「ハーバード大と東大の両方に合格する学生」を育てる塾などを運営するigsが2月、就職活動に取り組む学生と企業とをAI(人工知能)を使ってマッチングするサービス「GROW」を開始した。学生の適性と企業の希望をそれぞれ分析してマッチング。その結果が適切であったかどうかを、機械学習技術を適用することで精度の向上を図る。GROWの特徴とビジネスとしての展望を福原正大社長に聞いた。(聞き手 森 永輔)
GROWは、就活生と採用企業をAIを使ってマッチングするサービスとして日本で初めてのものですか。
福原:AI技術を中心にシステム全体を構築した本格的なものとしては初めてだと思います。単に機械学習を取り入れただけのマッチングサービスはほかにもあるかもしれません。それらを含めて考えても、先行するサービスとして5本の指に入ると思います。
学生はウソをつくことができる
GROWのインプットとアウトプットは何でしょう。
福原:学生と企業のそれぞれがインプットを行います。
学生はスマホにアプリをダウンロードして他者に対する評価を入力します。
え、他者に対する評価ですか。
慶應義塾大学経済学部卒業。INSEADにて経営学修士。グランゼコールHECにて国際金融修士(with Honors)。筑波大学大学院企業科学博士課程修了(経営学博士)。1992年に東京銀行に入行。2000年に世界最大の資産運用会社バークレイズ・グローバル・インベスターズ株式会社に入社、最年少Managing Director、取締役を歴任。2010年にグローバルリーダーを育成するInstitution for a Global Societyを設立。(写真:加藤 康、以下同)
福原:はい。GROWの特徴の1つは「就活生はウソをつくインセンティブがある」と仮定していることです。就活塾などの影響もあり、学生が本当のことを入力するとは限りませんから。その代わり、関係のある他の学生など周りが評価するのです。
就職を希望する学生Aは、まずGROWのアプリをスマートフォンにダウンロード。自分のことを評価してくれる友人やインターンシップ先のメンターなどをGROWに招待します。GROWのアプリはFacebookを調べ、学生Aとつながりのある人を探します。その中にGROWアプリをダウンロードしている人Bがいれば、BにAを評価してもらいます。
指の動きで回答の確度を評価
学生の何をどう評価するのですか。
福原:「コンピテンシー(ソフトスキル)」を評価します。ビジネスパーソンとして成功している人の特性を分析し、25項目のコンピテンシーを独自に定義しました。東京大学との連携や関係する分野の世界中の論文調査、ヘッドハンターとのミーティングを繰り返してまとめたものです。「創造する力」「ビジョンを立てる能力」「課題を設定する能力」「感情をコントロールする能力」などがあります。
25項目のコンピテンシーについて合計100問ほどの設問を用意しました。それぞれの設問について4つの選択肢の中から回答を選ぶ仕組みです。
入力に関して、もう1つの特徴があります。回答する時のスマホ上での指の動きを計測するのです。回答の確度を評価するためです。他者を真剣に評価しようとすれば、人は悩み、躊躇する。それは指の動きに表われます。例えば何度も選択肢を選び直したり。こうした回答は確度が高いと見なします。一方、瞬時に選ばれた回答は確度が低いと見なす。この仕組みについて特許を申請しています。
私の評価結果をお見せしましょう。ビジョンを立てる能力は80点を超えており、高く評価されています。一方、評価が低いのは「組織に対するコミットメント」です。社長失格ですね(笑)。
学生はこのほか、性格テストの結果や、他者評価に対する自らの分析結果(ストーリー)を入力します。ストーリーは記述式です。
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