その日、アインズは一つの決断をしようとしていた。
それは自身の結婚の事である。
(魔導国の統治も表面上は大きな問題もないし、そろそろアルベドにしっかり向き合ってやらないとな…元々自分で撒いた種だし。)
(それに…)
自分が身を固めて皆を安心させないと、せっかく自我が育ってきたNPC達も己の意思を抑え過ぎてしまうのでは、という危惧もあった。
(それぞれが自らの幸せを見つけられるよう、まずは自分が範を示すべきだろう)
とは思うのだが、やはり不安もある。なにせ、隙あらば自分を手込めにしようとする女性を妻に迎えようとしているのだ。それにあの日から彼の心に刺さったトゲは今も消えず、アルベドが愛を伝えてくれる程、その愛が大きければ大きい程彼の心を深く抉るのだった。
(彼女はそんなもの関係ないと言ってくれたが…)
今更ではあるが、やはり皆の前でしっかりケジメをつけないと自分は先には進めない。自分を信頼し慕ってくれる者達に対して後ろめたい事はしたくない。それが上に立つ者の責任だろう、と彼は思うのだった。
(それは自分でけりをつけるとして…結婚するべきかどうかは重要な問題だし、周りの意見も聞いておいた方が良いな。とりあえずデミウルゴス、コキュートス、セバスには相談してみるか…って、アイツ等は反対なんかするわけないよな~)
(もしアルベドと結婚するとなったら、やっぱりシャルティアも放ってはおけないよな…しかし、アイツの性癖はレベル高すぎるだろ!それこそナニしてくるかわかったもんじゃないぞ)
(どうするべきか…)
しばし考えたのち「だいたい童貞の俺がそんな事決められる訳がない!誰かに背中を押してもらわないととても無理だ!」と半ばヤケクソ気味に結論づけたアインズは、自身の決心が鈍らないうちに三人にメッセージを飛ばす。
人払いをすませた後、アインズは深く椅子にもたれかかり天を仰ぐ。その胸に去来するのは様々な思い出。
(そういやギルメン達に「モモンガさん、いざとなったらウチの娘を嫁にしていいから笑」って言われてたな~。)
その時は「皆俺の事どんだけ可哀想なヤツだと思ってるんだよ!」と憤慨したのだが、今まさにそれが現実になろうとしているのだ。悔しいがギルド「アインズ・ウール・ゴウン」の仲間達には先見の明があったといわざるをえない。
その事を思うと少々虚しい気持ちにもなるのだが、仲間が遺してくれた
(とはいえ、こんな骸骨の俺が嫁もらってどうすんだ!って話だよな。それでアルベド達が心から満たされるのなら良いのかもしれないけど…うう、無いはずの胃が痛い…)
そのような事を考え悶々としながら、アインズはデミウルゴス達の到着を待つのであった。
読んでくださった皆様ありがとうございました!次回はデミ、コキュ、セバスと少しお話したりします。