2019年声優楽曲ベスト30曲+α
近年は聴く手段のハードルも下がって「まずは聴く」を基本として、声優が歌っていると思われる楽曲はなるべく耳を通すようにしていました。特典曲やコミケや会場限定など流通限定の曲を聴くのは苦労しましたが、体感上総リリースの6~7割ぐらいは聴けたのかな?と感じています。(聴くよりも存在を見つける方に苦労します)
「音楽的充実度の高さ」「声による表現の豊かさ」「他に似た存在がない独自性」の3点に着目し、声優を知らない人に聴いてもらうならという視点で声優楽曲ファンとして選びました。自分が従来持っていた音楽ファンとしての視点とは違う、声優楽曲ファンとしての感覚や自我を確立させたいと考えてきた目標への途中経過となりました。
spotifyで配信されているものはプレイリストにまとめましたが登録は19曲のみとなります。そうでないものは各タイトル下記にリンクを記入しました(試聴できないものもあります)。これを読んでいる方の音楽生活へのなんらかの助けになるとしたら幸いです。
2019 声優楽曲ベスト 19/30+α(spotifyプレイリスト)
■「あたしのおへやジャングル」ななひら
(from AL『トリップ×フロリック』)
作詞:七条レタス (IOSYS) 作曲・編曲:D.watt (IOSYS)
※spotifyあり
歌い手出身のヴォーカリスト・声優として同人を中心に活動するななひらの、世界旅行をテーマにした8thアルバム『トリップ×フロリック』からの1曲。
80'sレゲエの名曲「Buddy Bye」のジャングルリミックスを下敷きにした曲で、日本のオタク的価値観の中でジャマイカとロンドンの音楽文化が無理なく共存しています。散らかった部屋をジャングルに例えてジャングルビートである必然性を生み出すと同時に、変われない自分に対する自省の感情を重くなり過ぎずに軽いビートで伝えていきます。
声優アーティストがより大きな市場を求めてポップス志向を強める中で、元々歌い手である彼女が音ゲー・渋谷系・ニコニコ動画の要素を飲み込んで、キャラソンスタイルの声優的歌唱を凝縮した個人アルバムをリリースし続けている状況は面白く感じます。
■「初恋タイムリーパー」天宮もなか(天野聡美)
(from AL『Sprouting Dreams』)
作詞:丘野塔也 作曲・編曲:どんまる
※試聴リンク(youtube)
ビジュアルアーツがYouTubeにて展開するアバターと歌による企画『MEM project』の1stコンピレーションの1曲。
ブレイクビーツ&ポエトリーリーディングのエモーショナルな仕上がりで、不可思議/wonderboyをギャルゲー的に解釈したようなスタイル。ラップだけが声優の音楽的演技表現のベストチョイスではないという選択肢を示してくれました。オーバーフローしていく感情を音数の少なさで絶妙にコントロールしていて、そもそも人間の声が感情表現に優れた楽器であることに改めて気付かされます。
■「バズキルキラ」エナス (CV:新垣樽助), ディオス(CV:新垣樽助) & トレイス(CV:新垣樽助)
(from SG『バズキルキラ』)
作詞:ゆーます 作曲・編曲:丸山公詳
※試聴リンク(youtube)
キャラクターソングを中心としたキャラクターコンテンツ企画「Haunted Obachestra」のシングル。
ゴスペルチョップス的な複雑なリズムの上を新垣樽助が三役で歌い分けるという、音楽的にも演技的にも技巧を凝らした曲で情報量の多さに圧倒されます。演奏から浮き上がるように耳元で鳴るヴォーカル処理は難解さを和らげようとする意図も感じられます。(少しドラマCDっぽい声の処理です)
■無重力ランデヴー / サンドリオン
(from BD『サンドリオン記念日~ドリオンズとの702日~』付属CD)
作詞・作曲:やぎぬまかな 編曲:辻林美穂
※試聴リンク(youtube)
スターダストプロモーション声優部所属の女性声優によるユニット・サンドリオンのライブのみで公開されていた楽曲が、ライブ会場とゲーマーズ専売の初ライブBDに同梱される形でリリースとなりました。
やぎぬま・辻林両氏の垢抜けたソングライティングセンスが、彼女たちのかわいらしさを最大限引き立てる形で発揮されています。ソロで歌うと声優らしい演技がかった歌唱でも、ユニゾンで歌うとアイドルらしい素朴な響きになるという、アイドルと声優の中間に位置するこのユニットらしさも発揮されています。
