ソニーチームが開発、ハードウェアをハックする「MESH」

ソニーのスタートアッププロジェクトとして開発されているDIYツールキット「MESH」。LEDや加速度センサーなどを備えたブロックを、タブレット画面上でアイコンをリンクさせるだけで連携して動かせる。現在、クラウドファンディングで資金調達中だ。

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IFTTT」を使えば、「レシピ」をつなぎ合わせるだけで、アプリやサーヴィスを連携できる(日本語版記事)。また、「littleBits」(リトルビッツ)を使えば、レゴのように簡単に電子機器を自作できる(日本語版記事)。

だが、「MESH」と呼ばれる新しいDIYキットは、この両方の要素を兼ね備えている。操作の簡単なタブレット向けアプリで操作するだけで、シンプルな形をした複数の物理的なセンサーを、思いつくままに連携して動かせるようになるのだ。

MESHは、ソニーの日本人エンジニアたちによる小規模なチームが行っているプロジェクトで、その目的は「ハードウェアを簡単にハッキングできるようにすること」だ。

ドミノに似た「タグ」と呼ばれる3種類のブロックが用意されており(加速度計、ボタン、およびLED)、これらのブロックを、タブレット用アプリでワイヤレスに連携させる。そして、「Quartz Composer」に似た感じの画面上で、ブロック相互をリンクさせてさまざまな動作を設定するのだ。

例えば、アプリの作業スペース内に加速度計のアイコンとLEDのアイコンをドラッグし、このふたつのアイコンを指でリンクさせる。これだけで、ブロックのある場所がどこであるかにかかわらず、加速度計のブロックが動かされると、LEDのブロックが点灯するようになる。また、LEDのアイコンから電子メールのアイコンにリンクを張ると、加速度計のブロックが動かされたときに電子メールで通知されるようになる。

[showVideoYoutube url='https://www.youtube.com/embed/uGcqZCDvT_4']

MESHプロジェクトの動画では、ダンベルに加速度計のブロックを取り付けておき、目覚ましのアラームが鳴ったら、そのダンベルを決められた回数上げ下げするまでアラームが止まらないようにする、などの例が紹介されている。

この例は、苦労せずにプログラミングができる機能を使いたいと思わせるものではないとはいえ、このプロジェクトに取り組むソニーのエンジニア、萩原丈博善積真吾(自動撮影カメラ「Party-shot」の開発者でもある)が試作品のデモをしてくれたとき、筆者はその可能性をすぐに感じ取ることができた。

萩原氏はプロジェクトの狙いについて、直感的に発明ができるようにすることだと述べていたが、そのとおりだった。筆者自身は、複雑な動きをする試作品をつくることはできなかったし、正直に言えば、役に立つものはまったくつくれなかった。だが、画面上で動作を指定するだけで、その動作がすぐにブロックに設定される様子は、マジックか何かを見ているような感じだった。

萩原氏らのチームは現在、MESHプラットフォームの開発を続けるために、クラウドファンディングの「Indiegogo」で資金を募っている(1月6日から、目標額50,000ドルで開始。締め切り3月7日、翻訳時点で40,000ドル)。

動画では精巧なおもちゃのように見えてしまうのが現状だが、汎用入出力モジュールを備えた4つ目のブロックもあるから、機械いじりの得意な人なら、サーボ機構をほかのハードウェアと組み合わせることができるだろう。

また、チームでは、MESHをほかのソフトウェアやWebサーヴィスとも連携できるようにしたい考えだ。これが実現すれば、もっと人を惹きつけるようなプロジェクトがたくさん生まれそうだ。例えば、安価な物理センサーをIFTTT上でほかのものとリンクさせられるシステムは面白いだろう。MESHは、近未来のクリエイティヴなツールがどういうものになるかを垣間見させてくれるプロジェクトといえる。

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MESHのタブレット用アプリを使えば、シンプルなヴィジュアル・インターフェイスで、さまざまな動作をセンサーに設定できる

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クールジャパンの次はウォームジャパン? 日本が進むべき“未来”が、見えてきたかもしれない:WIRED RESEARCH #1結果速報

2014年12月15日から2015年1月18日までの約1カ月間、『WIRED』日本版は、「クールジャパンの『次』をみんなで考えよう!」というテーマを掲げ、この点に関するみなさんの無意識を、量子力学の数理を用いて可視化するアンケートを試みました。ご参加いただいたのは、2,570人の日本人と593人の在日外国人の方たち(みなさま、ありがとうございました!)。回答結果から見えてきた、この先の日本が進むべき方向性とは?

TEXT BY TOMONARI COTANI
PHOTOGRAPH BY SHIN-ICHI YOKOYAMA

今回のアンケートは、量子力学の数理を適用したマーケティングエンジン=「Scanamindスキャナマインド)」を使って行われました。Scanamindは、本人も答えようがない無意識の概念構造を量子数理で可視化するツールで、テーマに対してあらかじめ質問を用意するのではなく、回答者自らがつくった質問に本人自身が直感的に回答していくことで、回答者の無意識を構造化する仕組みになっています。

【4/23、開催!】「量子マーケティング」の成果、大報告!

