プログラミングに没頭したタンメイが、機械学習に取り憑かれるようになったのは、IBM Watson(IBMが開発した自然言語を理解、学習する質問応答・意思決定支援システム)がアメリカのクイズ番組「ジョパディ!」で、人間に勝利したドキュメンタリーを見たことがきっかけだ。
「それまでは、『コードは書いてもすぐに陳腐化してしまう』『コードは固定化されたもので、複雑な命令に対応することは難しい』と思っていました」
Watsonに魅了されたタンメイは、すぐにWatsonのチュートリアルをまとめた動画をYouTubeにアップし、アプリケーション「Ask Tanmei」を2016年に作った。これは単なる検索エンジンではなく、ドキュメントの中身を理解し答えを返す、ワトソンの自然言語処理機能を使ったアプリだ。
「マーク・アンドリーセン(Netscape創業者)は、『人間には将来的に2つの仕事が残されている。コンピューターが人間に指示する仕事と、人間がコンピューターに指示する仕事だ』と語りました。
でも、人間がコンピューターに指示するには、コンピューターとコミュニケーションが取れることが前提です。それをみんなができるようにしたいんです」
機械学習は、AmazonやNetflixに見られるレコメンデーション機能や、自動運転車に至るまで、我々の身近なサービスからスケールの大きなものにも浸透しつつある。
タンメイは、機械学習がここまで発展した背景には「人間がこれまで起こし続けてきたイノベーションがある」と話す。
1925年以降、世界の総生産は指数関数的に増大した。それはひとえに、人間がイノベーションによって新しい発見を生み続けてきたからだという。過去30年間の世界の総生産は、人類がそれまでの100万年にわたり積み上げてきた生産量を超えてしまった。
なかでもインターネットの登場は大きい。インターネットによって、人間は何かを生産する際に物理的な制約から解放され、人間が持つすべての知識を使うことが可能になった。
タンメイは、なぜイノベーションが必要なのかを考えることが重要と語る。