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年末年始に遊びたいSteamのおすすめローグライトー日本語対応作品を中心に【年末年始特集】【UPDATE】

Steamで遊べるおすすめのローグライトゲームを「アクション系」「ボードゲーム系」「サバイバルRPG系」「アドベンチャー系」の4つに分けてお届けします。

連載・特集 特集

年末年始、G*S読者の皆様はいかがお過ごしでしょうか。ゲームでもしてのんびり過ごしたいものですね。ちなみに筆者のいる台湾では春節の方を祝うため、正月の雰囲気はあまりありません。平日と変わらない様子で過ごしており、ちょっと寂しいような気もします。今回はSteamで遊べるおすすめのローグライトゲームをお届けします。

1980年代にダンジョンRPG『ローグ』が発表され、その発展形として数々の「ローグライク」ゲームが誕生しました。有名なところでは『トルネコの大冒険』『風来のシレン』などですね。ランダム生成されたマップとターン制バトル、死んだら終わりで最初からやり直しといった特徴があり、多くのゲーマーから愛されてきました。

いっぽう「ローグライト」は『ローグ』要素の一部を受け継いだゲームを現わす概念で、ゲーム評論家のTotalBiscuit(John Peter Bain)氏によって提唱された言葉です。今回はSteamでプレイができ、かつ筆者が嵌っていた中毒性の高いローグライトおすすめ作品をジャンル別でお届けします。

アクション系


『The Binding of Isaac: Rebirth』ーもはや古典的名作のダンジョンシューティング

グロ可愛いキャラクターたちが登場する四方向シューティング『The Binding of Isaac』のリメイク版。可哀想な生い立ちのIsaacを操り(どう可哀想かはゲームをプレイしてみてください)、『ゼルダの伝説』を思わせるような見下ろし型ダンジョンを探索していきます。ちなみにIsaacが発射している弾はです。ダンジョン内には様々なアイテムやショップがあるので上手く利用しましょう。各フロアにはボスがいて、倒すと次のフロアへ続く階段が現れます。分かりやすいゲームシステムと、短時間でさくっと遊べるテンポの良さがいいですね。グロ表現が多いので、苦手な人は注意。DLC「Afterbirth」導入で日本語表示にすることができます。

(製品情報:定価1,480円、日本語有り(DLC「Afterbirth」必要)、Steamページ


『Risk of Rain』ーパワーアップする爽快感の名作横スクロールアクション

横スクロールアクションのローグライトを遊びたいのであれば、本作を買っておけば間違いないでしょう。様々なアビリティを持ったキャラから一人選択し、モンスターの跋扈する未知の惑星を探索していきます。ステージクリア型のゲームで、各ステージにはボスが存在します。特筆すべきなのは、惑星で拾えるアイテムの効果。取れば取るほど強くなっていくので、最終的にはほぼ無敵のキャラが出来上がったりします。

ただ注意しなければならないのは、時間が経てば経つほど敵が強くなっていくこと。リスクを取ってアイテム集めなどに時間を費やすか、それとも敵が強くなる前にさっさとクリアするかの選択を迫られることになります。オンラインで4人までの協力プレイも可能ですので、フレンドと一緒に楽しむこともできます。日本語はありませんが、アイテム効果が分かればプレイに問題はありません。3Dになった続編『Risk of Rain 2』(プレイレポート)も配信されているので、「2Dよりも3D」の人は2をプレイするのがいいでしょう。

(製品情報:定価980円、日本語無し、Steamページ


『Hand of Fate』ーテーブルトークRPGと格闘アクションの融合

自分の作ったカードデッキを引くことで、ストーリーが展開していくRPG。テーブルトークRPGのようにGM(ゲームマスター)によって物語が語られていき、プレイヤーは出された選択肢に対してどうすべきかを判断していきます。戦闘が発生すると、実際に自機を操作して敵と戦わなければならないため、格闘アクションの腕も要求されます。プレイするごとに新しいカードを得ることが出来るので、デッキ構築をして自分だけの物語を作り上げてください。続編『Hand of Fate 2』も配信されています。1が気に入ったらどうぞ。

