一橋大学の「ハラスメント見過ごし」体質に、噴出する怒りの声

これが「改革」の成果なのか
田中 圭太郎 プロフィール

一橋大学のハラスメントに対する姿勢には、ほかにもおかしな点がある。同大の場合、ハラスメント対策委員会のトップは大学の副学長が務めている。本来は第三者的な立場から対応にあたるべきではないだろうか。「准教授を守るための結論だったのではないか」と思われても仕方がない。

守られた形になった准教授は、ハラスメント対策委員会に「暴行を受けた」と申し立てて以降、自身の授業で梁さんやARICに対する誹謗中傷発言を行うようになった。さらに准教授は、「ARICはナチだ」「ARICは一橋大学を(注:言論の自由のない)北朝鮮にしようとしている」などとする発言をツイッター上で行っている。それを、一部の学生と見られるユーザーが拡散。これらの発言はいまもネット上に残っている。

その延長線上にあるのが、今年5月と6月に行われた、冒頭の差別的な発言だ。准教授の発言は学生に録音されている。録音や、ネット上に残る差別発言などの証拠があっても、大学が何ら対応しないため、梁さんには国立市に人権救済を申し立てるしか道がなかったのだ。

 

「大学のハラスメント対策は機能していない」

一橋大学のウェブサイトを見ると、ハラスメント相談室について次のように説明している。

〈相談員と話している間に、少しずつ問題点がみえてきます。(中略)「やめて」と言うのは、失礼ではないことを確認して、ご自分が納得したら、相手に伝えてみることもできます〉

まどろっこしい表現だが、まず「自分で解決しなさい」と言っているように受け取れるのではないだろうか。梁さんのケースは、自分で解決するレベルを超えているだろう。解決できない場合として、同サイトには次のように書かれている。

〈どうしても相手がやめないとなったら、対策委員会に申立てをして、行為の中止を大学から伝えることも必要でしょう。行為が繰り返されたり悪質な場合は大学による処分も必要です〉

しかし、梁さんの申し立てに対して、対策委員会が出した結論は前述の通りだ。

一橋大学の学内では現在、「大学にハラスメントの被害を相談しても、学生は守ってもらえない」という雰囲気があるという。その背景にあるのは、梁さんの件だけではなかった。