今回は松井酒造のブレンデッドウイスキー、山陰を飲んでみます。

やっと自前の蒸溜所を建設

sanin_松井酒造は2016年頃から「倉吉」ブランドでウイスキーを販売していました。
しかしその当時は蒸溜所を持っていないにもかかわらず、このウイスキーをジャパニーズと称して販売していました。

他のメーカーでもスコットランドのバルクウイスキーを輸入して、自社で樽に貯蔵、熟成する所はそれなりにあったものの、彼らはジャパニーズと販売をしていませんでした。

まさに看板に偽りありの商売を続けていましたが、謝罪の言葉もなく、しばらくはサイトの一部を閉鎖、隠蔽工作を図ったことで、ウイスキーファンからは悪名高いメーカーとレッテルを貼られました。

それでも2018年には蒸溜所を建設してポットスチル(中国製)を導入、ウイスキー造りを開始したそうです。


逆に言えば、それ以上の年数表記がされているウイスキーは、自前で造った原酒ではないと証明したとも言えます。

今回の「山陰」は、ラベルにジャパニーズウイスキーと書いていますが、仮に倉吉の原酒を使っても1年経っているかもわからない代物、他のメーカーならニューメイク、ニューボンとしてウイスキーとして売らないレベルでしょう。
もしこれにバルクウイスキーをブレンドしているなら、尚更ジャパニーズと名乗ってはいけません。

つくづくこのメーカーは信用や誠意に欠けると思います。

悪くないけどホントにジャパニーズ?

では、ストレートから飲んでみます。
グラスに注ぐと、液色は少々緑がかった琥珀色、香りはアルコール臭の後にカラメルが感じられます。

口に含むと、ナシ、栗、カラメルが先立ちます。後から林檎を砂糖漬けにしたような甘い香りが追いかけてきます。
味わいは、アルコールからの辛みは少なく、軽い酸味の後は甘みがずっと続きます。

ロックにすると、ナシの香りが強調され、その後にレモンもほんのり感じられます。
味わいは、渋みが先んじますが、その後は甘みが引き続き維持されます。

ハイボールにすると、ナシの香りが引き続くものの、後からきゅうりやメロンのような香りが追いかけます。
味わいは、ほんのりした苦味が感じられるものの、後から甘みが広がっていきます。

全体的に見ても「悪くはない」と思います。1500円台としてみても、大手メーカーのボトルと比べて遜色ない域にあると言えます。

しかし、たった1年しか熟成されてない原酒を使っているとは思えないほど熟成が進んだ感は否めなく、台湾のカバランほどの温暖な気候でない倉吉で、1年で数年分の熟成を得られる可能性は低く、どう考えてもスコッチのバルクウイスキーが主体だと言うのが普通でしょう。
そういう意味で、ジャパニーズウイスキーを名乗るのは失格です。

少なくとも松井酒造が倉吉のモルトで作ったウイスキーだと堂々と名乗れるのは2022年からです。
松井酒造には、他のクラフトディスティラリーに敬意を表し、消費者に誠意を持った製品作りをすることを心より祈ります。

なお、700mL、アルコール度数は40度です。

<個人的評価>

  • 香り C: ナシが先立ち、栗、カラメルと続く。加水でレモンの爽やかさが加わる。
  • 味わい C: アルコールの辛みが少なくてまろやか。甘みが主体。
  • 総評 E: スコッチのブレンデッドと割り切れば悪くない。ジャパニーズではない。