(製品情報:定価1,980円、日本語有り、Steamページ

ボードゲーム系


『Slay the Spire』ー多くのフォロワー作品を生み出したカードビルド型ローグライト

名作カードゲーム「ドミニオン」のデッキビルド要素をローグライトと融合させた作品。カード効果を使い、ダンジョン内の敵と戦っていきます。スタート時のカードデッキは弱いのですが、戦闘やショップでカードを得ることで強化させていくことが可能。ただデッキ枚数が増えれば増えるほど欲しいカードを引けなくなっていくため、強いカードだからといって増やしすぎるのは禁物です。カードの組み合わせによるコンボ効果やデッキ圧縮などを考え、最強のデッキを作り上げましょう。本作がヒットしたことにより、多くのフォロワー作品が誕生したことから、ゲーム業界に大きな影響を与えた作品と言えます。

(製品情報:定価2,570円、日本語有り、Steamページ


『Dicey Dungeons』ー戦略半分、運半分のローグライトダイスゲーム

系統的には『Slay the Spire』リスペクトな作品ですが、本作はカードではなくダイスを使います。プレイヤーはダイスを置くことのできるカード(装備カード)を枠内に入れられるだけ配置し、戦闘ではそのカードの上にダイスを置くことで攻撃することができます。ただしカードには「4以下の目のダイスのみ」など条件が書かれているため、ダイスの目によっては置くことができない場合も。ダイスが無駄にならないよう、カードを配置をしましょう。すごろくのアイテムであるダイスが主人公なので、お正月に遊ぶのに適した雰囲気のゲームとも言えます。

(製品情報:定価1,520円、日本語無し(日本語サポート予定有り)、Steamページプレイレポート

サバイバルRPG系


『Don't Starve』ー飢え死にしないように生き延びよう

ゲーム開始時に、主人公はどこかの島に投げ出され、そこで独りで生きていかなくてはなりません。食料を探したり生産施設を整えたりして飢えをしのぎ、武器や防具を作って敵から身を守りましょう。雨も雪も降るし、夜になって明かりがないと敵に襲われるし、発狂することもあるしで、胃が痛くなるようなサバイバルを強いられることになります。かなり長丁場なゲームプレイになるため、死んだときの喪失感は半端ではありません。またノーヒントでゲームが進行するため、ネットの情報に頼らざるを得ない部分もあります。DLCがいくつか出ていますが、筆者のおすすめはピッグマンの世界を冒険できる「Hamlet」(プレイレポート)です。飢え死にしないように一日でも多く生き延びてください。

(製品情報:定価1,010円、日本語無し(日本語化MODあり)、Steamページ


『Darkest Dungeon』ーストレスに耐えながらダンジョンを突き進め

『Don't Starve』以上に胃の痛くなるサバイバルRPG。終始薄暗い配色の画面の中、最大4人の冒険者のパーティを編成してダンジョンに挑みます。ダンジョン内で起こる様々なイベントや戦闘によって冒険者たちのストレスが蓄積し、Maxになると鬱になったり発狂したりします。バッド展開目白押しで、プレイヤー自身もリアルでストレスが溜まるため、ゲームだけでなく自身のストレス管理もしっかりしておきましょう。冒険者はよく死にますので、ブラック企業経営者のごとく使い捨てていく冷酷さも必要になっていきます。まさにダークなファンタジーゲームです。

(製品情報:定価2,480円、日本語有り、Steamページプレイレポート


『Dungeon of the Endless』ー洗練されたシステムのタワーディフェンスローグライト

『Endless Legend』や『Endless Space』など「Endless」シリーズのスピンオフ的作品。ダンジョン探索とタワーディフェンスを同時にするような内容です。プレイヤーはドアを開けることによって次の部屋へ進むことができますが、敵が待ち受けている場合があります。プレイヤー自身でも攻撃できますが、相手の数が多いとすぐに死んでしまうでしょう。そのため、撃退用モジュールなどをあらかじめ部屋に仕掛けてからドアを開けるといったこともしなければなりません。

ダンジョンの途中で仲間が加わることもあり(最大4人パーティ)、武器や防具を入手してパワーアップさせることもできます。「Endless」シリーズの特徴でもありますが、システムやアイコン配置が洗練されていて、全体的におしゃれ感があるのがいいですね。日本語サポートはありませんが、モジュールやアイテムの効果、キャラの能力が分かればプレイに支障はないかと思います。

