賃貸不動産経営管理士試験の難易度【試験問題の比較・分析から】

2020年1月1日更新

賃貸不動産経営管理士試験の合格率は約50%(平成30年度)です。一方、宅地建物取引士資格試験(宅建)の合格率は15〜17%。この違いから難易度は賃貸不動産経営管理士試験のほうが低いとされています。

しかしながら、宅建の合格率は政策的にほぼ固定されています。両者の合格率を比べて難易度を語っても意味はありません。

この記事では、合格率の単純な比較ではなく、賃貸不動産経営管理士試験と宅建の試験問題を比較・検討しました。

賃貸不動産経営管理士試験と宅建ともに受験した身からすれば賃貸不動産経営管理士試験のほうが明らかに難易度が低いと感じたのですが、今回の分析によってその印象を数値で裏付けることができました。

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賃貸不動産経営管理士試験の難易度とは?

「賃貸不動産経営管理士 難易度」の検索ワードでGoogle検索すると、令和元年の数ヶ月間、拙ブログのこのエントリー(賃貸不動産経営管理士試験の合格率は?講習修了者と非受講者の違いは? – 賃貸不動産経営管理士合格応援ブログ)が検索1位でした。

この検索結果にブログ管理人は違和感をもっていました。なぜなら、このエントリーでは難易度について一言しか触れていないからです。

その一言というのは、「これまでの賃貸不動産経営管理士試験の難易度はかなり低い」だけ。

なぜ賃貸不動産経営管理士試験の難易度が低いのでしょう?

そう判断した理由は、①賃貸不動産経営管理士試験問題の実に98.1%が公式テキストから出題されていること、②しかも公式テキストの文言そのままもしくは少し変えただけのものが非常に多いこと、でした。

一方、2019年12月31日時点における「賃貸不動産経営管理士 難易度」でのGoogle検索結果では、賃貸不動産経営管理士試験と他の不動産系資格試験の合格率を比較したものが上位になっています。しかしながら、単に合格率を比較してもあまり意味はありません。

試験範囲が異なる資格試験の合格率を比べることで難易度を語っても意味はない

ご存じのとおり、不動産系資格で最大の受験者数を誇る宅地建物取引士資格試験(宅建)の合格率は毎年15〜17%の間におさまっています。

「毎年一定範囲になっている」ということは、合格率が政策的判断で固定されていることを示唆します。

それにひきかえ、賃貸不動産経営管理士試験は平成29年度で約50%です。

たしかに合格率の上では賃貸不動産経営管理士試験のほうが低難度に見えます(両方受験した実感からも賃貸不動産経営管理士試験のほうが低難度なのは間違いありませんが、ここで話を終わらせるわけにはいかないのでもう少しおつきあい下さい)

賃貸不動産経営管理士試験はようやく合格者が5万人を超えたところです。国家資格化に向けて合格者数実績はまだまだ欲しいはずなので、合格率を宅建並に下げるのは先のことと予測できます。

このように、宅建及び賃貸不動産経営管理士試験の合格率には実施側の意向が反映されていると思われます。

したがって、賃貸不動産経営管理士試験と宅建の合格率を比較したところで、それが試験の難易度を反映しているわけではありません。難易度を語る上での意味はあまり無いのです

じゃあ、賃貸不動産経営管理士試験の難易度を測るにはどうしたらよいのでしょう?

試験問題の分量・構造を比較する

試験範囲・試験問題が似通っている二つの資格試験があったとします。

どちらも制限時間が同じ場合、一つの試験の問題数が40問、一方が50問だとすれば、問題数が多いほうが難易度は高いと考えられます。

制限時間・問題数が同じ場合問題の字数が多い方が難易度は高いと考えられます。

なぜなら、問題数・問題の字数の多い試験のほうが受験生によりコストがかかる、すなわちより高度な問題処理能力が要求されるからです。

もちろん、より高度な知識を問われる試験のほうが難易度が高いことは言うまでもありませんよね。

例えばファイナンシャル・プランニング技能検定(FP)学科試験のように2級と3級で試験範囲・試験時間・問題数が同じ場合、合格率の差は試験の難易度の差をそのまま反映しています。(注:FP2級学科試験の合格率は約20%、FP3級は約60%であり、これは出題形式の違いも大きく影響していますがここでは割愛します)

