前田恒彦
元特捜部主任検事
1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。きき酒師、日本酒品質鑑定士でもある。
元特捜部主任検事
1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。きき酒師、日本酒品質鑑定士でもある。
トルコの警察当局、ゴーン被告の不法出国に関連して7人を拘束 うち4人はパイロット(AbemaTIMES)
Yahoo!ニュース
前田恒彦
Yahoo!ニュース オーサー| 報告わが国でもすでに特捜事件ではなく外事・公安事件の様相を呈しているので、今後、国内でもさまざまな捜査の展開が考えられますが、それにしてもトルコ当局は仕事が早いですね。親日国ということも影響しているのでしょう。
トルコのどのような犯罪に当たるのかなど、続報が待たれますが、「金の切れ目が縁の切れ目」ということで、彼らがトルコ当局に逃亡劇の背景事情や日本内外における協力者の関与状況などを語るかもしれません。
捜査の結果判明した事実や証拠は「捜査共助」によってわが国の捜査当局にも提示されるはず。これでわが国の捜査が大きく進展することもあり得るでしょう。
ゴーン被告 フランスのパスポート1冊を自ら所持(テレビ朝日系(ANN))
映像 - Yahoo!ニュース
前田恒彦
Yahoo!ニュース オーサー| 報告これはかなり重要な話です。今回の逃亡劇を巡っては、レバノン大使館などの協力を得て別人名義でパスポートの発行を受けたり、帰国渡航書の交付を受けた可能性も考えられました。
しかし、そもそもフランスのパスポートを携帯していたのであれば、一部報道のとおり、大型の楽器箱に身を隠し、手荷物検査を受けない外交特権が使える関係者の協力を得てプライベートジェットに乗り込み、密出国したあと、寄港地やレバノンにフランスのパスポートで入国した可能性が出てきました。
確かに被告人が外国人の場合、入管法でパスポートの携帯が義務付けられているので、小型のセキュリティーボックスにパスポートを入れて施錠し、これを被告人が持ち歩き、弁護人が鍵を保管することもあります。
今回もこのパターンのようですが、誰かが鍵のコピーをゴーン氏に渡したのか、それともゴーン氏や協力者が鍵を壊したのか、捜査による真相解明を要するでしょう。
ゴーン被告の東京・港区の住宅を捜索…逃亡の経緯解明へ(読売新聞オンライン)
Yahoo!ニュース
前田恒彦
Yahoo!ニュース オーサー| 報告もともとカルロス・ゴーン氏をめぐる一連の疑惑は特捜部が取り扱う経済事件でしたが、今回の逃亡劇により、外事・公安事件の様相を呈してきました。国家レベルの背後関係まで伺われるからです。捜索も検察単独ではなく、警察と共同で実施しています。
間違いなく日本の内外に相当数の協力者がおり、ゴーン氏と彼らとの間で事前に綿密な計画が立てられていたはず。
ゴーン氏は弁護士事務所に設置された特定のパソコンしか使用できず、特定の携帯電話しか利用できない条件となっていたので、いかにしてその網の目をかいくぐったのか、これから捜査を尽くすことになります。
真相解明に至ってもゴーン氏の身柄を確保することは絶望的ですが、どこに穴があったのか確定する意義は大きいでしょう。
それでも、検察や警察が具体的な逃亡手段の詳細を明らかにすることはないはず。別の事件の関係者に真似され、また逃亡されるかもしれないからです。
ゴーン被告の保釈取り消し認める 東京地裁(日本テレビ系(NNN))
映像 - Yahoo!ニュース
前田恒彦
Yahoo!ニュース オーサー| 報告特別背任罪や金融商品取引法違反の一審は被告人が出席しなければ裁判を進められないし、判決も言い渡せない決まりです。
日本が他国との間で逃亡者の身柄を相互に引き渡す法的根拠は、(1)犯罪人引渡条約と(2)逃亡犯罪人引渡法しかありません。日本が(1)を締結しているのは米国と韓国だけです。
(2)はそれ以外の国をカバーするために制定された法律ですが、自国民の引き渡しは認めていません。レバノン政府が自国民であるゴーン氏の身柄を引き渡すことなどあり得ないので、もはやゴーン氏の裁判が日本で行われる可能性は乏しいでしょう。
その状態が長く続いても、ゴーン氏の死亡が確認された段階で公訴棄却となり、裁判手続も打ち切りとなります。
弘中弁護士「寝耳に水」…ゴーン被告の出国「報道で知った」(読売新聞オンライン)
Yahoo!ニュース
前田恒彦
Yahoo!ニュース オーサー| 報告本当に弁護人の言うとおり「寝耳に水」だったのであれば、「無罪請負人」や「刑事弁護界のレジェンド」といった綺羅星のごとき弁護団はゴーン氏から全く信頼されていなかったということになります。
ゴーン氏は絶対に逃げないし、弁護団が責任を持って逃さないと大見得を切っていたわけで、完全にハシゴを外された形です。
今回の逃亡劇により、検察はほかの保釈請求事件でもますます強く反対するという対応に出ることでしょう。かなり厳しい保釈許可条件だったにもかかわらず、功を奏しなかったわけですから。