(製品情報:定価1,180円、日本語無し、Steamページ

アドベンチャー系


『Curious Expedition』ー19世紀後期を舞台にした冒険アドベンチャー

本作の舞台は19世紀後期。著名人の一人となって世界各地を探検し、名声や宝、知識などを得るのが目的です。本作にはライバルたちが登場し、冒険によってどれだけの功績が得られたかを競い合うことになります。冒険はヘクスマップ上で移動が行われ、イベント画面になるとADVゲームのように選択肢が出てきます。プレイヤーには正気度があり、これが0にならないよう注意しましょう。テキスト中心のゲームですが、10月に待望の日本語サポートが行われました。また来年には『Curious Expedition 2』が配信される予定です。古き良き冒険の世界に挑戦してみましょう。

(製品情報:定価1,480円、日本語有り、Steamページ


『FTL: Faster Than Light』ーSFローグライトの決定版

最後はローグライトブームの先駆けとも言える名作SFゲーム『FTL: Faster Than Light』。プレイヤーは宇宙船やそのクルーたちを操り、星系を進んでいきます。進んだ先では優秀なクルーが加わったり、敵が船内に侵入してきたりなど、様々なイベントが起こります。船内のクルーはRTSのように動かすことができ、宇宙船同士の戦いだけでなく、侵入者とのバトルもあるのがSF映画っぽくていいですね。

宇宙船にはパワーがあり、それを割り振って酸素やエンジンなどのシステムに供給します。強力な装備を手に入れても、パワー不足では使うことができません。ゲーム中はこの配分に終始頭を悩ませることになるでしょう。本作の発展形としてのリスペクト作品『Crying Suns』(プレイレポート)も配信されていますので、本作をプレイし尽くした方はトライしてみるといいかと思います。

(製品情報:定価1,480円、日本語有り、Steamページ


おすすめのローグライトゲーム、いかがでしたでしょうか。『ローグ』自体を遊んだことのない世代にしてみれば、「ローグライク」と「ローグライト」の違いがピンとこないかと思いますし、どちらも「ローグライク」で呼んでしまっているかと思います。

その現状に警鐘を鳴らすわけではなく、筆者としては「通じればどちらでもいい」と思っています。現状、「ローグライト」と言ったほうが通じないですし、デベロッパーも「ローグライク要素のあるゲーム」、もしくはストレートに「ローグライク」と表現していることもあります。そもそも現在流行っている「ローグライク」と言われる作品のほぼすべてが「ローグライト」ですし、そのことから「ローグライト」=「ローグライク」という認識になっているのだと思います。

海外で「ローグライト」という言葉がどうとらえられているのか気になったので、掲示板などを適当にいくつか見て回りましたが、「そもそもローグライクの『ライク(「~のような」の意味)』を個々人がどう解釈するかの問題なのに、一方的に定義をしたり、『ライク』と『ライト』を分類してそれを押し付けるやり方はおかしい」、「(ローグライトを)ローグライクと言ったところで誰も気にしない」「8歳児が『トマトは果物だよ。野菜じゃないよ』と言ってる様子に似ている(注1)」といった手厳しい意見も見られました。逆に「ローグライトのほうが言葉の新しさがあっていい」という意見もあります。
注1:トマトは野菜になったり果物になったりと、各国においても定義が曖昧。日本やアメリカの行政は「野菜」とし、植物学では「果物」となっている。立場によって変わるので、どちらでもいいというのが結論。

ローグライクは2008年にベルリンで行われた「IRDC(International Roguelike Development Conference)2008」において定義が行われ(ベルリン解釈)、それ以外に対する呼び名として「ローグライクライク」や「ローグライト」などが使われ始めたという背景があります(注2)。
注2:ベルリン解釈や両者の違いについての補足として、筆者のブログで詳細記事を書いたので、興味のある方はご一読ください。

ローグライクもローグライトも基本的には曖昧な定義であり、絶対そう分類しなければならないわけではありません。むしろ両者の分類で、ゲーマー同士の不要な対立が起こることの方が害があると思われます。「ローグライト」という言葉を使うのはいいのですが、それを他人に押し付けるようなことはしない方がいいとは思います。

言葉と言うのは必要性があって作られ、不要であれば廃れていくものです。今の世代からすれば、大もとの『ローグ』を知らない以上、両者を分ける必要性を感じられないでしょう。そもそも「ライク」をどうとらえるかの問題もあります。将来「ローグライト」という言葉が廃れる可能性もありますし、むしろその方が分ける面倒くささがなくなっていいという人もいるかもしれません。

