最近、Thunderbolt 3端子を備えるPCが少しずつ増えてきた。「USB4」として標準化が決まっているThunderbolt 3は、データ伝送速度が最大40Gbps(毎秒5GB)と非常に高速だ。この速度を生かした周辺機器も次第に増えてきた。
この記事では、2017年に発売された「ThinkPad X1 Carbon(第5世代)」をThunderbolt 3対応周辺機器でパワーアップしてみようと思う。
「Razer Core X」は、PCI Express接続のGPU(グラフィックスカード)を搭載できるRazer製の外付けGPUボックスだ。最大で3スロットサイズのカードを収納可能で、650Wの独立電源も搭載している。直販価格は3万2800円だ。
ケース背面にある取っ手を持って後方に引っ張り出すと、カードスロットと電源が取り付けられた基部を取り出せる。
カードスロットはPCI Express x16サイズのものが1基付いている。ボックスは奥行きがしっかりと確保されているため、長さ330mmまでのグラフィックスカードのGPUでも問題なく装着可能だ。着ける際に特別な工具は不要だ。
電源はGPUやUSB Power Delivery(USB PD)デバイスに電源を供給するために用いる。GPU用の電源ケーブルは8ピン(6ピン化も可能)のものが2本付いており、両者合わせて500Wまで供給できる。USB PDデバイスへの電源供給は最大で100Wまでとなる。
ThinkPad X1 Carbonのように、USB PDによる電源入力に対応しているThunderbolt 3端子を持つノートPCなら、Razer Core Xと直接接続すれば電源も供給されるので便利だ。
問題は、GPUを装着してどこまでパフォーマンスが向上するかである。今回は分かりやすさを重視して「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(FF15ベンチ)」を使って比べてみよう。ここでは、AMDの「Radeon RX 5500 XT」(8GB)やその上位に相当する「Radeon RX 5700 XT」(8GB)をRazer Core Xと組み合わせてテストする。
まず、CPUに内蔵された「Intel HD Graphics 620」単体で、フルHD(1920×1080ピクセル)のフルスクリーンで標準画質のテストをしてみる。誰の目から見ても非常にカクカクしている。オブジェクトが多い場面ではコマ飛びの多い紙芝居状態だ。
スコアは471で「動作困難」。ある意味で当然といえる結果だ。
次に、Radeon RX 5500 XTをRazer Core Xに装着し、最新のRadeon Softwareをインストールした上でX1 Carbonと接続してテストをしてみる。今回は描画を外部出力せず、内蔵GPUを介してX1 Carbonの液晶ディスプレイに表示している。解像度や品質などの条件は先ほどと同様だ。
今度はテストの立ち上がりから非常になめらかに進行し、どんどんスコアが上がっていく。ただし、Thunderbolt 3の帯域が40Gbpsに限られるせいか、オブジェクトが多くなると少し「固まる」場面も見受けられる。
スコアは4809で「やや快適」。スコアが10倍に伸びた。恐らく、Radeon RX 5500 XTから直接映像を出力すればもう少しスコアは改善するだろう。
少し気を良くした所で、GPUをRadeon RX 5700 XTに差し替えて同じテストを敢行した。
当然ながらスコアはスムーズに伸びていく。オブジェクトが多いと少し「固まる」ことはRX 5500 XTと同じだが、その頻度は気持ち少なくなった。
スコアは5214で「やや快適」。あまり伸びが見られない。Thunderbolt 3の帯域がボトルネックなのだろう。
以上の結果を見れば分かる通り、3Dゲームでは外付けGPUの効果は“てきめん”だ。今回は時間の都合でテストは省略したが、GPUアクセラレーションが利用できる画像や動画の編集ソフトを使う場合も、外付けGPUを装着すれば重い処理ほど速度の改善を期待できる。
ただし、ハイスペックなGPUを装着すると、Thunderbolt 3の帯域がパフォーマンス面でのボトルネックとなりうる。ミドルレンジのGPUを装着すると費用対効果の面で最適といえそうだ。
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