今年30周年を迎える日刊スポーツの政治連載コラム「政界地獄耳」の筆者(K)氏と、本欄を愛してやまない時事芸人・プチ鹿島(49)が、今年の政界を展望する企画の第2弾。安倍晋三首相が疑惑を抱えて年を越した「桜を見る会」の問題にも、話が及んだ。日本での五輪開催年には必ず政権交代が起きてきたという「地獄耳寄り情報」ももたらされた。【取材・構成 中山知子】

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鹿島 今年はどんな年になりますか

K 狂気とクールさが複雑に絡み合う、複雑な年になると思います。特に、秋以降。東京五輪・パラリンピックが終わると国民に喪失感が生まれ、安倍首相自身にも出てくると思う。これだけの長期政権ですから、総理にやる気がなくなった瞬間を最初に感じるのは、官僚でしょう。

鹿島 それくらいのところで、捨てたはずの名簿が出てくるとか(笑い)

K 全部シュレッダーにかけたはずなのに(笑い)でも、過去に起きた薬害エイズや自衛隊日報の問題でも、資料は後から出てきましたから。

鹿島 首相が21年9月の任期いっぱいまで務めるとしても、そろそろ終わりは見えてくる。そんな時、誰かがポッと資料を出すかも。小さな反乱だけど、実は小さくないんです。

K 野党には、相当のタレ込み情報が来ていると聞いています。裏取りや検証はもちろん必要ですが、義憤にかられた内部資料があるようですよ。

鹿島 それを集めることこそ、野党の役割です。

K 「桜を見る会」の資料は、共産党が持ってきたものがほとんど。ジャパンライフの問題は30年来いわれてきたことですが、当時、それを調べていた党はどこかとなれば、歴史が長い共産党だけです。共産党がすごいというよりも、他の野党は党利党略で割れたり、くっついたりするだけで、そんな暇はなかったんだと思います。

鹿島 昨年、大臣就任で正念場を迎えた小泉進次郎環境相の今年はどうですか

K 大臣になっていちばんもったいないと思うのは、「進次郎節」が消えたこと。お父さん(小泉純一郎元首相)と同じで、自民党の批判をすることで自民党の人にも喜ばれましたが、今は環境省の言いなりのように聞こえる。最初のころにガツンと言われ、慎重になってしまったのかもしれないが、進次郎節が封印されるなら、持ち前の魅力はなくなってしまいます。

鹿島 そうでよすね

K 大臣の仕事には、世論をリードする役割もあります。「昭恵夫人は私人」など、ナゾの閣議決定するために大臣がいるわけではない。ひるまないでいていただきたいが、今の状態をみると、大臣を受けなければよかったのに、とつくづく思います。

鹿島 いっそ開き直って、SNSでがんがん発信してはどうでしょう。実は私は、滝川クリステルさんの野心の方が、政治家として上回っていそうな気がするのですが。今の感じでは、進次郎さんがステップにされたりして…

K 専門外で何とも言えませんが、(選挙報酬の問題を抱える)河井案里さんのようにはならないでほしいですね。  (おわり)

<地獄耳寄り情報>

 永田町には「五輪が日本で開催された年には、必ず政権交代が起きる」という、時の政権にとっては衝撃的なジンクスが伝えられてきた。実際、自国開催された過去3度の年にはいずれも、政権が交代している。

最初の東京大会が開かれた64年10月には、五輪閉会式翌日に池田勇人首相が辞意を表明し、その後佐藤栄作内閣が発足した。

また、札幌冬季大会が開かれた72年には、6月に佐藤内閣が退陣し、田中角栄内閣が発足した。

長野冬季大会が開かれた98年にも、7月の参院選で敗北した橋本龍太郎内閣が退陣。小渕恵三内閣の発足につながっている。

<政界地獄耳>

 日刊スポーツで1990年(平2)10月1日から続く名物コラム。匿名の筆者がバトンをつなぎながら執筆。政界や官庁街・霞が関の情報をいち早く入手し、社会面に週6日(日曜日紙面は休み)で掲載。第1回は当時の自民党幹事長、小沢一郎氏に関する記事だった。

プチ鹿島は、携帯電話に過去の記事を保存するほどの愛読者だ。一方、日刊スポーツが創刊70周年を迎えた16年3月には、ヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏が「社会面の連載『政界地獄耳』が大好きで、日刊スポーツを手にした時は欠かさずに読んでいるんです」とコメント。政財界にとどまらず、スポーツ選手の間でも広く愛読されている。