今後「ローグライト」が一般化されるか廃れるかは分かりませんが、もし廃れたのであれば、この記事のタイトルを目にしたときに「こんな時代もあったよね」と懐かしんでいただければと思います。他にもおすすめのローグライクやローグライトがありましたらコメント欄でお知らせください。


■筆者紹介:渡辺仙州 主に中国ものを書いている作家。人生の理念は「知られていない面白いもの」を発掘・提供すること。歴史・シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、「マイナーゲーム.com」「中華ゲーム.com」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。Twitterはこちら
※ UPDATE(2020/1/4 18:20):本文を一部修正しました。コメント欄でのご指摘、ありがとうございました。
《渡辺仙州》
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  • スパくんのお友達 2020-01-04 23:50:38
    ライターのページのライク・ライトの考察面白いけど猫がかわいくて頭に入ってこねぇぇ
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  • スパくんのお友達 2020-01-04 22:52:48
    少し変わり種だけどEVERSPACEが面白かったな。
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  • スパくんのお友達 2020-01-04 21:08:48
    slay the spire は本当面白い!
    ダーケストダンジョンは雰囲気最高だけど合わなかったわ
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  • スパくんのお友達 2020-01-04 20:50:38
    わあ、終わったばっかのウィンターセールで見かけたタイトルがいくつもある…
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  • スパくんのお友達 2020-01-04 20:45:36
    4日でもええがなw
    年末年始ぐらいのんびりさせたれよw
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  • スパくんのお友達 2020-01-04 20:12:23
    ウィンターセール終わる前に記事公開しろよ
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  • スパくんのお友達 2020-01-04 20:12:06
    やっとジャンル分けが決まったのか、Monster Slayersを元祖としてSlay the Spireが確立させたタイプのゲームをDeckbuilding/Card Battlerと呼ぶみたいね
    それMTGとかも入るんだけど、別に良いのかな?
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  • スパくんのお友達 2020-01-04 19:55:28
    ローグライクはnethackとかシレンとかそれ系、ローグライトは主にパーマデス要素入れてるゲームを指してると思ってた
    でもパーマデス入ってるけどちょっとした次回プレイ時のボーナスが積みあがっていくゲームのコミュニティスレッドでローグライトって発言したらイギリスの人に「それはプログレッションだ!」って怒られた
    プログレッション?だったかはうろ覚えだけど日本では聞いたことない単語だった
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    • スパくんのお友達 2020-01-04 19:49:45
      もう1/4なのに今さらかよ
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    • スパくんのお友達 2020-01-04 18:35:25
      「ローグ」ってゲームが始祖なの知らんかったわー。
      もうちょいニッチなタイトルも知りたいなぁ~と思ったけど
      最後の「ローグライクorローグライト?」について語ってる部分は興味深く面白かった。

      書いたの誰だろ・・・って、仙州先生じゃんw
      3 Good
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    e-Sportsはどう教育に活かせるか―人間力を養い、頭を活性化させよう【年始企画】

    いち元プレイヤー、そしてチーム代表という視点から、e-Sportsをどのように教育に活かし、向き合っていくかといった内容をお届け。

    連載・特集 特集

    「ゲームは教育に良くない」「e-Sportsって言ってもたかがゲームでしょ?」――こういった話が常につきまとうゲーム文化。そんな中でもゲームの有用性を広めようとしている人は大勢います。筆者もゲーミングチームを運営し、教育機関と連携しつつ、パートナー企業とともに現在のe-Sportsシーンで活動しています。代表としての動き方に専念してからは、講演なども行うようになりました。本稿ではひとりの「元プレイヤー」、そして「チーム代表」という視点から、e-Sportsを教育に活かす方法をお届けしたいと思います。

    プレイヤーも気付いたら代表になっている


    以前、Game*Sparkでリリースを掲載したり、大会協賛をしてもらったということで名前をご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、筆者はLily Stars Gamingというチームを運営しています。元々『Counter-Strike: Source』のトップチームでプレイヤーをしていましたが、何を思ったか30歳を過ぎた段階で『PUBG』で再びプレイヤーになることとなりました。

