米軍、イラン精鋭組織の司令官殺害 イランは「暴挙」

トランプ政権
北米
2020/1/3 12:46 (2020/1/3 14:06更新)

トランプ米政権はイランのソレイマニ司令官を敵視してきた=ロイター

トランプ米政権はイランのソレイマニ司令官を敵視してきた=ロイター

【ワシントン=中村亮】米国防総省は2日、敵対するイラン革命防衛隊の精鋭組織「コッズ部隊」のカセム・ソレイマニ司令官を空爆で殺害したと発表した。トランプ大統領の指示を受けた措置で「海外の米国人を守るためだ」と説明した。イランは猛反発しており、最高指導者ハメネイ師は3日、ツイッターで米国への報復攻撃を示唆した。中東での米イランの緊張が一気に高まり、世界の原油の安定供給にとってもリスクになる公算が大きい。

国営イラン放送やロイター通信によると、ソレイマニ氏はイラクの首都バグダッドの国際空港で現地時間の3日未明、米軍のヘリコプター攻撃により殺害された。イラクのイスラム教シーア派組織の指導者「カタイブ・ヒズボラ」の指導者アブ・マフディ・アルムハンディス氏も死亡した。

殺害されたソレイマニ司令官=AP

殺害されたソレイマニ司令官=AP

米国防総省は声明で、ソレイマニ氏が中東地域で米外交官や米兵を標的に攻撃を企ててきたと主張し「防衛的行動」をとったと説明した。エスパー国防長官は2日、イランと親イランの勢力が米国への攻撃を計画している兆候があると発表。イランへの先制攻撃を辞さない姿勢を示していた。

国防総省は先月末に起こったイラクの米大使館襲撃も同氏が承認していたと指摘。米国務省によるとイラクでは2019年秋以降に駐留米軍などを標的にした攻撃が10回以上あったが、これらにもソレイマニ氏が関与していたという。

ソレイマニ氏が率いてきたコッズ部隊はイランの最高指導者であるハメネイ師の直属組織、革命防衛隊の中核を占め、イランの対外工作を担ってきた。米国は同氏がイランの中東地域での影響力拡大において中心的役割を担ってきたとみなし、制裁対象にも指定してきた。カリスマ的な指導力で知られた同氏の殺害は、イラン指導部にとって大きな打撃となる。

トランプ政権はイランに圧力をかけながら、非核化に向けた対話も模索してきたが、今回の攻撃は強硬路線への傾斜を内外に強く印象づけた。トランプ氏は19年6月に米国の無人機が撃墜された際に報復措置であるイランへの空爆を直前で中止。9月に起きたサウジアラビアの石油施設への攻撃もイランが実行したと断定したが、同国に対する軍事攻撃は見送っていた。

司令官殺害を受けて、イラン指導部が米国に対する報復措置に出る可能性がある。ハメネイ師は3日、ツイッターで「手を血で汚した犯罪者を待っているのは厳しい報復だ」と宣言した。

イランや同国傘下の武装組織の攻撃で米国に死傷者がさらに出れば、中東情勢がさらに緊迫するのは避けられない。AFP通信によるとイラクのアブドルマハディ首相は今回の攻撃について「イラクでの破滅的な戦争の口火を切ることになる」と懸念を示した。

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