■「HOLD ME」AMADEUS
(from SG『HOLD ME』)
作詞:Lotus Juice, Jack Westwood 作曲・編曲:Jack Westwood
※spotifyあり
Lotus JuiceとJack Westwood(武内駿輔)によるユニットAMADEUSの配信シングル。
ヒプノティックに繰り返し打ち鳴らされるレイヴィーなピアノが印象的なハウスナンバーで、狂騒的なムードが支配する曲だからこそ、二人の沈み込むようなビターなヴォーカルが映えます。
■「ホーキングの空に」坂本真綾
(from AL『今日だけの音楽』)
作詞 : 一倉 宏 作曲・編曲 : 大沢伸一
※spotifyあり
声優アーティストを代表する存在である坂本真綾の4年ぶりの10枚目のアルバムの1曲。
今作は既リリース曲を排除し全曲新曲で臨み、彼女の今目指す音楽が濃厚に表現されています。この曲ではMONDO GROSSOの近作のアンビエントテイストを基調としながら、 声の生々しさを引き立てるために全ての音が配置・機能していて、達観した冷たさと人間的な温かさが共存する彼女のヴォーカルの特異性が張り詰めた緊張感の中で露わになっていきます。FKA twigsやBillie EilishのエクスペリメンタルR&B~ダークポップの影響を彼女のフィルターを通して表現したような曲です。
■「painkiller」MICHII HARUKA×BVDDHASTEP
(from EP『little bit biased』)
作詞・作曲・編曲:BVDDHASTEP
※試聴リンク(twitter)
声優・道井悠と作家集団BVDDHASTEPによるコラボレーションEPの第2弾からの1曲。
この曲ではいち早く南アフリカのハウス・Gqomのテイストを取り入れていて、役者としてはボーイッシュな役のイメージが強い彼女ですが、この曲ではクールでスタイリッシュな魅力も伝えてくれています。
■「ハッピータイフーン」KiRaRe
(from SG『ハッピータイフーン』)
作詞:やしきん 作曲・編曲:伊藤翼
※spotifyあり
ポニーキャニオンと雑誌コンプティークによる女子中学生アイドルをテーマにしたメディアミックス企画「Re:ステージ!」内のメインユニットKiRaReのシングル。
とにかく漲るアッパーな声のパワーに圧倒されますが、細かくバッキングで入るギターとピアノが生み出す忙しないグルーヴは、日本人的な高速の縦ノリの盛り上がりに対応しながら、横ノリで聴くことも可能にするバランスを保っています。
■「ひと夜ひと夜にひとりごと」市杵島瑞葉(CV:田澤茉純)
(from EP『Re:ステージ! ドリームデイズ♪SONG SERIES④ Personal Music』)
作詞:高瀬愛虹 作曲・編曲:白戸佑輔
※spotifyあり
上記と同じく「Re:ステージ!」内の個人キャラクターソングシリーズの1曲。
星野源の「SUN」を参照したと思われるストリングスや構成ですが、この京都出身のキャラクターの神楽舞や日本舞踊を得意とする和の要素も織り込んでいます。中間のパートでの歌とラップとリーディングの中間に立ちながら独り言を呟くような絶妙に曖昧な歌唱、そしてその曖昧さの中に切ない感情をひっそりと匂わせる田澤茉純の技術に唸りました。
■「夏の記憶」中島愛
(from SG『水槽/髪飾りの天使 [星合盤]』)
作詞・作曲・編曲:三浦康嗣
※spotifyあり
ダブルタイアップシングル2枚同時リリースのカップリングとして収録された1曲。
活動再開後の中島愛は重圧から解放されたような朗らかでリラックスした雰囲気があり、自身の好きを詰め込んだ歌謡曲カバーアルバム『ラブリー・タイム・トラベル』にもそんな雰囲気は詰め込まれていました。
そのアルバムの後にリリースされたこの曲では、□□□三浦康嗣によるトラップの三連符リズムを取り入れたトリッキーなメロディーを軽やかに歌いこなし、今までの影響を消化した新しいスタンダードなポップスを作り上げようとする意欲や喜びが溢れています。
■「Juliet」Anthos
(from AL『華Doll* 1st season~Flowering~2巻「Boxed」』
作詞・作曲:INN 編曲:fazerock
※spotifyあり
