梁さんは2017年2月に大学のハラスメント対策委員会に、准教授から誹謗中傷と差別的な発言を受けたと申し立てた。しかし、この際の一橋大の対策は不誠実なものだったと、梁さんは振り返る。梁さん側は証人を立てて証言を聞いてもらえる制度があることを知らされなかったのだ。
梁さんは自身の判断で6名分の証言を文書で提出したが、4ヶ月後の同年6月には、対策委員会が「これ以上調査できない」という理由で、差別発言は「事実確認ができなかった」と結論づけた。大学の最終的な判断から考えると、梁さん側の証言は採用されなかった可能性が高い。
一方で、准教授から梁さんに対して「Fuck」という発言(調査結果では「fで始まる下品な表現」)があったことを、ハラスメント対策委員会は認めている。にもかかわらず准教授への公式な処分も注意すらもないのは、大学としてはそうした発言に何ら問題がないと判断したに等しい。
この決定が、准教授から梁さんに対する攻撃を強めることにつながった可能性が高い。准教授は同年8月に、自分が梁さんらから12月20日に抗議を受けた際に「学生の一人に暴行された」として、ハラスメント対策委員会に申し立てたのだ。
首を傾げざるを得ないのは、梁さんが申し立てた時と、准教授が申し立てた時とでは、ハラスメント対策委員会の対応が異なることだ。
准教授の申し立てに対して、ハラスメント委員会は梁さんの時よりも長い、1年近くをかけて調査を行った。さらに、梁さんの時には知らされなかった証人による証言を認め、准教授の元学生による「暴力があった」などとするメールなどを証拠として扱ったと見られる。
ハラスメント対策委員会が設置した調査委員会は2018年6月、ハラスメントは認められないものの「一人の学生が准教授の肩を押した」という事実を認定した。
梁さんはこの結論に対して「証言はでっちあげで、そのような事実はないし、抗議に行った時の状況から考えてもありえない」と話している。
准教授から学生に対して行われたという差別発言を「ない」と判断し、抗議した学生から准教授に「何らかの暴力があった」と認定するのは、確かに奇妙だ。そもそも准教授の最初の行動があったから、梁さんたちは抗議をしたのだ。