    15年前と現在では、グラフィックやシステム面などタイトルを問わず大きな変化がある一方、チーム間でのコミュニケーションや、勝利に必要な要素はほとんど変わっていません。いわば、e-Sportsの本質は全く変わっていないのです。ただ、よりゲーム外からの多角的な視点が求められるようになったり、得やすくなったというのは変化としては大きいかもしれません。

    イベントや講演を経て得られたこと


    2019年11月に、北海道情報大学、北海道eスポーツ連合、北海道eスポーツ協会、道北eスポーツ協会、道南eスポーツ協会、そしてLily Stars Gamingがお手伝いという形で、新千歳空港にて「北海道eスポーツホライゾン」というイベントを開催しました。その中のひとつのコンテンツとして、各代表がテーマを決めたプレゼンテーションやディスカッションを行うというものがあり、筆者はその中で、本稿のテーマでもある「e-Sportsはどう教育に活かせるか」という内容でお話をさせていただきました。

    また、提携する北海道情報大学では2019年12月に一般公開という形で「eスポーツ講習会」を実施し、チームの運営やSNS運用の注意点をはじめ、チーム間でのフィードバックや、自身のロールの設定の必要性など、幅広くニーズに沿った内容で講習を行いました。実際、若年層が多いe-Sports業界では、SNSでの炎上が珍しくありません。それを管理できていないチームも多数存在しており、チーム運営上の大きな問題のひとつとなっています。

    筆者としては、「対戦ゲームは勝てなければ面白くない」と常々思っていますし、ゲームを「悪」だとか「教育に悪い」という風に考え方を極力減らしていきたいと思っています。しかし、そういった声はなかなか届きにくいですし、理解を得るのが非常に難しいということは重々承知の上で、様々な方の協力を得ながらいくつかの機会をいただいてきました。結論から言ってしまうと、自分ひとりがそういった声を挙げてもほとんど何も変わらないというのが現状で、Game*Sparkの編集にお願いし、年末年始企画のひとつとして、本稿の執筆に至りました。

    e-Sportsはゲームでいいじゃない



    個人的には「e-Sportsはゲーム」という言い方に何も問題はないと思っています。ただ、そのゲームがどの程度競技性が高く、他のスポーツと同様にファンとチームやプレイヤーの関係があって、興奮を生み出し、どういった影響を与え、どういった効果があるのか、という認知を広めていきたいと思っているだけです。

    e-Sportsと他のスポーツの相違点は、利益を求めた特定のデベロッパーが開発していて、そのデベロッパーの意向でルールが変更されることがあり、性能や機能、運営が永続的ではないことが挙げられます。とは言うものの、いわゆるフィジカルスポーツでもルール変更はありますし、「開発チームがいなくなった時点で競技として終了してしまうこと」が主な違いと思っておおむね問題ないでしょう。

    e-Sportsという言葉を広める必要性



    e-Sportsというものは「ゲームのうち、競技性があるもの」と筆者は考えていて、話をする際にあえてe-Sportsと呼ばなくても良いと思っています。また一般層に対して認知を広めるにあたっても、わざわざe-Sportsという言葉を持ち出さず「ゲームで大会に出ている人たちがいる」という認識が得られれば、それで十分だと考えています。

    現段階のシーンでは、e-Sportsというものがどういったものかを知ってもらうことが重要です。しかしTVなどの影響もあり、e-Sportsという言葉が思った以上に広まっていることを、前述したイベントなどを通して実感できました。また、e-Sportsというものに興味を示す人も、想定以上に多かったという現状は抑えておきたいところです。

    ゲームは老若男女問わず楽しめるもので、能力も向上させられる



    タイトルによって対象年齢は異なりますが、ゲームはそもそも老若男女を問わず楽しめるもの。筆者も幼少期は塾や習い事漬けで、一週間のうち休みはほぼなかったも同然でしたが、毎日欠かさずゲームをプレイし続けてきました。

    母から「あなたはゲームで文字も数字も覚えたし、東西南北もそこで正しく覚えていた」と言われる程度には、『ドラクエ』や『FF』をプレイしていた記憶があります。もちろん、そういったタイトルに競技性を見出すのは非常に難しいですが、教育のひとつとしては十分に利用できます。また、パズルゲームなどは年齢も問わず、競技性を持ったタイトルとして適切です。