賃貸不動産経営管理士試験と宅建の問題を比較することで難易度の違いを推し量る

以上の点から、現時点で賃貸不動産経営管理士試験の難易度を推し量るには、民法の借地借家法(の借家部分)・宅建業法・法令制限等の試験範囲が重なっている賃貸不動産経営管理士試験と宅建の試験問題を比較すること以外の方法は考えにくいです。

このエントリーでは賃貸不動産経営管理士試験と宅建の試験問題について、試験問題の字数の分量および問題の構造を比べてみました。※このような分析はおそらく初めてでしょう。

◆結果を先に述べておきます。

  1. 賃貸不動産経営管理士試験の総文字数は宅建士試験の約50%
  2. 1分当たりに処理しなければならない文字数は宅建士試験の81.0%
  3. 1問当たりの文字数は宅建士試験の75.9%
  4. より解答しやすい「最も不適切なものはどれか」を選ぶ問題と組み合わせ問題の出題は賃貸不動産経営管理士試験より宅建士試験のほうが少ない。
  5. 「AはBであるがCはDである」というような出題文の前半と後半で異なる知識の正誤を問う問題は宅建士試験のほうが多い。

ほかにも、すでに述べたとおり①賃貸不動産経営管理士試験問題の実に98.1%が公式テキストから出題されていること、②しかも公式テキストの文言そのままもしくは少し変えただけのものが非常に多い。

以上から、賃貸不動産経営管理士試験の難易度は宅建士試験よりも低いと結論付けられました。

賃貸不動産経営管理士試験と宅建の問題の違い

◆分析に用いたのは、ネットで公表されている賃貸不動産経営管理士試験および宅建の過去問、どちらも平成29年度のものです。

平成29年度試験を用いたのは以下の理由によります。

  1. 平成28年度以前の賃貸不動産経営管理士試験問題では、設問を読むだけで正誤判定できる問題が含まれていたが、平成29年度問題ではそれがなくなったこと
  2. 平成28年度以前の賃貸不動産経営管理士試験問題には個数問題・組み合わせ問題が出題されていなかったが、平成29年度問題で初出題され、宅建の出題形式と共通したこと

◆用いた試験問題の出典です。

どちらも【問1】以降をすべてコピーし、MS Wordにペーストしました。

では比較結果をみていきましょう。

賃貸不動産経営管理士試験問題の文字数は宅建の8割

はじめに試験問題の分量を数値化しました。文字数の測定です。

文字数の測定はWordの文字数カウント数値をそのまま用いました(双方の試験問題どちらにも「【問○○】」「頁番号」が含まれています)

◆総文字数

総文字数は以下の通りです。

  • 平成29年度賃貸不動産経営管理士試験問題:1万2,479字
  • 平成29年度宅建問題:2万531字

問題の難易度や試験時間が同じと仮定した場合、文字数が多い試験のほうが処理能力をより要求されます。 

ただし、賃貸不動産経営管理士試験と宅建では制限時間が違います(賃貸不動産経営管理士試験は90分、宅建は120分)。

そこで、それぞれの文字数を制限時間(分)で割った1分当たりの文字数をみてみましょう。

◆1分当たり文字数

  • 平成29年度賃貸不動産経営管理士試験問題:138.65字
  • 平成29年度宅建問題:171.09字

賃貸不動産経営管理士試験の1分当たりの文字数は宅建の81.0%でした。

単純な文字処理能力だけに話を限れば、賃貸不動産経営管理士試験は宅建の約8割の労力で済む、ということになります。

賃貸不動産経営管理士試験の1問当たり文字数は宅建の7割5分

次に、1問あたりの文字数について比べます。

賃貸不動産経営管理士試験は40問、宅建は50問出題されます。

1問あたりの文字数は以下の通りです。

  •  平成29年度賃貸不動産経営管理士試験問題:311.97字
  • 平成29年度宅建問題:410.62字

賃貸不動産経営管理士試験の1問当たりの文字数は宅建の75.9%でした。

こちらも単純な文字処理能力だけに話を限れば、賃貸不動産経営管理士試験を1問解くのにかかる労力は、宅建の約7割5分で済む、ということになります。

 

ちなみに、賃貸不動産経営管理士試験は90分で40問出題なので、1問あたり2.25分で解く必要があります。

一方、宅建は120分で50問出題、1問あたり2.4分で解かねばなりません。

1問あたりに使える時間の違いは、宅建のほうが賃貸不動産経営管理士試験の1.06倍と、実は宅建のほうがわずかながら余裕がある計算になります。

しかしながら、実際に試験を受けた感触としては宅建のほうがぜんぜん時間が足りませんでした。一方、賃貸不動産経営管理士試験はけっこう時間の余裕がありました。

なぜ賃貸不動産経営管理士試験のほうが時間に余裕があるのでしょう?

