はじめての放射線計測
放射線のエネルギー
放射性壊変に伴って放射される放射線は固有のエネルギーをもち、そのエネルギーを測定すれば、放射線を出した核種を特定することができる。
これを核種同定という。
- 壊変エネルギー:
放射線のエネルギーは、しばしば電子ボルト (eV) の 1000 倍 (keV) や 100 万倍 (MeV) という単位で表現される。
1 eV は、基準点に対して電位差 1 V の電場に置かれた電子のもつ位置エネルギーである。
1 V とは、1 C の電荷を運ぶのに要するエネルギーが 1 J であるような電位差のことだから、e C の大きさの電荷をもつ電子が電位差 1 V の電場に置かれたときの位置エネルギーは e J である。
したがって、1 eV = e J である。
ここで、e = 1.6 x 10^-19 C である。
- 放射性壊変:
下図はセシウム 137 (Cs-137) が放射性壊変を起こしてバリウム 137 (Ba-137) に変わる過程を示している。
137 が質量数で、セシウムの原子番号は 55 だから、Cs-137 の原子核は 55 個の陽子と 82 個の中性子で構成されている。
Cs-137 はβ線 (電子) を放出して崩壊する。
原子核から電子が放出される際に中性子が陽子に変わるので、質量数は不変のまま陽子が 56 個になる。
陽子の数が 1 個増えたので、この原子はセシウムではなく、原子番号 56 のバリウムに変化したことになる。
Cs-137 のβ崩壊には 2 種類ある。
1 つは 0.514 MeV のエネルギーをもつ電子の放出 (94.4%の確率) で、もう1つが 1.176 MeV のエネルギーをもつ電子の放出 (5.6%の確率) である。
前者の場合、生成したバリウム原子核は不安定で、引き続き 0.662 MeV のエネルギーをもつγ線を放射し、後者の場合と同じ Ba-137 になる。
したがって、0.662 MeV のγ線が検出されれば、Cs-137 が崩壊して Ba-137 に変わったことが分かる。

知っておきたい放射線のこと, 高校生のための放射線副読本, 文部科学省 (2011)より
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