    一方、競技性の高いゲーム、言い換えればe-Sportsタイトルも、教育や様々なことに活かすことができます。対戦ゲームだけでなくアクションタイトルであれば「どうやれば勝てるのか」といった思考が必要になりますし、反応速度が遅ければ勝てないものも多々。戦略が重視されるタイトルであれば頭を回転させ、勝利の道筋を見つける必要があります。

    人間とは不思議なもので、トレーニングを行えば能力がどんどん向上します。筆者も再びプレイヤーとして活動し始めたときには、反応速度が0.02から0.03秒ほど縮み、安定して0.2秒、もしくはそれを切るくらいの速さを記録していました。実際のプレイでは更に速くなっているかもしれませんが。そういった意味でも、これらを如実に表しているのが、少し話題になったような「ゲーマーおばあちゃん」のような方々ではないでしょうか。11月のイベントで聞いた話ですが、高齢者を対象とし、ゲームを通じてより健康と交流を推進するということを目的としている「健康ゲーム健康指導士」というものもあるそうです。

    敢えて触れていきますが、若年層がこういった目的でゲームに触れるとしても、保護者のある程度の管理のもとでプレイしていく必要はあります。暴力描写や過激な表現などの未成年に不適切なコンテンツも、適度に管理すれば「悪」にはならないはずです。ただし、学校の宿題も勉強もせず、ただひたすらゲームしかしていないのはダメなので、きっちりと保護者が見守る上で「お約束」を作って運用していくべきと考えます。

    ひとりでもチームでも考えることはたくさんある


    先にも書いたように、対戦ゲーム全般においてまず必要なものは「反応速度」です。それだけでなく、より強くなるためには自分のプレイを見返しフィードバックしていくという、難しい作業が必要になります。これをきっちりと行うだけでも強くなれますし、行わなければ成長曲線は一気に鈍くなります。

    筆者はチームメンバーに対して「なぜ負けたか」「なぜ勝てたか」「ここをこうやったらもっと楽に勝てたのではないか」といった、勝てた理由も含めてフィードバックを行うのが重要と常々伝えています。いくつかのポイントをベースとして、様々な方向から考えることにより、多角的な思考に加え、戦略面を含めた論理的思考力も育成できます。

    論理的思考力は無意識に育てるのは難しく、最近では教育カリキュラムにプログラミングが含まれているため、より教育に効果的と言えるのではないでしょうか。また、若年層だけでなく、頭を使ったり、反応速度が上がることで、より若さを保つことにも繋がります。

    また、チームであれば意思疎通は必須ですし、ソロプレイヤーでもライバルとのコミュニケーションは必須。言いたいことや情報をちゃんと伝えることで、話す能力も鍛えられますし、チームメイトやスタッフ、他のプレイヤー、さらには自分の所属するコミュニティといった他の人たちとの関係性を保っていくのであれば、社会性も育めるのはないでしょうか。もちろん、横柄な態度ばかり取っていればどうなるかは明らかです。

    「高校」は既に動き出している



    私立高校を中心に、e-Sports部や同好会を立ち上げ、活動をしている学校も増えてきています。筆者が話を聞いた某高校の部活動では、現在『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』を中心にプレイしていて、かなり濃密な戦略会議や反省会が行われているそう。また、顧問をしている教師からは「この先e-Sportsを広げていくためには、できればさらに下の中学生から部活が欲しい」といった声も聞きます。高校でも、部活動として動き出すのはなかなか苦しい面があるようです。

    一方、大学では既に競技としてのe-Sportsだけでなく、脳や体の研究対象としても認識されており、「食事」を絡めた研究も既に始まっています。ゲーム前後の脳や体の違いだけでなく、どういった食べ物や栄養素がプレイ中のパフォーマンス維持に役立つかといった点にも注目して研究されているそうで、e-Sportsに限らず、幅広く応用できることが期待されます。

    現時点ではサードウェーブが全国高校eスポーツ選手権を運営しており、『ロケットリーグ』『LoL』の2タイトルで大会を開催しています。こういった未来を担っていく年齢層の今後の盛り上がりも楽しみなところです。

    今必要なのは「シーンにいる人がどれだけメッセージを伝えていけるか」



    筆者が最も今必要だと感じているのは、実際にシーンにいる人が周りに対してどれだけ正しくe-Sportsというものを伝えられるか、ということです。誤解されてしまっては元も子もありませんし、実際にプレイしている側が話すからこそ伝わるものもあります。言ってしまえば、ゲームを分かってない人にゲームの魅力は伝えられないことと同じです。

