【警戒】『中国で原因不明の肺炎患者相次ぐ 武漢、政府が調査』
病院は患者の隔離措置を取った。中国のネット上では、03年に大流行したSARSが発生したとの情報が出回ったが、当局は「現時点で原因は不明」と否定http://bit.ly/2SFMogs
▲昨年の大晦日に報道があった武漢の「原因不明の肺炎」。ずっと連投で進捗をお伝えしていますが、情報量がかなり多くなってきましたので、ブログの方で情報をまとめ直しつつ、細部を検証することにしました。
※この記事は随時更新です。
【目次】
(1)武漢の華南海鮮城から感染が始まった
武漢市衛生健康委員会の第一報
▲こちらは武漢市衛生健康委員会の公式ウェブサイトが発表した「原因不明の肺炎」に関する第一報。こちらによれば、
- 原因不明の肺炎の感染には、武漢市内にある「華南海鮮城」が関係ありそう?らしい。
- 現在発症しているのは27名。その内、7名が重篤で、2名は近い内に退院の見通し。
- 華南海鮮城に対し、衛生学調査と、環境衛生処置を現在行っている。
…とのことでした。
武漢には世界第二位のウィルス研究所がある
ここで覚えておいてほしいのは、上掲の「第一報」の第二段落。
- 武漢市組織同済医院
- 省疾控中心(湖北省疾病予防コントロールセンター)
- 中科院病毒所(中国科学院ウィルス研究所)
- 武漢市伝染病医院
- 武漢市疾病予防コントロールセンター
…の専門家が診断、調査、分析にあたっており、これは武漢市の感染病関連の医療機関が総掛かりで出てきた状況です。ここで注目しておきたいのは、武漢の中国科学院ウィルス研究所は世界第二位らしいのです(何を基準にしての世界第二かは知りません。中国のネットにそう書いてました)
▲こちらご参考まで。
それだけの医療機関が束になってかかっても、まだ今回の病原体が特定できていない…それはなぜなのか。全くの新型なのか、情報公開できない事情があるのか…というのが、今回の気になるポイントです。
最初の感染者は1週間前、華南海鮮城の東ブロックから
▲武漢の「原因不明の肺炎」の詳細を伝えるニュースとして、こちらの澎湃新聞の記事は、非常に秀逸でした。武漢市衛生健康委員会の発表が12月31日の13時38分でしたが、澎湃新聞の記者は31日の昼には既に華南海鮮城に取材していたのです。この記事からいくつか抜粋すると…
- 公開資料によれば、華南海鮮城は武漢市江漢区にある卸売市場である、東ブロック、西ブロックの2つの区画からなる。合計650ほどの店舗があり、約1500人が働いている。
- 市場は新華路の両側に分布している。東ブロックには羊や牛などの生肉製品を扱う業者が入っている。
- ある店主の情報によれば、東ブロックで1週間ほど前に発熱やせきなどの症状がある患者が出て、病院へ送られ、隔離された。具体的な病院はわからない。西ブロックの幾つかの店舗で肺炎の症状を訴える人がいた。大部分は貝や乾物を売る店の者だった。具体的な病因はわからないが、病院へ送られた。
▲こちらを見るに、「原因不明の肺炎」は肉類を扱う東ブロックで12月24日頃に最初の感染者が出て、次に西ブロックの乾物業者に感染者が出た…という状況のようです。
後日、続報にてわかったのですが、この東ブロックでは羊や牛以外に、犬やウサギ、野生動物なども扱っていたそうです。
そして上掲の記事でも、この華南海鮮城が非常に不衛生だったことが強調されており、野生動物の扱いなどもズサンだったのでは…と考えられます。
【参考】中国の野生動物市場
▲こちらは香港の掲示板で掲載された、中国の野生動物市場の写真。武漢の華南海鮮城ではないのですが、似たような状況だったと考えれます。私も以前ちょっとのぞいたことありますけど、まぁ大体こんな感じでした。
▲こちらに武漢の華南海鮮城で犬猫の他に野味(野生動物)が売られていた…との報道があります。蛇、スッポン、野鳥、マーモット、ハナジカ、猿などが販売されていたようです。
(2)SARS説は「デマ」なのか?
「デマ」を流した人は処罰されたが…
武漢で「原因不明の肺炎」の感染者が出た…という第一報とほぼ同時に「SARSではないか」という噂があり、中国では「デマ」として、情報を流した人を処罰したとか、そういう情報も伝わっています。
ただ、どんなデマだったのか、処罰されたのがどういう人だったのかは公開されていない。そこで、「デマ」を探し出してみることにしました。
医療関係者のグループチャットのスクショが流出?
