筆者は9月下旬、一橋大学に取材を申し込んだ。ハラスメント対策委員会の対応が梁さんと准教授とでは違っていることをはじめ、副学長が対策委員会のトップを務めていることの是非を書面で質問した。また、梁さんは一連の被害を受け、2017年10月と2019年6月に大学の「教育開発センター」などにハラスメントの撲滅について要望書を提出しているが、大学はそれも無視している。その理由についても同様に問うた。
しかし、大学の総務部広報室から返ってきたのは「個別事案に係る大学の対応については、お答えすることができません」という回答だった。2015年以降、ハラスメント対策委員会に申し立てられた相談件数や処理した事案の件数についても聞いたが「公表しておりません」と答えるのみ。件数さえも答えられない相談窓口を信じることができるだろうか。
その一方で、9月下旬に一橋大学から梁さんに連絡が入った。今年5月と6月に准教授が教室で発言した内容について、ハラスメント対策委員会が緊急に対応するというのだ。しかし、梁さんはハラスメント対策委員会には相談も申し立てもしていない(申し立て先は、学長や全学共通教育センターなど)。
梁さんが国立市に人権救済の申し立てをして、そのことが報じられたために大学が動いた可能性はある。だが、教室でのヘイトスピーチについて伝え、要望書を提出してから3ヶ月以上何の回答もなかったことを考えると、梁さんは大学への不信感を拭えない。
申し立て人がいないのに、なぜ突然ハラスメント対策委員会が対応することになったのかについても一橋大学に質問したが、回答は得られなかった。今後、准教授に対してどのような態度を示すのか。また「事実は確認されなかった」と結論づけるのだろうか。ヘイトスピーチに対する一橋大学の動向を注視したい。