サラリーマンの所得税は、会社で年末調整という手続きで所得税の精算を行うため、ほとんどの方は確定申告の必要がありません。しかし、個人事業主の場合は自分で儲けを計算して、その所得金額に対する税額を確定申告しなければなりません。今回は、その確定申告をしなくてよい場合、それでもした方がよい場合について説明します。
個人事業主で所得税の確定申告をしなくてよいのは、下に掲載した見本画像の確定申告書B第一表で言うと27欄の計算した税額から28欄の配当控除を差し引いた金額がゼロになる場合です。
簡単に言うと、
この2つが確定申告をしなくてもよいケースとなります。
ただし、次の段落「申告不要と思って失敗するケースなど」に記載したように、「青色申告特別控除」や「専従者控除」など確定申告をしてはじめて控除が認められるものもありますので、これらはないものとして計算してみる必要があります。
ちなみにサラリーマンの場合、「給与以外の所得が20万円以下の場合は申告不要」などという取り扱いがありますが、個人事業主の場合は給与所得が20万円以下であってもすべて合計して判断する必要がありますから、注意しなければなりません。
青色申告を選択している場合などは、申告不要と思って失敗するケースや、確定申告した方がトクになるケースがありますので以下でご紹介しましょう。
青色申告最大のメリットは、複式簿記の帳簿をつけることで最大65万円の青色申告特別控除を受けられることです。
この最大65万円の青色申告特別控除は、期限内に確定申告をすることが条件です。65万円控除をした状態で、上記の確定申告をしなくてよい数字になったとしても、確定申告しないで期限が過ぎてしまうと控除が最大10万円となってしまいます。下手をすると控除額が変わったことにより、ゼロだったはずの税額が出てしまうこともありますから注意しましょう。
次に、事業が赤字だった場合、青色申告には純損失の繰越し控除という制度があります。
簡単に言うと、赤字を3年間繰り越してその間の黒字と相殺することができるというものです。これも、確定申告(損失申告)をすることによってはじめて制度の適用を受けることができますので、赤字であってもしっかりと帳簿を付けて赤字の申告をしましょう。
最後に青色申告・白色申告共通ですが、申告不要であっても報酬などで源泉徴収されている方や、前年分の状況から予定納税があった方。源泉徴収税額や予定納税額は所得税の前払いになりますので、税額がなかったときは全額還付を受けることができます。受け取り漏れのないよう、還付申告をしましょう。
個人住民税や個人事業税は、所得税の確定申告した場合は税務署からデータがまわるため、申告する必要がありません。しかし、所得税の申告をしなくてよい場合はどうしたらよいでしょうか。
所得税がゼロで税務署には申告したくないという場合は、お住まいの市区町村に対して個人住民税の申告をすることになります。所得税と個人住民税とでは扶養控除などの控除額に差があるため、所得税がかからない場合でも個人住民税がかかるということがありますので注意しましょう。
また、個人住民税もかからないという場合でも、所得を申告しないと国民健康保険などの計算ができませんし、非課税証明書を発行してもらうこともできません。非課税証明書は児童手当の申請、公営住宅の使用料の減免などで必要になりますので、所得がなかったとしても必ず申告しておきましょう。
なお、個人事業税についてはこの住民税の申告書に事業税に関する事項を記載する欄があり、住民税の申告をすることによりデータがまわるため、申告する必要がありません。
いかがでしたでしょうか。個人事業主の場合は、申告不要であっても確定申告をした方がトクになることが多いですね。所得税がかからない場合でも、事業所得や不動産所得はその所得を証明するために帳簿が必要です。日ごろから帳簿をしっかりとつけておくと安心ですね。
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photo:Thinkstock / Getty Images
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この記事の執筆者
1972年生まれ。税理士。弥生認定インストラクター。「宮原裕一税理士事務所」
弥生会計を10年以上使い倒し、経理業務を効率化して経営に役立てるノウハウを確立。弥生会計に精通した税理士として、自身が運営する情報サイト「弥生マイスター」は全国の弥生ユーザーから好評を博している。
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