故スティーブ・ジョブズ氏とビル・ゲイツ氏、そしてジェフ・ベゾス氏という米技術革新分野の洞察と先見の明を持つ3人は、前世紀にさまざまの予言をしていくつも的中させている。ビジネス・インサイダー誌は、実現したそれらの予言のなかからおもな9つを紹介した。
▽スティーブ・ジョブズの予言
1)携行可能の「仮想代理人付きスレイト」(仮想執事搭載の板状コンピュータ):シリとアイフォーン
ジョブズ氏は1984年に、ニューズウィーク誌のアクセス・マガジンの取材に対し、携行可能の「代理人」として機能するコンピュータの出現を予想した。「あたかも箱のなかに小さな人間が入っているかのように、あなたが望むことを察してくれる」と同氏は説明した。
アップル(Apple)は、2007年に発売したアイフォーン(iPhone)のiOSに仮想執事人工知能シリ(Siri)を2010年に初めて搭載し、「仮想執事付きスレイト」を実現した。
2)在庫を持たない自動車販売代理店:テスラ
ジョブズ氏は1996年に、ワイヤード誌の取材に対し、車の在庫管理には膨大な時間と経費がかかり、しかも、客が求める色や車種が在庫のなかにない場合が多いと指摘した。同氏は、販売代理店が在庫を持たず、試乗用に白い車を1台用意し、好きな色を客に注文させ1週間以内に納車できるようになればすばらしい、と述べた。
テスラ(Tesla)は、同社初の展示販売店をロサンゼルスで2008年にオープンした。テスラの展示販売店は在庫をほとんど持たず、顧客がカスタマイズした車を販売員またはオンライン経由で注文できるようにした。
3)クラウド基盤ストレージ:アイクラウド
ジョブズ氏は1996年に、ワイヤード誌の取材に対し、「自分自身に用事を思い出させるためのもっともも気に入った方法は、自分に電子メールを送ることだ」「また、それらの電子メールや各種の書類を自身の端末に保存せずにウェブ上で使ってウェブ上で保存する」と述べた。
アップルは2011年に、アイクラウド(iCloud)を提供開始した。クラウド・サービス経由でインターネットに書類や電子メールを自動的に保存する手法はいまや標準となっているが、1996年当時、クラウド・サービスは影もかたちもなかった。現在、グーグル・ドライブ(Google Drive)やドロップボックス(Dropbox)を含めクラウド・サービスは当たり前の存在だ。
▽ビル・ゲイツの予言
1)オンライン住宅監視システムの普及:アマゾンのリング
ゲイツ氏は1999年に、「自宅の常時動画フィードがいずれ一般的になり、留守中にだれかが訪ねてきたらそれを教えてくれる」と著書『思考スピードの経営(Business@the Speed of Thought)』のなかで予見した。
こんにち、アマゾン(Amazon)のドアベル監視カメラ「リング(Ring)」は米国で広く普及しており、警察が犯罪捜査の一環としてその映像を使うこともある。
2)スマート標的広告:フェイスブックらの個人化広告配信
ゲイツ氏は1999年に、「スマート広告機能が端末に搭載され、(端末利用者の)購入傾向を知り、利用者の嗜好に応じてカスタマイズされた広告が表示されるようになる」と著書『思考スピードの経営』に記した。
今日、フェイスブック(Facebook)とインスタグラム(Instagram)は、利用者のスマートフォンの会話を聞き、それに応じて広告を選んで配信していると広く考えられている。
3)求職活動のオンライン移行:リンクドインの登場
ゲイツ氏は1999年に、「求職者たちは、個々の関心事やニーズ、技能を公表することによって、雇用機会をオンライン機能によって見つけることができるようになる」と著書『思考スピードの経営」のなかで予言した。
それから4年後の2003年、リンクトイン(LinkedIn)がサービスを開始。フートスイート(Hootsuite)によると、2019年2月時点で米国人労働者1億5400万人がリンクトインに口座を設けている。
マイクロソフトはリンクトインを2016年に262億ドルの巨額で買収した。
▽ジェフ・ベゾスの予言
1)アマゾンはバーンズ・アンド・ノーブルの競争相手ではなくなる
ベゾス氏は1999年に、ワイヤード誌に対し、「バーンズ・アンド・ノーブル(Barnes & Noble=B&N)は1年後にはアマゾンを直接競合相手とは考えていないだろう」と予見した。「われわれは、電子商取引の将来に投資しようとしている。B&Nは、書店運営という自分たちの縄張りを守ろうとしているにすぎない」と述べた。
アマゾンは、書籍のオンライン販売から始まったが、対象商品分野を急速に広げ、現在では、言うまでもなくクラウド電算からデジタル・コンテント配信、独自のタブレット販売、グローサリー・チェーン、自動決済実在店舗チェーンまで、デジタル・サービスと物流全般の巨大帝国になった。
2)店で買える商品の大部分はオンライン購入可能に:電子商取引市場の劇的拡大
ベゾス氏は1999年に、ワイヤード誌に対し、2020年の未来予想について、「食べ物や 紙製品、掃除用品をはじめ実在店舗で買えるほとんどの商品を電子的に注文できるようになる」と述べた。いまでは当たり前のことだが、1999年当時、それは開明的な先見性だ。
アマゾンは2014年に、洗剤からシャンプーまで「低価格食品や家庭用雑貨必需品」を提供する「アマゾン・プライム・パントリー(Amazon Prime Pantry)」の提供を開始した。
3)家庭用電気製品の接続化:アレクサによるスマート住宅生態系
ベゾス氏は1999年、テレビ番組司会者チャーリー・ローズ氏に、「(家電といった) 非常にたくさんのものがインターネットに接続されるようになる」と予言した。
アマゾンは、独自の人工知能アレクサの端末としてエコーを発売し、そのエコーを窓口にアレクサによって照明やテレビといった家庭用電気製品を操作できるようにした。その後、消費者製品メーカーらがアレクサとエコーのプラットフォームに便乗し、スピーカーや冷蔵庫、ブラインド、室温調節機、防犯システムといった種々の家庭用電気製品が接続化され、アレクサ端末によって制御できるようになった。
【https://www.businessinsider.com/bill-gates-jeff-bezos-steve-jobs-predictions-that-came-true-2019-8】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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