    理解が進み、ただ一方的に「たかがゲーム、さっさと勉強しなさい」と言うのではなく「勉強をすればゲームもできる」というように考える家庭が増えることで、子ども達も進んで様々な能力を伸ばせますし、遊びながらも学ぶことに繋がると考えています。もちろん、ゲームで両親や祖父母とも遊んで家族仲を深めることもできますし、ただそれだけではない効果が数え切れないほどあると思います。

    競技シーンにおいては、プレイヤー達が激戦を繰り広げてファンにも興奮を与えることが最大の目標ですが、e-Sportsシーンの中で楽しくプレイして教育や能力アップに活かしていくという考え方は、ゲーマーにとっても教育関係者やご家庭にとっても悪くない話なのではないでしょうか。
    《kuma》
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    • スパくんのお友達 2020-01-05 0:23:50
      声高にeスポーツと叫んで注目集めようとしても、選手が普段どんな大会でどんな成績収めたとか発信してるメディアが少ないと一般の人には結局よく分からない物になると思う
      格ゲーチェッカーとかYahooゲームeスポーツとか情報サイト自体はあるけど、情報の1カテゴリーにならないと厳しい。しょうがない事だが何か問題が起こる時だけ色んなメディアが報じるし。
      0 Good
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    • スパくんのお友達 2020-01-04 21:58:16
      スポンサーから金巻き上げるバズワード並べ立てる前に運営法人隠して未払いとか違法なことやる企業を排除、法令遵守意識のある企業のみしか生き残れないようにして
      初対面の人にタメ口きかないとか最低限の常識とスポーツマンシップを持った選手とまともに指導できる環境と人さえ整えればそれなりに盛り上がりそう
      2 Good
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      • スパくんのお友達 2020-01-04 20:18:14
        北海道はまだ土曜のスポーツ番組で取り上げてくれる分、周知という面で恵まれた環境かもしれない
        1 Good
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      • スパくんのお友達 2020-01-04 19:33:28
        娯楽の1つで勝ち負け気にしてまでやる必要性を感じない
        1 Good
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        • スパくんのお友達 2020-01-04 18:17:37
          ゲームで対戦する様子を興行とするのがeスポーツなんだし、分けて考える必要は無い。
          名称に違和感を覚える日本人が多いならそれこそ日本ではゲーム競技とでも呼べば良いと思う。
          シーンの中の一部の人や団体の不祥事だけで業界全体の存在意義と言い出したらそれこそスポーツ界や別の業界も大概だろと思うし。
          競技としての見応えさえあれば自然と広まるし、無ければマイナーのまま、それだけでしょう。
          競技性云々は興行として成功するかしないかの1要素にしか過ぎない
          3 Good
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          • スパくんのお友達 2020-01-04 17:52:16
            スポーツって言葉にすり寄ってる感じがして嫌悪感を感じるんですよね。
            唐突にオリンピック競技の一部にしようとか言いだしたりさ。
            競技ゲームは競技ゲームで発展していけばいいじゃないって思うんだけどな。

            それはおいといて、日本でのe-Sportsの広め方は明らかに失敗したと思いますね。
            ガシャで荒稼ぎしてるようなソシャゲをメインに扱ってる企業が率先してテレビ放送や大会を開いて運7割、プレイング3割のようなデジタルカードゲームを「これがe-Sports!!」って宣伝して回ってますからね。
            これではいつまでたっても筆者さんの考えてるようなe-Sportsのイメージは正しく認識されないのでは?と思います。

            プレイヤーは結局ゲームの開発と運営の掌の上で踊らされてるだけなんだよねぇ・・・
            9 Good
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            • スパくんのお友達 2020-01-04 17:27:13
              日本では無理だけど無理でいいと思うよ
              9 Good
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            • スパくんのお友達 2020-01-04 17:14:34
              日本は教育がどうとかって段階ではないよね。
              それにみんなeスポーツがやりたいんじゃくてゲームがしたいんだよ。
              入口を履き違えないでほしい。
              15 Good
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            • スパくんのお友達 2020-01-04 16:53:52
              日本で流行んないから
              教育に良い!とかいうお題目で無理やり広めようと考え始めたのかね
              高校生がウィイレして何の教育になるんだかw
              14 Good
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