政府が不思議とショッキングな言い方で「2019年生まれが90万人割れした」と発表していました。
実際には、子どもを出産可能な女性の数が減ったので、人口学的に考えれば当然90万人割れしてもおかしくない。2019年の出生数が90万人割れすること自体は、何も不思議でもショッキングでもないのです。
でも、急に「日本人が減りますよ」と突きつけられたら、みんなビックリしたんでしょう。
鳥取や島根がまるまる一個なくなるぐらい人が減っていく
それは「すでに起きていた未来」であり、「対策が上手くいかなかった過去」に過ぎないのですが。
出生数、初の90万人割れへ 推計より2年早く――自然減50万人超・厚労省(時事ドットコム)
https://bunshun.jp/articles/-/22081
私も、東京大学の旧政策ビジョン研究センターで客員研究員をやらせてもらっていた時期に、少子高齢化対策の政策立案のための調査などをやりました。少子化対策は社会保障の基本であり、かねてずっと論じてきたところではあるのですが、改めて見ると悩みの深い事情です。
間違った少子化対策はいつまで続く!? 結婚できず、老後に不安を抱えた中高年を放置する「貧困と孤独」問題は深刻化。これもまた人間の宿命であり現実か
https://www.minnanokaigo.com/news/yamamoto/lesson29/
また、人口減少が年間54万人になった、毎年鳥取や島根がまるまる一個なくなるぐらいに人が減っている! とセンセーショナルに語ってはいますが、お前らそれほど鳥取や島根が好きなんですか。どっちが右か、どっちが左か分からないぐらいにしか興味ないんじゃないかと思いますが、比喩として人口が減るネタとして鳥取規模の人口が消えるよと言いたいのでしょうか。
それを言い始めたら、2028年ごろから100万人単位で人が減っていきます、日本から。そうなると、今年は広島市と同等の規模の人口が減った、今度は札幌市だ、と言い始めるのでしょうか。
亡くなる高齢者の数に見合う子どもが生まれない
ただ、人口が減るのは概ねにおいて寿命がきた日本人が亡くなることがほとんどです。高齢者が多いんだから毎年亡くなる人が多くなるのは当然よね。悲しいことだけど、内訳を見ればいままで日本を頑張って支えてきてくださった高齢者が御役御免で神のもとに召されることはまあ仕方がない。問題は、亡くなる高齢者の数に見合う子どもが生まれないこと(加えて、外国からの移民も少ないこと;ただし、移民に関しては是非があります)にあります。
ところが、昨今のマスコミはどういうわけか「子どもが育てづらいから、もっと養育費にお金を政府は使うべき」「子どもにお金をかけないので、日本は少子化が進む」という、もう1990年代のエンゼルプランのころから否定され続けてきた議論を蒸し返してきて亡国路線な感じがします。
子どもが増えない理由は「結婚できないから」
実際には、日本では特に「子育て環境が悪いから(支援が少ないから)夫婦が子どもを産まない」のではなく、「結婚しない(できない)から子どもが増えない」ことが、学術的にはすでに判明しています。
子育て世代が支援不足に感じるのは、単にその家庭の所得が足りないからであって、少子化対策のために子育て予算を積み増すことはあまり意味がありません。いまいる子どもとその親の世帯が経済的に楽になっても「じゃあ2人目、3人目を産もう」となるかと言われると、ならない。それは、晩婚化による初産年齢が30代になり、3人目の平均出生年齢も40歳間近になれば、お金に余裕があって欲しくてもできなくなっているというのが実情です。
むしろ所得改善など経済政策の部分であって、子どものいる世帯かいない世帯かを問わず、若い男女の所得(手取り)が増えれば多少は結婚が増えるので子どもが増えるんじゃないかという副次的な要素しかないんですよね。
これは、「結婚した女性が生涯何人の子どもを儲けるか」という有配偶(者)出生率という指標で見ることができるわけですが、要するに「1960年代から現在2018年にいたるまで、だいたい結婚した女性1人当たり1.8人程度の出生数であまり減っていない」ことが分かります。
つまり、少子化対策においては「子育て環境を充実させる」ことよりも「未婚の女性に結婚を促す」ほうがダイレクトに子どもが増える、重要な政策であることが分かります。
稼ぎが悪くて子どもにカネがかけられないだけ
一方、3人目、4人目を産む家庭については、夫婦共同での育児をしているか(夫の家事参加率)や、共働きの有無、所得の問題などが絡んできます。3人目の子どもを控える夫婦の理由で「経済的な理由」が跳ね上がるあたりで、ようやく「子育てしやすい環境がないので3人目を諦める」という問題になってきます。
ところが、巷には相変わらず「子育てがしにくい環境だから、子どもが増えないのだ」と考える国民が多くいます。いや、それはあなたの稼ぎが悪くて子どもにカネがかけられないだけだから。ひどい場合だと、自治体が保護者にわずかな負担を求める給食費ですら、四の五の言って払わない親がいるのは、子どもの貧困の問題ではなくて、子どもの親のカネの使い方の間違いだと思うんですよね。たとえ生活保護でもパチンコや飲酒喫煙なども含めて使途が自由であるのは大前提であるとはいっても、未来ある子どもが栄養不足で体格が良くなくなるとか、人として本末転倒じゃないかと思います。
実際には、公共サービスで子どもの出生や育児、教育に対する負担額はどこの自治体でも概ね子ども一人当たり年間120万円ぐらいかかっています。財布から出ていかないから気づいていないだけで、駅にはベビーカー用のエレベーターが増えたりバリアフリー工事が補助によって行われ、子どもは安い費用で保育園に預けられ、義務教育下で公立小学校に入れることができ、安い費用で給食を食べることができます。
もっと子育て世帯に補助を、と言いたいのは分かるのですが、人口減少の理由は「人口構成上、ベビーブーム世代の団塊Jr.が概ね出産適齢期を過ぎた」「結婚しない女性が増えた」「出生するのが平均31歳になってしまい、人口増加までの期間が長くなった」の3点でほぼ言い尽くされる事象です。
厚労省が発表した「令和婚で出産を先延ばしにした」というのは副次的な理由だと思いますが、現実に、平成31年から令和元年に切り替わる5月1日までの出生数がどうも劇的に減ったのが理由とされます。速報値では8%ぐらい減少したんじゃないかと言われていますが、まあ実際に減っているので、どうしようもないんです。