このままだと弁護団はゴーン氏から解任されるか、信頼関係の破たんを理由として自ら辞任することになるかもしれませんね。もはやゴーン氏が日本に戻ってきて裁判が開かれる可能性もないでしょうし。
ゴーン被告の名前での出国記録なし(TBS系(JNN))
映像 - Yahoo!ニュース
前田恒彦
Yahoo!ニュース オーサー| 報告逃亡者の出国を水際で食い止めようという国際海空港手配は、氏名や年齢、生年月日、住居、職業、国籍、本籍といった情報に基づいています。
その網の目をかいくぐるため、養子縁組によって氏名を変更する例や、国によってはその国への投資額などに応じてパスポートを発給してくれるところもあるので、これで国籍や氏名を変えて出国するというパターンもあります。
特に、お盆時期や年末など、出国ラッシュで監視の目が手薄となる時期を狙っています。
今回の逃亡劇には、間違いなく日本の国内外に相当数の協力者がいることでしょう。
検察は、今後、彼らを犯人隠避罪で、ゴーン氏をその教唆罪で徹底捜査するはずです。
ただ、それでも、まんまとゴーン氏に逃げられたという事実には変わりがありません。
ゴーン被告「レバノンにいる」と声明(共同通信)
Yahoo!ニュース
前田恒彦
Yahoo!ニュース オーサー| 報告検察はICPOを介して加盟各国に探索などを要請する「国際手配」が可能です。身柄の引渡しを前提とする場合を「赤手配」と呼びますが、検察はこれを選択するでしょう。
ただ、所在が分かっても大きな壁が立ちはだかります。日本が他国との間で逃亡者の身柄を相互に引き渡す法的根拠は、(1)犯罪人引渡条約と(2)逃亡犯罪人引渡法しかないからです。
日本が(1)を締結しているのは米国と韓国だけです。(2)はそれ以外の国とのやり取りをカバーするために制定された法律であり、他国からの要請に基づいて他国に引き渡す際の手続を定めていますが、自国民の引き渡しは認めていません。
日本が他国から逃亡者の引き渡しを受けた件数は、例年、0~数人程度にとどまっています。レバノン政府が自国民であるゴーン氏の身柄を日本に引き渡すことはあり得ず、ゴーン氏の裁判は長期の不動事件となることが確実となりましたね。
保釈保証金“15億円”没取か ゴーン被告無断出国で(テレビ朝日系(ANN))
映像 - Yahoo!ニュース
前田恒彦
Yahoo!ニュース オーサー| 報告保釈中の逃亡防止は、もし逃げたら保釈保証金を没取(ぼっとり)、すなわち取り上げるよ、という威嚇によって担保されています。
その意味で、保釈保証金はさすがにこの金額なら逃げないだろう、というものである必要があります。
この15億円は全額没取されるはずですが、結局、海外に多額の資産を抱えるゴーン氏にとって、痛くも痒くもない金額だったということでしょう。
この金額が妥当だったのか徹底した検証を要しますが、今後、この種の事案に対しては、保釈中の逃亡に刑罰を含めた別のペナルティ制度を創設するとか、アメリカで行われている保釈中のGPS端末装着による電子的監視システムの導入なども検討されてしかるべきでしょう。
ゴーン被告の出国、驚く検察幹部…「海外渡航禁止」保釈条件に変更なし(読売新聞オンライン)
Yahoo!ニュース
前田恒彦
Yahoo!ニュース オーサー| 報告こうしたケースの場合、国外への出国そのものを水際で防ぐことが何よりも重要です。
ただ、検察と入国管理局は同じ法務省畑でも別の組織ですから、両者の連携がなければそのまま通過されてしまいます。
そこで現在は、検察が入管に手配を依頼し、出入国審査のパスポート提示などの際に手配者のデータベースとヒットすると、自動的に警察や検察に通報され、入管で足止めされるシステムになっています。
検察がこの「国際海空港手配」をやっていなかったか、ゴーン氏がレバノン大使館などの協力を得てパスポート番号や氏名などを変え、登録情報と別人のフリをして年末の出国ラッシュに紛れてプライベートジェットで出国した可能性もあるでしょう。
カルロス・ゴーン被告がベイルート入り、レバノン当局者(AFP=時事)
Yahoo!ニュース
前田恒彦
Yahoo!ニュース オーサー| 報告検察は保釈に強く反対していたわけで、弁護人が責任をもって連れ戻してこいとか、許可した裁判官が探してこいというのが検察関係者の本音でしょう。
いずれにせよ、裁判所がどれだけ厳しい保釈条件を付けても、逃げる気満々の資産家の被告人には意味がなく、簡単に逃げられるルートがあることが示されました。
なぜ出国できたのか、特にレバノン大使館の関与がなかったのかについて、徹底した検証が求められます。それでも、もうカルロス・ゴーン氏が日本に戻ってくることはないでしょう。
保釈許可率の上昇は「人質司法」による弊害を打破しようというものですから、罪証隠滅や逃亡のおそれがない事案にまで保釈に後ろ向きとなるのは妥当ではありませんが、今後、この種の事件ではより慎重な判断が求められる事態になるでしょう。
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