ムービックの新コンテンツシリーズ「華Doll*」の架空のアイドルグループAnthosの1曲。
ソロデビュー済を含む若手人気男性声優の精鋭を集め、zakbeeのヴォーカルディレクションの元でトラップやグライムの影響を受けたトリッキーなリズムのフロウを繰り出します。さらに元hyperjuiceのfazerockによるドラムンベースやジュークを通過したヘヴィなトラックによって、ハードかつ耽美的な世界観を作り上げています。
■「Greatest Loser」畠中祐
(from SG『not GAME』)
作詞:坂井竜二 作曲・編曲:白戸佑輔
※試聴リンク(レコチョク)
今年1stアルバムをリリースした畠中祐の、アルバム後にリリースされたシングルのカップリング曲。
インダストリアルな響きを帯びたブレイクスの上で、持ち味である特徴的なヴィブラートとリズム感の良さを遺憾なく発揮しています。そして音源でも分かるくらい彼のの声はヴォリュームが大きく、とにかく痛快です。
■Qと銃 / モラン[兵頭十座(CV:武内駿輔)], ワトソン[兵頭九門(CV:畠中祐)
(from AL『A3! MIX SEASONS LP』
作詞・作曲・編曲:sasakure.UK
※spotifyあり
スマートフォン用役者育成ゲームA3!のキャラクターソングアルバムからの1曲。
キャスト表記が複雑になっているのは、ゲーム内のキャラクターが舞台でさらに違うキャラクターを演じているためであって、ゲーム内舞台上のキャラクターの演技を表現しつつ、元のキャラクターらしさも残して歌う、という繊細なバランスの演技を楽曲でも求められています。
しかしそこは若くして確かなキャリアと実力を持つ二人、sasakure.UKの抑制と爆発を繰り返すようなダイナミックなトラックの上で安定感のある歌唱を聴かせています。
■「生きる」安野希世乃
(from miniAL『おかえり。』)
作詞:西直紀 / 作曲・編曲:川崎智哉
※spotifyあり
安野希世乃の3rdミニアルバムのリード曲。
今まで彼女の声色が持つ優しさをフィーチャーした曲作りが行われていましたが、今作では優しさだけでない強さも打ち出されるようになりました。世界そのものをまるごと肯定するような壮大な曲を歌い切ることによって、声優アーティストとして新しいステップへ進んだことを示唆しています。
壮大であっても女神のような荘厳さはなく地に足がついた人間臭さがあって、リスナーと同じ目線で寄り添って歌っているように感じるのは、やはり彼女の声の優しさと愛らしさがあるからこそ。
■Full of smiles / シフォン・マクドゥーガル(CV:くすはらゆい)
(from SG「流星ワールドアクター キャラクターソング Vol.4」
作詞:風吹実里 from STRIKERS 作曲・編曲:クサノユウキ from STRIKERS
※試聴リンク(youtube)
R-18ゲーム『流星ワールドアクター』の第4弾シングル曲。
アニメでキャラソン仕事をこなす若手女性声優より、PCゲームメインの女性声優の方がキャリアが長かったり経験豊富ということはままあり、よりキャラソンらしい濃厚な味わいを求める方には、エロゲキャラソンは根強く支持されています。
00年代ラウンジハウスなアレンジに甘ったるいヴォーカルはまさに恋愛サーキュレーションなスタイル。
■「恋せよみんな、ハイ!」Pyxis
(from SG『恋せよみんな、ハイ!』)
作詞:畑亜貴 作曲・編曲:Tom-H@ck
※spotifyあり
伊藤美来・豊田萌絵によるユニットPyxisの4thシングル。
ペンタトニック4つ打ちダンスロックはJ-ROCKでは流行が一段落したと思いますが、声優楽曲ではまだまだ需要があります。しかしテクニカルな曲作りを得意とするTom-H@ckが作るこの曲は一筋縄ではいかず、イントロでの8ビートのイーブンキックから始まり倍の16ビートのリズムフィールに移行、さらにサビでギターがビートダウンして8ビートへ戻るという捻りが加わった構成になっています。二人のハイトーンヴォーカルも終始エネルギーを爆発させていて3分強を全力疾走していきます。
■「フライト☆ガール」石飛恵里花
(from SG「フライト☆ガール」)
作詞・作曲:鷲崎健 編曲:三浦誠司
※試聴リンクなし
声優ユニットピュアリーモンスターでも活動する石飛恵里花の自身の文化放送のネットラジオのテーマソング。
