先刻から行われていた「アインズ様ご成婚緊急会議」も大方の方針が定まり、デミウルゴス、コキュートス、セバスの3名は早速行動を開始しようとしていた。
「では、我々は準備に取りかからせていただきます。まずは該当者と守護者各員への告知から始めますので、それが済み次第ご報告に伺います」
「ウム、すまないがよろしく頼むぞ」と言ってデミウルゴス達を送りだそうとした所で、アインズは一つの事を思い出す。
「そうだ、少し待ってくれ。一つ伝え忘れていた」
「ハッ!何でございましょうか?」
「その…私が妻を娶るという発表の時にな、それとは別に皆に伝えたい事があるのだが…」
「左様でございますか…内容をお聞きしても?」
「いや、すまないが今言うべき事ではないのだ…ただ、そういった事があるというのを心しておいてくれるだけでよい。ああ、それと分かっているとは思うが…」
「ハッ!心得ております。ご計画されている事は正式な御沙汰があるまで外に漏れる事のないよう細心の注意を払いますのでご安心ください…では、失礼致します」
「ああ、それで良い。では頼んだぞ」
そう言ってデミウルゴス達が退出するのを見送った後、あるはずのない疲労を感じたアインズは「ウ~~ン」と大きく伸びをする。
(なんかこう、一つ大きな仕事を終えた!という感じだな)
(しかし、一を聞いて十を知る部下がいると本当にありがたいな…深読みしすぎる所もあるけど今回はそんな心配はないだろうし…あとは大船に乗ったつもりで準備が整うのを待つとするか!)
そう思うと気が楽になったアインズは、しばらく手付かずだった書類の山に目を通し始める。魔導王としてやらなければいけない事はまだまだある。
場所は変わり第九階層のとある一室。アインズの自室を辞したデミウルゴス、コキュートス、セバスは、今後の詳細をつめるべく打ち合わせを行っていた。
まずはデミウルゴスが口を開く。
「さて、それでは今後どう動くかについて話し合っていこうか。まずはアインズ様のご計画の為に我々がなすべき事とその役割分担だが…」
と、話し始めた所で唐突にセバスが口を挟む。
「その前に少し良いですか、デミウルゴス」
「もちろんだとも、セバス。何か気になる事でも?」
「はい、実は先程あなたとアインズ様が話していた内容の中でいくつか理解出来ない部分がありました。そこの所の説明をお願いしたいのです」
「ウム、実ハワタシモ疑問ニオモウトコロガアッタ。先二オタガイノ認識ヲ共通サセタホウガヨイダロウ。タノム、デミウルゴス」
セバスとコキュートスの発言を受けてデミウルゴスが「そうだね」と頷く。
「今回の件に失敗は許されないからね。では、疑問に思っているのはどの部分か具体的に聞かせてもらえるかな?」
デミウルゴスが2人に話しを向けると、コキュートスとセバスはそれぞれ疑問に思っていた箇所を上げていく。そんな2人の疑問を一通り聞き終えた所でデミウルゴスが再び口を開く。
「なるほど…どうやら2人にはアインズ様のご計画を最初から説明した方が良さそうだね。そもそも今回の御婚儀における真の狙いというのは…」
「…ナント!」
「…アインズ様はそこまでお考えだったのですか!」
デミウルゴスからアインズの真意を聞かされた2人はそれぞれ驚嘆の声を上げる。
「アインズ様のご計画の全貌を知ると、今回我々に声がかかった理由も分かるだろう?全く恐ろしいお方だよ、アインズ様は…私自身、その隠された真意に気付いた時は震えたものさ」
「…私は御方の深遠なるお考えに寄り添えるあなたが羨ましいですよ、デミウルゴス」
「マッタク同感ダ」
「セバス、コキュートス、それはお互い様というものだよ。私だってあなた達に嫉妬する時があるさ。これは謙遜などというつまらないものではないよ」
実際、デミウルゴスにはセバスのように弱き存在を受け入れ損得抜きでその存在を守る事も、コキュートスのように己の信念と生きざまで様々な種族から尊敬を集める事も自分には出来ないと分かっていた。そして、それらが魔導国の今後に必要な事も。
「アインズ様が仰ったように、我々は違う強さを持っている。もっとも、その強さはそれを自在に扱えるアインズ様という存在があってこそ生きるのだがね」
「…」
デミウルゴスの言葉にコキュートスとセバスは静かに頷く。
「それに私ごときの知恵なぞアインズ様にとっては児戯に等しいものさ。先程、最後に仰った事を覚えているだろう?」
「…ウム」
「…あれですか」
コキュートスとセバスの脳裏に、先程アインズが言った「発表の際に私から伝える事がある。内容はまだ言えないのだが、それを心しておけ」という言葉が甦る。しばらくの沈黙の後、デミウルゴスが自分の考えを述べる。
「アインズ様が何を仰るのか…私には見当もつかないが、心しておけと仰られた。そして、その時まで内容を秘する必要があるという事は相当に重要な案件なのでしょう。ご発言の内容によっては我々もなんらかの行動を起こす必要があるかもしれないね」
「ナルホド…」
「そういう意味だったのですか」
「あくまでも推測だが、準備だけはしておく必要があるだろうね。まあアインズ様のなさる事だ。我々の想像以上の素晴らしい結果に繋がる事も約束されている。あまり考え過ぎずに、我々もそれぞれの使命を果たそうじゃないか」
「ウム」
「わかりました」
「では、行くとしようか。…そうそう、アウラとマーレの所へは私が行ってくるよ」
このデミウルゴスの言葉で打ち合わせは終了となり、それぞれがアインズの計画成就のために動き出すのだった。
今回はここまでとなります。読んでくださった皆様ありがとうございました!思ったよりも話が進まずすみません…いや~デミウルゴスさん、考え過ぎちゃってますね笑
次回はご成婚発表の儀!の予定です。