一般的に「安い」と言われる整備士の給料。本当に安いのでしょうか。

整備士は「国家資格」です。その人数は約33万人。人手は足りず、専門性が高いお仕事です。近年は、車の高度化が日進月歩で進んでおり、DIYでできるレベルの整備・修理が激減しています。

つまり、誰にでもできる仕事ではないのが整備士です。

整備士の一般的な稼ぎ・年収、その実態を、実際に働くメカニックへのヒアリングや統計データの確認を通して調査しました。

整備士の平均年収は低い? 公式統計に見る相場観

自動車整備振興会連合会が整備業界に関する統計データを集計しており「整備士の年収」に関して以下の通り公表されています。(2018年)

  • 専業整備工場 : 354万円(29.5万円/月)
  • 兼業整備工場 : 372万円(31万円/月)
  • ディーラー : 466万円(39万円/月)

ソース:平成30年度自動車分解整備業実態調査結果概要

整備士の給与相場は日本人の平均と大きく変わらない

国税庁の調査によると、日本人の平均年収は441万円とされています。
ですので、世の中で言われるほど、給与は低くない、と思われませんか?

本当にそんなに稼いでる?ちょっとした違和感

さて、如何でしょうか。

実際に現場で働くメカニックの生の声を聞いたり、ネットやTwitterなどで見る金額を見ると「そんなに貰ってないよ!」「もっと安いよ!」というのが実態ではないでしょうか。

例えば「手取り12万円で整備士やめた!」とのTwitterが過去にバズったこともあります(元記事

国産車ディーラー整備士の給料

大手カーメーカーのディーラーで働く整備士から直接ヒアリングした「稼ぎ」に関する「生の声」を纏めてみました。肌感覚と合うと言う方が多いのでは無いでしょうか。

トヨペット(埼玉、愛知)

  • トヨペットはディーラーの中でも給与は良いと言われるが、手取りで18万(3年目、2級整備士)
  • 4年目で手取りが20万を切る。働き方改革以降、残業はゼロ(2級整備士)
  • 10年目の整備士(30歳前後)の先輩の給料を見たら手取りで約20万だった(1級整備士)

ネッツトヨタ(福岡)

  • 月給15万が一般的。手取りになると10万切るケースも多い(2級整備士)
  • 大手ディーラーの工場長になっても給与は30万/月前後(2級整備士)
  • 社内の等級基準が上がることで給与も増えるが、5,000円 /月程度(2級整備士)

ホンダカーズ(山梨)

  • 元整備士で今はフロント(15年目、1級整備士)
  • 手取りで25万円/月前後
  • 年収ベースだとボーナス(賞与)が加算されて400-500万円の間

ホンダカーズ(宮城)

  • 繁忙期(2-3月)で残業50-60時間で手取りが月給18-19万円(2級整備士、6年目)

日産プリンス(横浜)

  • 7名いる整備士の平均月収は手取りで20万円

日産ディーラー(千葉)

  • 初任給は20万くらい、手取りだと13万円(2級整備士)
  • 30代年収:330万円、40代年収:380万円、50代年収:460万円

ダイハツ(山形)

  • 月給20万円弱。ここに「残業代」「歩合(保険やカー用品など)」「賞与」が加算されて年収400万円ほど(1級自動車整備士、自動車検査員、10年目)
  • 整備士資格(1級、2級)、メーカー検定、自動車検査員と資格を取得すると手当がつくが、多くて5,000円/月

国産車ディーラー(北海道)

  • 手取りで計算したら時給850円だった。(2級整備士)
  • 5年目だが残業が無かったら1年目と変わらず手取り15万(2級整備士)

外車正規ディーラー整備士の給料

国産メーカーのディーラーに務める整備士の所得実態が見えたところで、一般的には「給与が高い」と思われがちな輸入車ディーラーの場合はどうでしょうか。

高級ドイツ車正規ディーラー(横浜)

  • 6年目の給与は手取りで18万円と新人と殆ど給与変わらない
  • 70時間残業して手取り25万円

国産車ディーラーも外国車ディーラーも大きくは年収に差が無いことが分かりました。それでは、ディーラーではなくカー用品店の整備士の給与はどうなのでしょうか。生の声を聞いてみました。

オートバックス整備士の給料

  • オートバックス時代の月給は残業代込で手取り15-17万円。残業は3時間/日が平均
  • 生きていけなくなり整備業界を離れた。

トラック整備士の給与

  • 月収は手取りで25万円程度(残業代・休日出勤含む)。残業は1.5時間/日が平均。各週土曜出勤の休日手当1日15,000円。
  • 社宅の手当があったりと、普通車の整備工場よりも手厚いものの、仕事内容がきつく、整備業界から離れた。

営業やフロントに奪われる整備士の収入

んーー、整備士の給与、高いとはとても言えない実態が良くわかりましたね。

勿論、大手ディーラーの正社員整備士の場合、社会保険やボーナス、福利厚生、各種手当といった要素も考慮する必要があるでしょう。とは言え、やはり安い気がします。

感覚論で言っても仕方ないので、統計(数字)を見てみましょう。先に紹介した整備振興課連合会の統計に「整備要員1人当り年間整備売上高」との数字が公表されています。

整備士1人当たりの年間整備売上(2018)

  • 専業整備工場 : 965万円/年
  • 兼業整備工場 : 1,070万円/年
  • ディーラー : 2,264万円/年

ソース:平成30年度自動車分解整備業実態調査結果概要

びっくりではないですか? メカニック1人でこんなに稼いでいるのです!もちろん、売上から経費や原価が引かれるわけですが、それにしても整備士の平均所得は低いですね。

一体稼いだお金はどこに消えているのでしょうか。

高給取りの「営業」と「フロント」

ディーラーやカー用品店には、お客様と直接対峙する「営業」や「フロント」の職種が存在します。お客様の接客をし「整備・修理を売る」のも仕事です。そんな営業やフロントの年収は高給です。

整備・修理の売上は「営業」「フロント」のノルマ達成・歩合に加算されることが一般的です。一方で、メカニックの歩合の取り分は「無い」か「少ない」のが通常です。

これが「整備士」と「営業・フロント」の間に給料格差が出る大きな理由でしょう。

整備売上を生み出しているのは整備士

ここでポイントとなるのが、整備売上は本当に「営業」や「フロント」の努力で積み上がったお金か?ですね。

整備士経験のある方ならお分かりの通り、実際には車の状態を確認し「整備士」が正しい見積もりや必要な整備を提示する役割を担います。つまり、その売上に貢献しているのは、実質的には整備士なのです。

つまり、整備士の技術と知見で稼いだ整備売上の多くが、「営業」や「フロント」のお給料に消えているのが実態と言えるでしょう。

ソース:平成30年度自動車分解整備業実態調査結果概要

大手ディーラーは10年目以降で年収が上がる

個別に事情は異なりますが、一般的には10年目以降に給料が増える様です。これは、工場長に昇格したり、役職がついたり、あるいは10年目を節目に現場から「フロント」や「営業」に転出する為です。

整備士は職人仕事ですから、メカニックによって腕に大きく差が出ます。残念ながらその差が給与に反映されず、デキるメカニックもやる気ないメカニックも年収は横並び。

「順番待ち」に耐えきれず、辞めてしまう整備士が多いことが実態です。

整備士が収入を上げるために

整備士が収入を上げるためには

  1. 同業種での転職
  2. 異業種への転職
  3. 独立
  4. 副業

が挙げられます。

詳細は【整備士の転職】やりがいと年収アップの実現
にまとめましたので、参考にしてみてください。