彼女が敬愛するラジオパーソナリティの鷲崎健が作詞・作曲を手掛け、彼女の今後の飛躍への期待を歌詞で込めつつ、その素直なパーソナリティに寄り添ったキュートな仕上がりになっています。バッキングピアノとパーカッションが打ち鳴らされる三浦誠司のダンサブルなアレンジも、未来への胸の高まりや新たな世界へ飛び立っていく高揚感を丁寧に表現しています。
試聴できるサイトがないため、気になった方は彼女のラジオを聞くか、一部通販サイトで買って聴いてみてください。
■「FREEDOM(藤次・紫音ver.)」針宮藤次(CV:豊永利行)&三毛門紫音(CV:蒼井翔太)
(from SG『Secret Scarlet ~ゆめライブ 藤次&紫音~』)
作詞・作曲:小倉しんこう 編曲:梅原新
※spotifyあり
コロプラ制作の女性向けスマートフォンゲームのキャラクターソングからの1曲。
この曲はゲーム内の他のユニットも歌う共通楽曲として収録されているのですが、声優界屈指の声量と歌唱力を持つ二人がこのファンキーでジャジーな曲を歌うことで、独特の爆発力が生まれています。
特にこの豊永利行演じる藤次がリードを取るこのヴァージョンは、舞台経験も豊富な彼の力強いヴォーカルが存分に堪能できます。
■「足りない音はキミの声」諸星すみれ
(from miniAL『smile』)
作詞・作曲・編曲:宮川弾
※spotifyあり
諸星すみれのアーティストデビューとなるリリースの1stミニアルバムからの1曲。
花澤香菜「滞空時間」、Wake Up, May'n「王様のカデンツァ」、Erii(山崎エリイ)「気まぐれイニシエーション」に続く、宮川弾のアルバム『ニューロマンサー』の延長線上にあるシンセウェーブ路線の楽曲。ブレス混じりの個性的なヴィブラートを含んだ彼女のアンニュイなヴォーカルとビビッドな響きのシンセは、パソコン音楽クラブとも共通する諦観のような時代のムードを感じます。
■「ピュアで小悪魔」尾崎由香
(from AL「MIXED」)
作詞・作曲・編曲:TOKOTOKO
※spotifyあり
けものフレンズのサーバル役でブレイクした尾崎由香のソロ1stアルバムの1曲。
声優としてのキャリアは浅くとも子役としては幼少期より活動しており、アルバムではキュートな声色とは裏腹に、自身を客観的に見るクールな視点も時折顔を出します。
一方プライベートでロックフェスに通うなど、J-ROCKを愛する彼女の音楽愛も込められいて、自身が持つ資質と表現したいもののバランスがアルバム内で最も協調がとれているのがこの曲。
■「ワルツ」斉藤壮馬
(from miniAL『my blue vacation』)
作詞・作曲:斉藤壮馬 編曲:rionos
※spotifyあり
昨年リリースした1stアルバム『quantum stranger』が3万枚以上売り上げ、トップ声優アーティストの一人となった斉藤壮馬の1stミニアルバム収録曲。
自身を客観視する力に長けていて、求められるものへの対応力の高さは同世代の声優の中でも抜きん出ています。rionosと作り上げたトイトロニカな三拍子のこの曲も、本人の繊細な文学青年のイメージを補強していて、アルバムそのものが斉藤壮馬のキャラクターを表現する作品として機能しています。
■「Love Letter(壁ドン!Version)」矢那木朔音(CV:村瀬歩)
(from 『壁ドン!SONG♪ ~そのカレ、矢那木朔音~『Dance With Me』)
作詞:古屋真 作曲・編曲:西岡和哉
※試聴リンク(公式サイト)
ドラマと楽曲を中心とした女性向けCDシリーズ「壁ドン!SONG♪」の収録曲。
ショタは女性向けではマイノリティ側に入ること多いのですが、このシリーズでは年下男子の矢那木朔音が人気ナンバー1。村瀬歩の演技がそれほどまでにハマっているということだと思うのですが、この曲ではアブストラクトなR&Bトラックの上で、セクシーでありながら清潔感があるヴォーカルを聴かせます。
このシリーズの特徴であるバイノーラル録音の壁ドン!Versionは、歌声が右に左に回り込み、まさに耳元で囁く生々しさが味わえます。
■「Love Trick」山村響
(from miniAL『Take Over You』)
作詞・作曲・編曲:Heart’s Cry
※spotifyあり
