組織に不足するコンピテンシーを分析

求人する企業は何を入力するのでしょう。

福原:学生を採用する部署の従業員に対する他者評価です。内容は学生が入力するものと同様です。加えて、自己評価も入力してもらいます。両者を基に、この部署に欠けている人材はどういう人材か、コンサルティングを行います。

 例えば、ある会社の社員Cさんは、コンピテンシーのすべての項目について自己評価より他者評価の方が優れていました。とても慎み深い人なんですね。またCさんは、「創造する力」と「課題を設定する能力」のポイントが非常に高かった。こういう人物は組織がイノベーションを起こす際にその一翼を担うことが分かっています。イノベーションは様々な複合要因から生まれることが研究から分かっており、GROWはこうした研究成果を利用しています。

 イノベーションを起こしたい別の会社のある部署のメンバーを分析すると、このCさんのような人材が欠けていることが分かった。この場合、学生の中からCさんと似た特性を持つ学生を選び、マッチングします。

 企業の側に「○○のような人材が欲しい」という明確なニーズがある場合もあるでしょう。これに応じて、適切な学生をマッチングすることも可能です。

 従来、こうした作業は人事部の若手社員などが行なっていました。彼らは専門家ではないので、なんとなく雰囲気で人選をしてしまいがちです。訓練を受けていない人材は面談において、最初10秒間のイメージだけで相手を評価するとする論文もあります。人事部ではなく、現場部門の若手が携わるケースも少なくありません。金融機関の若手社員はこの作業のために4月中は休みが取れない人が多いと聞いています。今年は5月には内定が決まると言われているので。

自分に似た人は高く評価してしまう

福原:この作業をコンピューターにやらせることで、客観的な人選ができるようになります。若手社員も本業に専念できる。

 人間の作業には、様々なバイアスがかかるものです。例えば、男性は女性を高く評価する傾向があります。また、自分と似た人物を高く評価しがちです。結果として、人事部長が思う「欲しい人材」と若手社員が選んだ人材が食い違ってしまう事態が頻発します。コンピューターはこうした「人が行なうゆえのバイアス」を避けることができます。

 ただし、コンピューターがマッチングをしても部長が思うとおりの学生を選ぶとは限りません。GROWはこの点を機械学習の技術を使って是正していきます。部長の思いと異なるマッチング結果を「入力」として取り込み、マッチングの確度が高まるようアルゴリズムを“育てて”いくのです。

ベトナムでもサービスを提供

現在の利用実績と将来の展望を聞かせてください。

福原:2月にスタートしてから現在までに登録した学生は1000人ほど。この数字は日々伸び続けています。企業は10社程度です。企業名をお教えすることはできませんが、大手製造業や新聞社、eコマースの会社などがあります。2018年末までに学生の数を10万人、企業数を500社に増やす計画です。2019年には売上高10億円のビジネスに育てたい。

 このためGROWは海外でも展開します。今年、ベトナムに拠点を設けました。学生10万人のうち4分の1ほどはアジアの国々の学生になるでしょう。企業の数は、アジア企業の割合が全体4分の1より大きくなると予想しています。定期採用の制度がないので、彼らの方が日本企業より採用にシビアだからです。