ネットで情報を漁ってみたところ、3つの画像が見つかりました。以下、解説しますと…
武漢大学のグループチャット…李文亮氏は実在する
▲たぶんこれはWechat(中国のSNS)のグループチャットの画面のスクショと思われます。「武漢大学臨床04級」というグループで、「146」は参加人数。かなり大規模です。もしかしたら、これは大学病院に勤務する人々同士で情報共有のため使用されているグループチャットかも知れません。
最初のメッセージは切れてますが、次のメッセージは「華南水果海鮮市場確診了7例SARS」(華南海鮮市場(からの来院者の内)7名のSARS感染が確定された)となります。これは、冒頭に紹介した武漢市衛生健康委員会の発表内容と同じであり、日本の報道でも「7人が重体」という情報があったため、それと合致します。
ただ、1つ気になるのは、このメッセージを発信しているのは、「李文亮」という眼科勤務の人物。検索してみると…
▲「臨床眼科雑誌」に掲載された論文の中に彼の名前がありました。
▲「李文亮」氏は、実在の人物のようです。
▲同じく、李文亮氏が投稿していた検査結果。
- 「MAPMI」とはマイクロRNAの解析のことらしい。ようするにウィルスのゲノムを解析した…ということか。
- 1の検出の項目に陽性指標として「SARS冠状病毒」(SARSコロナウイルス)との文字が見えます。
- 下の注釈に検出されたSARSウィルスについての説明があり、文字が判別できないため、正確なことは言えませんが、「单股正链RNA病毒」という言葉が見えます。私はウィルスについての正確な知識がないので、正しい判断はできませんが、
▲ウィキペディアでSARSの項目を見ると、
▲との説明があり、「单股正链RNA病毒」は「1本鎖RNAウィルス」のことと考えられます。 -
李文亮氏はその後に何らかの動画を投稿してますが、これは肺のCTスキャンと考えられます。
▲ちなみに、グーグルで「肺 CT」を画像検索すると、このように李文亮氏の投稿と似た画像が出てきます。
たぶん、李文亮氏は自分の担当ではないけど、病院内のシステムにアクセスして、華南海鮮市場の「患者」の情報を引き出し、Wechatのグループチャットに掲載したのではないか…と思われます。
ただ、疑問点として
- 李文亮氏の専門は眼科でも、伝染病関連の患者の情報にアクセスできるのか?
- 李文亮氏は眼科の専門だが、伝染病についての正しい判断ができるのか?
- MAPMI検査のレポートは日付も氏名も病院名も書いておらず、これが今回の武漢の患者のものであると裏が取れない。そしてこのレポートは印刷したものを撮影したものであり、その後のCT画像は病院の端末(と思われる)の画面を撮影したもの。レポートだけ画面で表示して撮影するのではなく、一旦印刷したのはなぜなのか?
…ということがあります。だから、これだけを見て、「SARS説はデマじゃない!」と断言できないものの、李文亮氏が実在の人物で、武漢大学人民医院に勤務しているのは確からしいので(少なくとも2011年には在籍していた)、「SARS説」が根も葉もないところから、突然湧いて出た誰かの妄想ではなく、「根」ぐらいはちょっとあるのがわかったわけです。
協和紅会とは?そして、「デマ」として否定されたのは?
もう1つ見つかったWechatのグループチャットの内容を確認してみます。
▲「協和紅会」とは、「武漢協和紅十字会医院」のことと考えられます。「神内」とは「神経内科」のことではないでしょうか?このグループチャットの参加人数は25名です。
▲検索してみたらありました。武漢協和紅十字会医院に神経内科は存在します。
スクショのトップに投稿されている文書は字が細かすぎて内容が確認できません。ただ、この投稿の後、
鄭涛看護師長(郑涛护士长)が「谢谢」(ありがとう)と礼を述べてから、劉文(刘文)氏が「二院后湖院区确诊一例冠状病毒感染性肺炎,也许华南周边会隔离。洗手!口罩!手套!」と書き込んでいます。
「二院后湖院区」について調べてみましたが、これは「武漢市第二医院後湖院区」の略でした。そこで、1名のコロナウィルス感染性肺炎が患者が1名確認されており、「華南」(華南海鮮城)周辺は隔離されるかも知れない…手を洗え!マスクをしろ!手袋をしろ!SARSであることは既に確定した!外に出るんじゃないぞ!…と呼びかけているわけです。
この件は既に中国のメディアで「確認」されており、
▲この件はデマ(谣言)であるとされています。ただ、この記事を読んでも、何がどうデマなのか解説されていません。ただ一言、「目前并无疑似或确诊的患者」(現在、疑わしいor確定された患者はいない)と否定されているだけです。
ここで気をつける必要があるのは、「今回の肺炎の原因はSARSではない」…と否定しているのでなく、「現在未確定である…だからネットで広まっている『確定した』というのはデマだ」と言っていることです。
つまり、ネットで広まっている「武漢の肺炎はSARS」という説は、私が発見したスクショを調べる限り、実在の病院の実在の医師が実名にて、「証拠」を挙げながらグループチャットで発言したものであり、その「証拠」そのものが間違っているからデマだ…と言っているのではなく、「まだ医療機関の発表としては未確定なのだから、確定したというのはデマだ」と言っているだけなのです。
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この件、まだまだ続きがあるのですが、一旦ここで休憩。続きはまた間を置いて加筆します(^^)