声優活動とは少し離れた形で、インディーでアーティスト活動を続ける山村響の2ndミニアルバムの1曲。
歪んだベースやダンスホールレゲエの裏打ちビートを取り入れるなど、UKベースミュージックの影響を感じさせる曲で、重心の低いグルーヴに彼女の優しくもビターな響きの歌声が映えています。
■「切ないけどグラデーション」野上翔
(from SG『切ないけどグラデーション』)
作詞:安藤紗々 作曲・編曲:鎌田瑞輝
※試聴リンク(レコチョク)
フロンティアワークスの若手男性声優バラエティ企画「8P」の8ヶ月連続ソロ楽曲リリースの1曲。
シティポップブームを一気に飛び越えて、90年代初頭の男性SSWリバイバルへ至ったソフティケイトポップ。これが野上翔の端正な歌声とマッチしていて、仮想のノスタルジーだからこそ心地よく響くキャッチーな切なさが味わえます。
■「PEARL」伊藤美来
(from AL『PopSkip』)
作詞・作曲:高田みち子 編曲:水口浩次
※spotifyあり
1stアルバム『水彩~aquaveil~』の完成度の高さで一気に話題をさらった伊藤美来の2ndの冒頭曲。
前作のネオアコ路線からさらに歩みを進め、AOR~シティポップ路線へと進んだアルバムを象徴する楽曲で、都会的なきらびやかさとともに、失恋のほろ苦さが混ざりあったアダルトなムードが漂います。
ただ前作から2年弱しか経っていない中でのアダルト路線へのシフトに本人のヴォーカルが追いついていない面もあり、そのミスマッチさが逆に彼女の幼さを強調しています。
■「Club the Cage」QUELL
(from EP『CLUB』)
作詞・作曲・編曲:はまたけし
※試聴リンク(youtube)
ムービックが企画するドラマCD中心のコンテンツ「ツキノ芸能プロダクション」のSQシリーズのユニットQUELL。
QUELLは以前よりはまたけしによってUKベースミュージックを意識した楽曲制作が行われており、今回は10年代初頭のSkreamやBengaらの影響下の冷たく陰鬱なダブステップを展開しています。しかしサビではハウスビートに変化しストリングスも入ってカタルシスも得られるという二重構造の工夫も凝らされています。
■「ゆうがた」三森すずこ
(from SG『チャンス! / ゆうがた』)
作詞・作曲:津野米咲 編曲:白戸佑輔
※試聴リンク(youtube)
アーティストデビュー6年目を迎えた三森すずこの、赤い公園の津野米咲を迎えたシングルの1曲。
このシングルの前のミニアルバム『holiday mode』から本人の日常のパーソナリティに寄り添った楽曲が目立つようになり、ライブの盛り上がりだけではない、彼女の人間性によりフィットした音楽へとアップデートされました。この曲では夕暮れの切ない風景が、つぶやくような優しいヴォーカルによって温かな肌触りへと変化してきます。
人間的奥行きが音楽にも反映されるようになったとともに、声優アーティストが一人のアーティストして本格化するのは時間がかかる、ということを改めて実感しました。
■「パン」花澤香菜
(from AL『ココベース』
作詞・作曲:浜野謙太 編曲:佐橋佳幸
※試聴リンク(レコチョク)
今や国外でも大きな人気を誇る花澤香菜の5thアルバムの1曲。
在日ファンクの浜野謙太が作詞・作曲、演奏を在日ファンクが務め、illicit tsuboiが録音・ミックスを担当しており、カクバリズムでの在日ファンクのサウンドに出来るだけ近づけた楽曲です。
そのユーモラスでファットな響きはアルバムの中では特異に聴こえますが、単曲で向き合うと、ラジオ「ひとりでできるかな?」でのマイペースで楽天家なのに妙な部分に執着したりする彼女のイメージと合致していて、今までの楽曲の中でも最も自然体な姿が見えてきます。
■「Can you keep a secret?」内田雄馬
(from AL『HORIZON』)
作詞:Shogo 作曲:Shogo, 早川博隆 編曲:早川博隆
※試聴リンク(youtube)
人気声優の内田真礼を姉に持つ内田雄馬のソロ1stアルバムからの1曲。
ロマンチックな世界観を作り込んだアーバンなR&Bトラックの上で、ファルセットを駆使した繊細なヴォーカルを聴かせます。素直で伸びやかさなヴォーカルの中にある健康的なセクシーさが心地よく染み込みます。
■「そうぎゃらんBAM」波羅夷空却(葉山翔太)
