京都市はこのほど、生活困窮者向けの「無料低額宿泊所」を対象に、設備や運営の基準を定める条例の素案をまとめた。生活保護費を搾取する「貧困ビジネス」を排除し、防火体制などを強化する狙いで、条例は今春の施行を目指している。
無料低額宿泊所は、無料または低額な料金で食事や宿泊などができる施設。都道府県、政令指定都市、中核市への届け出で開設できる。国の調査では2015年6月時点で、首都圏を中心に537施設あり、入所者は1万5600人で、うち生活保護受給者は1万4143人だった。
国は03年に運営や設備に関するガイドラインを定めたが、法的拘束力がないため、行政による指導が行き届かず、劣悪な環境に住まわせる貧困ビジネスが横行。昨年1月には札幌市の共同住宅で11人が死亡する火災も発生した。国は社会福祉法などを改正し、都道府県などに条例で運営基準を定めるよう求めていた。
京都市がまとめた素案では、利用料の名目を明確にすることやプライバシーの確保、消防設備の設置などを求める。市独自の項目として、職員向けの虐待防止研修の実施や施設の耐震性の確保なども設ける。
京都府内の無料低額宿泊所は伏見区に1カ所あるだけだが、市生活福祉課は「いまはゲストハウスなど観光客向けのビジネスが中心だが、今後景気が悪化すれば、無料低額宿泊所の新規開設を考える事業者が増える可能性もある。その前にしっかりと基準を設けたい」としている。
条例案は2月の市議会に提案する予定。府も同時期の施行に向けて条例素案を作成中という。