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# 労働問題

パナソニックと闘った「ハケンの男」の壮絶すぎる半生

年越し派遣村の「後」の真実

偽装請負騒動の「渦中の人」へ

リーマン・ショック後に日本企業が「派遣切りラッシュ」へと一斉に走り、派遣切りされた労働者たちが年末、日比谷公園の年越し派遣村に集ったのはいまから約10年前のことである。

今年、46歳となる岡田正雄(仮名)はいま、機械関係の仕事をしている。当時もそうだったように、いまも非正規社員である。

岡田はあのころ、パナソニックのプラズマ・ディスプレイ工場の作業を請け負う会社からパナソニックに送り込まれて、仕事をしていた。ちょうど世間が「偽装請負」騒動で揺れた時期。岡田もその渦中に巻き込まれた。

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きっかけはある日、パナソニックの統括班長から「悪いようにはしないので、別の請負会社に移籍してほしい」と言われたことだった。岡田が実態を調べてみると、いま所属している請負会社の時給は1350円だったのに対し、移籍先の時給は1100円。統括班長の言葉に反し、時給が減額されることが分かった。

労組の支えを得られない非正規労働者にとってこれを拒否することは、仕事を失うことに等しかった。しかし黙って受け入れると、あまりにも自分たちの立場を貶めることになる。

 

ついに岡田は労働法が専門の弁護士に相談した。しかし、これが彼の人生を大きく変えることになってしまう。

「当時は懇意にしていた班長にウソをつかれたことが一番、ショックだった。僕の働き方が違法であることも明らかでした。そこで弁護士と相談の上、05年5月に大阪労働局に告発したんです」