働き手にとって2019年の明るいニュースといえば、ILO(国際労働機関)が「仕事の世界における暴力とハラスメント撤廃条約」を採択し、国内でもパワハラ、セクハラ、マタハラ(妊娠・出産をめぐる嫌がらせ)に対する「ハラスメント規制法」が成立したことだろう。
職場でのいじめや嫌がらせはこの間、個別労働紛争相談のトップを占める深刻な労働問題となってきたからだ。
だが、そんな機運に冷水を浴びせるかのような「伏兵」が、関係者に衝撃を与えている。
2019年11月のマタハラ事件東京高裁判決だ。
ここでは、ハラスメントを証明する必須の手段、とされてきた録音行為が服務規律違反とされるなど、働き手の権利の行使を封じ込めかねない考え方がいくつも示されたからだ。