最終更新:2017/05/08

タンジェントの加法定理とその拡張

分野: 三角比・三角関数  レベル: 基本公式

タンジェントの加法定理:
tan の中身が全て π2 の奇数倍でないような任意の実数 α,β に対して)
tan(α+β)=tanα+tanβ1tanαtanβ
tan(αβ)=tanαtanβ1+tanαtanβ

前半は教科書内容,後半は発展的な内容(美しい!)です。

タンジェントの加法定理について

プラスの加法定理とマイナスの加法定理を混同しがちですが「分子の符号と同じ」と覚えるとよいでしょう(tan(α+β) の右辺の分子にはプラス,tan(αβ) の右辺の分子にはマイナス)。

使用例

tan45=1tan60=3 から tan15 の値が求まる:
tan15=tan(6045)=tan60tan451+tan60tan45=311+3=23

二直線のなす角を求めるときにも活躍する公式です。→二直線のなす角を求める2通りの方法と比較

タンジェントの加法定理の証明

サインの加法定理とコサインの加法定理を認めれば証明は簡単です。サイン,コサインの加法定理の証明も含めた詳しい解説は加法定理の証明(一般角に対する厳密な方法)を参照して下さい。

プラス側の証明

sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβ
cos(α+β)=cosαcosβsinαsinβ
を認めれば,
tan(α+β)=sin(α+β)cos(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβcosαcosβsinαsinβ
となり,分母分子を cosαcosβ で割ると,上式は
sinαcosα+sinβcosβ1sinαsinβcosαcosβ=tanα+tanβ1tanαtanβ
となる。

マイナス側の証明

プラス側と同じようにすることもできるが,プラス側の式において ββ とすると,
tan(αβ)=tanα+tan(β)1tanαtan(β)
となり,これと tan(β)=tanβ を使うことでも導出できる。

    タンジェントの加法定理の拡張

    高校数学で習うのは二つの角度の和,差についてのみですが,より一般に n 個の角度の和についても美しい式が成立します。

    tank=1nθk=e1e3+e5e0e2+e4
    ただし,eitanθ1,tanθ2,,tanθni 次の基本対称式であり,e0=1i>n のとき ei=0 とする。

    例えば,n=2 のとき,
    tan(θ1+θ2)=e1e0e2=tanθ1+tanθ21tanθ1tanθ2
    となり,普通の加法定理になります。

    n=3 のとき,
    tan(θ1+θ2+θ3)=e1e3e0e2=tanθ1+tanθ2+tanθ3tanθ1tanθ2tanθ31tanθ1tanθ2tanθ2tanθ3tanθ3tanθ1
    となり,特に θ1+θ2+θ3=180 のときはタンジェントの美しい関係式で紹介した式:
    tanθ1+tanθ2+tanθ3=tanθ1tanθ2tanθ3
    を得ることができます。

    証明は n に関する数学的帰納法でそれなりに簡単にできます。練習問題にどうぞ!

    sinとcosについてはここまで美しい加法定理の拡張はなさそうです。