その理由の一つが、賃貸不動産経営管理士試験の問題の1分当たり文字数および1問あたり文字数が、それぞれ宅建の80%および75%しかないこと、なのです。

賃貸不動産経営管理士試験問題のほうが解答しやすい問題が多い

宅建のほうが試験時間が足りないと感じる理由はもう一つあります。それは試験問題の構造です。

賃貸不動産経営管理士試験と宅建はどちらも基本的に4肢択一の出題形式です。

しかも平成29年度賃貸不動産経営管理士試験から個数問題・組み合わせ問題が導入されているので、出題形式自体はどちらにも違いはありません。

しかしながら、問題文の構成を分析するとその差が浮き彫りになりました。

先ず目に付いたのが、賃貸不動産経営管理士試験は「最も不適切なものはどれか」を問う問題の出題頻度が高いことです。

平成29年度試験における、「最も適切なものはどれか(適切肢選択)」「最も不適切なものはどれか(不適切肢選択)」「個数問題」「組合わせ問題」の出題数は次の通りでした。

平成29年度賃貸不動産経営管理士試験・宅建の出題数比較

  賃貸不動産
経営管理士試験
宅建
適切肢選択 15 27
不適切肢選択 15 16
個数問題 3 6
組合わせ問題 7 1
合計 40 50

管理人の経験上、「最も不適切なものはどれか(不適切肢選択)」を選択する問題のほうが解答しやすいと思います(そう述べている資格スクールもあります。例えばこちら

平成29年度宅建では「最も適切なものはどれか(適切肢選択)」と「最も不適切なものはどれか(不適切肢選択)」の出題割合が、個数問題・組み合わせ問題以外の43問中16問と37%にとどまっていました。

一方、賃貸不動産経営管理士試験ではどちらも15問と同じ出題割合でした。

つまり、賃貸不動産経営管理士試験のほうがより解答しやすかったと言えます。

 

また、個数問題と組み合わせ問題では組み合わせ問題のほうが解答しやすいです。賃貸不動産経営管理士試験で組み合わせ問題が7問に対し、宅建は1問でした。

これらの出題形式は年によってばらつきがあるので傾向は年々変わりますが、宅建で例年必ず出題され、とても苦しめられたのが
AはBで「あるが」、CはDである

のような、出題文の前半と後半で異なる知識の正誤を問う問題です。

この形式の出題は賃貸不動産経営管理士試験では少ない印象があります。

そこで、賃貸不動産経営管理士試験と宅建両方の全選択肢を読み直し、この類の選択肢を洗い出しました。

すると、賃貸不動産経営管理士試験では40問中4問6肢の出題だったのに対し、宅建では50問中9問12肢もありました。賃貸不動産経営管理士試験ではこの手の出題が宅建の約半分にとどまっていたのです。

つまり、宅建にくらべて賃貸不動産経営管理士試験のほうがより解答しやすい出題形式になっているのです。

以上から、結論は賃貸不動産経営管理士試験では宅建より難易度が低い問題が出題されている、ということに他ならないとなりました。筆者の印象が裏付けられました。

 

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結論

結論は次の通りです。

試験問題の文字分量・出題形式について分析・検討した結果、賃貸不動産経営管理士試験は宅建より難易度が低い。

 

合格率だけの比較から語られる難易度の違いを鵜呑みにしないよう、くれぐれもご注意ください。

なお、賃貸不動産経営管理士試験は令和2年度から50問120分となります。今年、令和元年度試験で合格しておいたほうが絶対良いです。

早めに合格を勝ち取りましょう!。

 

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Source: 賃貸不動産経営管理士合格応援ブログ

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