総計3,000人以上の読者に参加いただいたアンケート企画、「クールジャパンの『次』をみんなで考えよう」。「量子数理」を活用したツール「Scanamind(スキャナマインド)」から浮かびあがったキーワードが意味することとは? そもそも、「量子マーケティング」とは? 開発にかかわった鈴木一彦や本企画の監修に参加した水口哲也らによるトークセッションを、2015年4月23日(木)に開催!(申し込み・詳細についてはこちらの記事より)

今回『WIRED』が行ったアンケートでは、「これこそが日本のよさだ」と思うキーワードを回答者自身が12個挙げ、あとは、ランダムに出てくる2つのキーワードの関連度(強い関係がある/少し関係がある/関係は薄い/ほぼ無関係)を直感的に選んでいくかたちで進められました。

12項目の全組み合わせなので、全部で66の質問項目を、回答者のみなさまにはお答えいただきましたが、この66の質問項目は回答者ごとにすべて異なるので、いわゆる集計作業は行えません。つまり、従来のマーケティングで活用される統計数理を適用することはできません。そこでScanamindでは、波動方程式という数理を用いて各回答の「固有状態」を解析することで、概念構造を自動的に生成するシステムを採用しています。その結果が下のマップです。

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日本人の回答者(2,570人)が挙げたキーワードと、その相関関係が可視化された「概念構造空間」。

まず12時方向には、技術やテクノロジーやロボットや科学技術といったキーワードが並びました。これは、日本には「ものづくり」としての側面があることを、回答者のみなさんが無意識に思い描いていることを表しています。

次に2時方向には「クールジャパン」と呼ばれている、デザインやクリエイティヴィティ、マンガ、アニメ、ゲームといったキーワードが並んでいます。

4時方向には自然、四季、和食といった、日本独自の「エキゾチック性」とでも呼ぶことができる魅力が並びました。

そして7時方向には、謙虚さや優しさや礼儀や思いやりという言葉が挙がっています。これはいわゆる、「おもてなし」と呼べる概念と捉えられるでしょう。

「ものづくり」「コンテンツ」「エキゾチック性」「おもてなし」という、これまでも日本の強みとされてきたものが引き続きこれからの日本を牽引する価値であることを、アンケートに参加した2,570人は無意識に思い描いていることが、この概念構造図からはわかります。


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在日外国人の回答者(593人)が挙げたキーワードと、その相関関係が可視化された「概念構造空間」。

次に、在日外国人の方々の回答を見てみます。

上のマップを見ると、「ものづくり」「エキゾチック性」「おもてなし」といった点が日本の魅力であることを、日本人同様、外国籍の方々も認識しているようです。

ひとつ面白いのが、「クールジャパン」の位置です。マンガ、アニメ、ゲームといった「クールジャパン」の中核をなす要素は、よく見ると、自然や和食、あるいは温泉といったキーワードと同じ「エキゾチック性」に内包されています。

これはおそらく「クールジャパン」として抽出されている要素が、外国籍の方々には、「自分たちにはない、エトランゼ(異国)としての日本の魅力」という、「ひとつの枠組み」として捉えられているからだとみることができます。本来「クールジャパン」が、海外に対して日本の魅力をアピールするキラーフレーズだったのだとすれば、そのメッセージは国内には浸透したものの、海外にはあまり届かなかった、という結果が現れているのかもしれません。

逆に、「日本人には見えていない日本の魅力や可能性」がどこにあるのかを、外国籍の方々の回答からは伺い知ることができます。

例えば10時方向には、列車、規律、信頼できる、時間厳守といったキーワードが見つかります。新幹線に代表される公共交通機関の安全性や利便性といった、日本人は当たり前だと感じている事柄が、実はとても重要な日本の価値だと外国籍の方々は捉えているようです。

重大な事故をほとんど起こさずに、300㎞近い速度で走る電車を50年間も運用しているシステム、あるいはオーガナイズされた車内清掃のノウハウや車内でのホスピタリティといった側面を含めた全体の設計は、確かにとても日本的といえます。それはまさに「技術立国」と「おもてなし」が組み合わさった結果で、この「技術」と「おもてなし」を融合し、編集していくことで生まれていくサーヴィスやプロダクトやコンテンツこそ、実はこの先、世界が日本に求めているものだといえるのかもしれません。

そう考えると、12時方向にある「ものづくり」と、7時方向にある「おもてなし」の合成ベクトルの位置(10時方向)に、「コンフォテック(Comfort Tech)」、あるいは「ウォームテック(Warm Tech)」とでも呼ぶべき概念を、出現させることができそうです。

例えばウォシュレットというホスピタリティをトイレにもたらしたTOTOや、ドライバーの心地よさを考え、回転数によってエンジンサウンドを変えるサウンドジェネレーターを搭載したLEXUSなどは、新幹線と並び、「テクノロジー」と「おもてなし」を掛け合わせた「コンフォテック(Comfort Tech)」によって、世界の中で特別な地位を手に入れたブランドだといえるかもしれません。

外国籍の方々はもうひとつ、日本人には見えていない価値を教えてくれています。それは2時方向に存在する、「クリーン」という概念です。果たしてここから、どのような日本の未来を導き出すことができるのでしょうか。その答えを含めた今回のアンケートの詳細は、3月10日発売の『WIRED』日本版VOL.15にてお伝えいたします。ぜひご期待ください!

アンケート結果を受けての考察は、Scanamindを運用するクリエイティブブレインズのオフィスにて、クリエイティブブレインズ代表の鈴木一彦(奥)、レゾネア代表/慶應義塾大学大学院KMD特任教授の水口哲也(手前)、WIRED日本版編集長の若林恵(中)によって行われた。

【4/23、開催!】「量子マーケティング」の成果、大報告!

総計3,000人以上の読者に参加いただいたアンケート企画、「クールジャパンの『次』をみんなで考えよう」。「量子数理」を活用したツール「Scanamind(スキャナマインド)」から浮かびあがったキーワードが意味することとは? そもそも、「量子マーケティング」とは? 開発にかかわった鈴木一彦や本企画の監修に参加した水口哲也らによるトークセッションを、2015年4月23日(木)に開催!(申し込み・詳細についてはこちらの記事より)

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