滋賀からZAILCさんがやって来た。アコードeuroRだ。
「なんちゃらオーリンズを使い、ツインスプリングを試していますが、なかなか上手く行かないです。院長がどのようにセットアップしてるか知りたくて。」
この15年くらいで出て来た、新しいサスペンションシステム。
具体的には、バネを2段や3段に重ねてシングルスプリングで望めない特性を生み出す事や、
車体設計的に無理のあるダンパーの動きを是正する為にあるテクニック。
走破性とコントロール性能の高い次元の両立を目指して開発されたモノだ。
実はメーカー純正サスもこのようなモノは多い。
当時テクノプロスピリッツに在籍していた、現「baseM」の間野さんだと記憶している。
・ドシャコタンなのに快適で踏める!
・駆動、制動、コーナリング性能は、シングル車高調とは段違い!
・だからブレーキパッドがランクダウン出来る!
・だから機械式LSDがほぼ不要になる!
その謳い文句に夢を見て、そんな世界を知りたくて、試行錯誤に七転八倒。
うえしまはビンボーな走り屋だ。その謳い文句のうちの「経済性快適性」に惚れた。
これを習得すれば、「全天候型の、まるでノーマルの脚をスープアップしたような、限界も高くて快適で経済的なクルマが出来るかもしれない!」
でも、取り組み始めてからはとても難航した。
「どの状態が良いのか解らない。」
「どのようにすれば正解なのか解らない。」
「webの記述も、肝心なとこの記載が無いので知りたいことが調べられない。」
目隠しで手探りで試し続けた。
週に3度はセッティングを変え、試走。
道路じゃ分からない事を確かめる為にサーキットへ。
ひたすら、ただひたすら、自分の感性だけを信じて七転八倒。
かつて導いてくれた恩師の言葉。
「良いセッティングとはね、無意識にドライビング出来るって事だよ。人が怖いと思うようではまだそのセッティングは足りないんだよ。
市販車はね、ボクら専門家が大勢で一生懸命開発して、どうにかまとめたモノなんだ。
その骨格を使ってカスタマイズするなら、用途を絞ったとしても怖いと感じる事は無い。はずなんだよ。」
それだけを信じてひたすら独力開発の日々。
素直に間野氏にお願いすれば良かったのかもしれない。
しかし、お願いするカネもヒマも無いうえしま。
だから小遣いとヒマな時間を投入し、ひたすらやり続けた。
七転八倒するうちに、おぼろげに見えてきたツインスプリングのセッティング。
「恐らく、コレがそうなんだろう。」
迷いながら、疑いながら作り上げたのが、
良く聞かれる。「Mってなんすか?」
・いまだ面識は無いが、間接的に教わった、パイオニアの「間野氏のM」
・開発を思い立った当時の自分のハンドルネーム「マリヲのM」
・いつでもどこでもこの脚1本で満足いく、「マルチパーパスのM」
それを集約して名付けたのは、今まで内緒だった。
どれもユーザーの皆が大喜びしてくれた。
ラルグス/ブリッツが多いのは、ただ単に「安く仕上げたいから」それだけ。他意はない。
「うーむ。おーいコレ、皆乗せて貰いな!勉強になるぞ!」
「うえしまさんって、本当は何のお仕事してるの?」
「まさかこんなのが市販の組み合わせで出来るなんて。センス凄いね。」
こちらこそダメ出しされると決めつけて向かったのに、大絶賛されて歓喜した。
それから、偉そうにサスペンションマイスターなどとタイトルに付けるようになったワケだ。
ZAILCさんのアコード。うえしまから見れば「組み合わせはそこそこ。セットアップがダメ。総じて惜しい」仕様だった。
なので、なにもパーツは変えずセッティングだけ。うえしまのセットアップ方法も残さず見て貰う事にした。
手を出すのは比較的簡単だが、セットアップと性能維持が大変なツインスプリング脚。
取り組んでいる人は沢山居るが、プライベーターでまともに出来ている人は、噂によると今だ20人程度なんじゃないかと言われる世界。
とりあえずその中の一人。「うえしま流のセットアップ」だ。
やる事は意外にシンプル。
・ロッド長確認。
・スプリングの有効ストロークの合計を確認。
ここまではZAILCさんも出来ていたので、そこからのコト
・プリロード(スタートレート/バンプリバンプ配分)調整
・車高バランス調整
・減衰調整
・実走現車合わせアライメント調整
ZAILCさんは恐らく、そのやり方に驚いたに違いない。
ハンドルを握り、感嘆と溜息をつく。しかし表情は明るい。
うえしまはそれで良いと思っている。
チューニングに終わりはない。進むか止まるかを決めるのは本人次第。
「いじる楽しみ」「走る楽しみ」両方味わうのもなかなか良いものだから。
ZAILCさんのblog。
おしまい。