ダム作りの名人ビーバーは山火事を止める”消防士”だった!米研究(動画)
乾燥した気候や干ばつ、森林伐採などが原因で、世界中で深刻な森林火災が広がるなか、毎年のように山火事が起こる米カリフォルニアでは、大学の研究者が、ビーバーの不思議な働きに注目している。
ビーバーは日本には生息していないため、あまり馴染みがない存在だが、40代以上の世代ならば1970年代にテレビアニメ化された「ドン・チャック物語」や「山ねずみロッキーチャック」で、森の木をかじり倒して、ダムを作り、川をせき止める活躍をご存知だろう。
「ダム作りの達人」は、かつては木の食害や自然破壊につながるなどと誤解されていた時期もあったが、近年ではせき止めた川にできた池に水鳥が生息するようになったり、水位の維持によって、夏場でも水温が上昇せず、魚の大量死が減ったなど、さまざまな効果が知られるようになった。
カリフォルニア州立大学チャネル諸島校のエミリー・フェアファックス助教授は、米地質調査所(USGS)の過去の記録のなかから、ビーバーの生息地で発生した5件の森林火災を分析。
さらに地球観測衛星ランドサットの赤外線観測画像を元に、火災の発生前後で森の緑がどう変わったかを比較した結果、ビーバーのいない川では火事の後で植生が51%減少したのに対し、ビーバーがダムを作っている川では草木の減少率が19%にとどまっていたことをつきとめた。
フェアファックスさんによると、ビーバーがいない川では、草木が川岸近くまで焼け尽くしていたが、ダムのある川ではせき止められた水の流れが放射状に広がることで火の手を食い止め、植生だけでなく、川に生息する魚や両生類も守っていた可能性が高いという。
水の循環を研究している水文学者ジョセフ・ワーゲンブレナー(Joseph Wagenbrenner)さんは、「大規模な森林火災が起こると、燃えカスの有害物質や灰が大量に堆積して川を詰まらせ、水質汚染を引き起こし、生態系を脅かす」と指摘したうえで、ビーバーが火災の影響を最小限にとどめる“消防士”の役割を果たしていることに高い関心を寄せている。