(from EP『Bad Ass Temple Funky Sounds』)
作詞・作曲・編曲:Diggy-MO’
※spotifyあり
人気コンテンツのヒプノシスマイクの新シリーズとして登場したナゴヤディビジョンに収録された1曲。
元SOUL’d OUTのDiggy-MO'が作詞・作曲・編曲に加えてミックス、バッキングコーラスも担当しており、彼の独自の色が強く出ています。
プログレフュージョンの上でラップしているような掴みどころのなさがあり、キメが連続するパートでの空中に放り出されるような浮遊感は他にないサイケデリックな感覚を与えてくれます。
ーベスト30曲外の声優音楽の概念を拡張する4曲ー
ここから先は「これ声優楽曲として捉えていいのかな?」と迷う、周縁やボーダーライン上に存在する4曲です。自分が何に声優らしさを感じ、何を良いと思って聴いているのか考えてしまうことが最近は増えています。
■「デジタブル」RABBITS BLESS
(from EP『瞬間 -はじまったばかりのぼくら-』)
作詞:紅野モモ・RION 作曲・編曲:KENT
※試聴なし
ネットラップ界隈でライブ活動していた声優ラップユニットRABBITS BLESSの1st自主音源の1曲。
テッキーなトラックの上を二人がまくし立てていくスタイルは女子版group_inouのようなナード感があって大きな期待をしていましたが、2019年で解散となりました。(なので現在音源の入手は難しいと思われます)
ここであえて書いたのは、声優が音楽活動することが一般的になった現在、チャンスに恵まれない人たちが、インディーの音楽活動で存在をアピールをしていくケースは今後増えると予想されるからで、彼女たちはその動きを先取りした存在でした。
■「HOT SUMMER」掌幻と昴
(from SG『HOT SUMMER』
作詞:掌幻と昴 作曲・編曲:DJ Koki
※試聴リンク(youtube)
ヒプノシスマイクを主導する声優木村昴とラッパー掌幻によるユニット掌幻と昴のライブ会場限定リリースのシングル。
現在は声優の音楽活動はスケジュールの都合やファン層の違いもあって、他の専業ミュージシャンとは分離した形で成立していますが、彼らのような融合した形での活動も今後増えていくのではないかと思います。上記したAMADEUSなどもそのタイプの一つだと思います。
バンドリのRAISE A SUILENや同じブシロードのコンテンツのD4DJなども専業ミュージシャンやDJなどが入り混じったメンバーで活動しており、そもそも自分はこのコンテンツ・この人の何が好きで追いかけてたんだっけ?と自分に問いかけることも多くなってきました。
■「心动的感觉」醋醋
(from SG『心动的感觉』)
作詞:
醋醋 作曲:
戴琳剑
編曲:江潮
※spotifyあり
中国の声優アイドルユニットV17声优少女の中心人物である醋醋のソロシングル。
ダンスを踊ったり楽器を弾いたりバラエティ企画をやったりと日本の声優を意識した活動を行ってきましたが、日本的なスタイルでの日本以外からの声優の登場も今後予想されることを感じさせる存在です。この曲は花澤香菜の楽曲を意識した部分がいくつか見受けられ、花澤香菜の中国での影響力の大きさも感じます。
日本のアイドルフェスJAM EXPO 2019にV17声优少女として登場予定でしたが残念ながらキャンセルになってしまいました。
■「melty girl」KMNZ
(from AL『KMNVERSE』)
作詞:nyankobrq with LIZ 作曲・編曲:nyankobrq
※spotifyあり
2人組バーチャルYouTuberユニットKMNZ(ケモノズ)の1stアルバムの1曲。
「VTuberを声優コンテンツとして扱うのは違うでは?」とはよく指摘されますが、肩書でなくその演技やラジオからの声や音楽での歌声に惹かれてきたと思っている身からすると、むしろキャラクターソングとの差異を見出しづらいという感想を抱いています。 ただその受容の形は従来の声優のキャラソンとは同じ形ではいられないとは思います。
キャラクターソングとして捉えるならば、キャッチーな歌声でスムースなフロウを聴かせるスタイルは、chelmicoにも匹敵する洗練ぶりがあります。
以上30曲+4曲となります。tumblrは書きづらいので10年代ベストを書くならnoteかmediumで書こうかと考えています。