはやや心もとない耐久力ですが、これをクッションでつなぎます。彼らはとんぼがえりを覚えるので、様子見がてらトリトドンを出しやすい点も評価に値します。
まとめますと、飛行DMエース+高速広範囲スイーパー+トリトドンの編成が相手への圧力・それを補助する展開力ともに優れた並びである、ということになります。
攻め駒3~4枚+展開補助役1~2枚などのような攻め気質のパーティに採用するのがわかりやすく強いでしょう。
各種データ
HP/攻撃/防御/特攻/特防/素早さをそれぞれHABCDSと表記します。
〇特 性:よびみず
〇努力値:H236 B252 D20
〇実数値:H216 A* B132 C112 D105 S59
〇持ち物:オボンのみ
〇技構成:[ねっとう/あくび/じこさいせい/@1]
- 性格について
素早さを下げる意味はありません。
- 努力値について
HPはオボンの実回復効率最大の4の倍数とし、余りを特防へ振っています。
- 持ち物について
今回は発動条件が緩いオボンの実とします。これを持つことで、臆病トゲキッスの一致130技(DMエアスラッシュ/マジカルシャイン)をオボン込みで2発耐えてあくびで切り返す動きが可能となります。
- 技について
あくび→熱湯と動くと火傷が入った場合に眠らなくなるので注意が必要です。
@1は欠伸をもらってもなお剣舞等でゴリ押してくる相手への牽制となるクリアスモッグを推奨しておきます。
コメントでうずしおについて提案がありました。
相手の交代を抑制することは有利対面の創出につながりますし、またトリトドンを2発で突破できないポケモンに対しては自己再生と組み合わせて嵌め倒すことが可能となります。クリアスモッグを採用しない場合の第一候補としておきます。
あくびはヌオー、クリアスモッグはマタドガス(ガラル)、カウンターとミラーコートはソーナンスから遺伝するのが手っ取り早いです。
改訂調整案(19/12/23追記)
〇実数値:H217 A* B125 C112 D110 S59
こう振ると、臆病C252振りトゲキッスのDMエアスラッシュ(=DMマジカルシャイン)をオボン込みで2耐えするようになりますので、トゲキッスに対してもある程度のクッション運用が可能となります。
もちろん悪巧みから入られると一撃で突破されますので、トリトドンにクッションを期待するのであれば、悪巧みを積まれないような対面からクッションを展開する必要があります。
物理耐久がわずかに低下している点、及びHPが奇数である為怒りの前歯等を食らってもオボンが発動しない点に注意してください。
ダメージ計算
じゃれつく 32.8-39.8
ダイフェアリー 47.6-56.4/乱数2(84.4%)※あくび不発に注意
ドリュウズ→トリトドン(陽気/AS252)
じしん 37.5-44.4
つのドリル やめろ
バンギラス→トリトドン(意地/HA252)
かみくだく 32.4-38.8/乱数3(98.7%)
ダイアーク 52.7-62.5
アイアント→トリトドン(陽気/AS252/命の珠/張り切り)
アイアンヘッド 25.4-29.6
ダイスチル 40.2-47.6
ばかぢから 50.0-58.7
ダイナックル 39.8-46.7
ウオノラゴン→トリトドン(意地/AS252/頑丈顎)
げきりん 37.5-44.4
ヒートロトム→トリトドン(控え目/HC252)
あくのはどう 23.1-27.3/乱数4(56.7%)
ダイアーク 37.9-43.9
トゲキッス→トリトドン(臆病/CS252)
マジカルシャイン 34.7-40.7
ダイフェアリー 55.5-65.7/オボン込み乱数2(50%)
ギャラドス→トリトドン(陽気/AS252)
とびはねる 30.5-36.1/乱数3(36.2%)
ダイジェット 45.8-54.1/乱数2(46%)
トリトドン→ヒートロトム(控え目/HC252)
ねっとう 53.5-62.4
トリトドン→ミミッキュ(陽気/AS252)
ねっとう 32.3-37.6/乱数3(92.7%)
トリトドントリトドンについては以上です。
ここから先は、コメントで挙がった議題につきまして、私なりに検討をしていきたいと思います。
余談:ヌオーヌオーとの比較
- 熱湯の火力
ヒートロトム(HP252振り)
トリトドン確定2発/ヌオー確定3発
ウインディ(耐久無振り)
トリトドン確定2発/ヌオー60%程度の乱数2
ドリュウズ(無振り/DM状態)
トリトドン熱湯+相手のDMが切れた後の熱湯で高乱数撃破/ヌオー同条件で撃破不可能
ミミッキュ(無振り/化けの皮スリップ込み)
トリトドン確定3発/ヌオー確定4発
アイアント(無振り)
トリトドン確定2発/ヌオー乱数2発(5.1%)
熱湯の火力はトリトドンの圧勝ですね。
確定数が1多い=相手に1回多く行動されるということですので、火力の高さは防御力にも結び付きます。特にドリュウズは一撃必殺技、ミミッキュは呪い等で崩してきますので、長期戦は危険です。
なお、トリトドンの特性呼び水はヌオーの貯水と違って特攻上昇の追加効果を持っていますが、水技を撃ってくる相手はほとんどが特防高めの水タイプで、トリトドンの一段階上昇熱湯ごときでは、彼らの鱗に傷一つつけられないでしょう。
- 物理耐久力
ドリュウズ(陽気/AS252)じしん
トリトドン確定3発/ヌオー確定3発
パルシェン(意地/AS252)つららばり5回
トリトドン確定3発/ヌオー確定3発
ギャラドス(陽気/AS252)パワーウィップ
トリトドン確定1発/ヌオー確定1発
ウインディ(陽気/AS252/命の珠)フレアドライブ
トリトドン確定4発/ヌオー乱数4発(91.0%)
バンギラス(意地/HA252)かみくだく
トリトドン乱数3発(98.7%)/ヌオー乱数3発(52.39%)
アイアント(陽気/AS252/命の珠/張り切り)DMアイアンヘッド
トリトドン確定3発/ヌオー確定3発
数値だけ見ると、ヌオーはトリトドンよりわずかに物理耐久が高いです。
しかし、ダメージ計算を見るに、確定数が変動しうるほどの差はないように思われます。
- 特殊耐久力
ヒートロトム(控え目/CS252/晴れ)DMオーバーヒート
トリトドン乱数2発(27.3%)/ヌオー確定2発
サザンドラ(臆病/CS252/拘り眼鏡)りゅうせいぐん
トリトドン乱数1発(12.5%)/ヌオー確定1発
トゲキッス(臆病/CS252)DMエアスラッシュ
トリトドン乱数2発(73.8%)/ヌオー確定2発(オボン込みで次が受からない)
最大の差は、トゲキッスのダイジェットに対してクッションが成立しない点です。
他にも特殊高火力勢からは並の技で確定1発を取られることも珍しくないので、クッションを遂行できる相手の範囲はトリトドンの方が広いといえるでしょう。
- 総評
同じ運用をするならば、計算を見る限りではトリトドンの方が勝っているように見えます。
ヌオー固有の利点として、相手の水技に繰り出した際に体力を回復できるという点があり、またヌオーは特性天然のイメージの方が強い為、水技を受ける機会が無いわけではありませんが、しかしこれは所詮相手依存の不確実なメリットです。
このメリットを得る代わりに肝心の耐久力と処理能力を大きく落としているとなれば、完全劣化とまではいかなくともトリトドンに性能で劣っていると考えるべきでしょう。
以上です。