みんな元気~? ローラだよ~。
暮れの元気なご挨拶。年末恒例百合マンガ紹介記事も今年で7回目です。
過去の記事は以下から。
この記事では「2019年内に第1巻が発売された百合マンガ作品(完全版・新装版・同人誌・翻訳作品を除く)」の中から筆者の個人的な好みや勧めやすさからおすすめの百合マンガを紹介しています。
また、今年からは趣向を変えて、これまでのランキング形式ではなく「シチュエーション別」におすすめの百合マンガを数作紹介していきます(理由は後述)。
今年も多くの傑作百合マンガが私達の上を通り過ぎていきました。10年代の終わりを百合マンガと共に過ごしましょう(敬称略)。
学生百合編
今日、小柴葵に会えたら。/原作:竹岡葉月 漫画:フライ
【あらすじ】周囲からの評価が大事な「養殖女子」成田佐穂子が気になるのは、周りを気にせず素の自分を出せる「天然女子」小柴葵。着飾らない姿がキラキラして見える葵と仲良くなりたい一心で、佐穂子がとった行動は…キスだった――。(公式より)
「政宗くんのリベンジ」で知られる竹岡葉月先生が原作・作画に昨年の百合姫の表紙でもおなじみだった人気イラストレーターのフライ先生という豪華なコンビで贈る青春百合は、圧倒的画力で描かれる愛くるしいキャラクター達の魅力を堪能しながらも、百合に欠かせぬ巨大感情も美味しくいただける珠玉の作品に仕上がっています。
ささやくように恋を唄う/竹嶋えく
【あらすじ】高校入学初日、新入生のひまりは新入生歓迎会で演奏したバンドのボーカル・依に、ひとめぼれという名の憧れを抱く。校舎で出逢った依にそのことを伝えるひまりだったが、まっすぐに気持ちを伝える彼女に、依はひとめぼれという名の恋心を抱いてしまい……お互い好きだけど、どこか微妙にすれ違う、ひとめぼれから始まる恋物語。(公式より)
珠玉の短編集「君に好きっていわせたい」の記憶も新しい竹嶋えく先生の新連載は、すでに百合オタクの間で抜群の存在感を放つ良作バンド百合。すれ違いが生み出すドキドキと悶えるようないじらしさの描写は百合絶品。短編で証明済みの才能が長編でも遺憾なく発揮されています。
飛野さんのバカ/筋肉太郎
【あらすじ】「授業に出てくれるなら、いいですよ……」
お人よしなクラス委員長・小熊(こぐま)ちゃんが、授業に出てこない不良クラスメイト・飛野(ひの)さんから、「授業に出るかわりに」と提示される要求はちょっと過激で……! 真面目な優等生が、ドSなクール女子の言葉責めに××しちゃう……!? ちょっぴりエッチな新感覚百合コメディ!(公式より)
くそっ、じれったい!ちょっといやらしい雰囲気に……もうなってた本作は、筋肉☆太郎先生の可愛らしい作風の中にマニアックでフェティッシュなオーラが漂う逸品のコメディ。えっちなだけではなく徐々に距離を詰めていく二人の関係性にも目が離せない快作となっています。
ゆりでなる♡えすぽわ~る/なおいまい
【あらすじ】わたくしの(心の)余命はあと1年! それまでに作り上げるの…最高の「百合スケッチブック」を! 高校卒業と共に政略結婚が決まっている心。そんな結婚など「死」と同様。死後の癒しのためにあらゆる百合を妄想する…これは女の子が好きな女の子のために頑張るお話ですv(公式より)
なおいまい先生初の商業連載となった本作は、コメディの様相を呈しながらも読者の意表を突く構成と展開の連続で、高い求心力を持つ技巧派な作品となっています。妄想と巨大感情、キャラクターの妙、全てが噛み合って生まれた百合マンガ界の飛び道具は百合オタクとして決して読み逃してはなりません。
ルミナス=ブルー/岩見樹代子
【あらすじ】"今"の二人の写真を撮りたい! 写真が大好きな高校生・光は、"好きなもの"を撮ると周りが見えなくなることが悩みの女の子。そんな光は転校先で、ギャル風の雨音と、読モをやっている寧々という絵になる二人組と出会う。写真コンテストで受賞を目指す光は、「二人の写真を撮りたい」と言い、彼女たちの関係性を知らずに触れていくが──。(公式より)
短編集「透明な薄い水色に」でも高い評価を得た岩見樹代子先生初の連載作は、開始当初から熱狂的な支持を得ました。巧みな心理描写も含め作品の持つ総合的な漫画力の高さ、なにより純粋に百合として良質な作品があることも手伝い、一時は打ち切り寸前の報もあったものの、見事な着地を以てしっかりと完結してくれました。次の連載にも大きな期待を寄せましょう。
その他のおすすめ
社会人百合編
付き合ってあげてもいいかな/たみふる
【あらすじ】私に、彼女ができました。
超モテるのに「好きな人と両想いになったことがない」パッと見いい女のみわ。
大学入学を機に軽音サークルに入り、絶対友達にならないタイプ!と思ったお調子者の冴子と急接近。なんだかちょっと新しい扉が開いちゃう感じ…?
「せっかくだからあたしたち、付き合ってみない?」
軽音サークルの仲間たちと織りなす、ホンネの女子大生ガールズラブ!!(公式より)
今年の百合業界をかっさらった社会人百合の超新星。たみふる先生の最新連載は、成熟と未熟の間で揺れる女子大生カップルの物語。
女性同士の恋愛というテーマにも踏み込んだうえで、カップルとしての悩みや気持ちのすれ違いなど、ひとつの恋愛マンガとしても高い完成度で描かれており、百合マンガを読んだことがない、という人でもしっかりと楽しめる内容になっています。
あとになって思ったのですが大学生同士の百合ってもしかして社会人百合ではなかった……?
憎らしいほど愛してる/ユニ
【あらすじ】いくら二人で秘密を共有しても、あなたは夫のもとへ帰っていく―。
女性管理職として活躍する容姿端麗な上司に恋をするも、相手は既婚者のため密かに想うだけの日々を過ごしていた。
ある日、酔った勢いで迫ってみたら予想外の展開に…? 上司と部下、禁断の関係が始まる!(公式より)
創作百合同人界でカリスマ的な人気を誇るユニ先生。今名義初の商業単行本はアダルティックな描写で描かれる上司×部下の不倫百合。
ディテールを追求したリアルな部分描写で丁寧に描かれる大人の恋模様。焦りや苛立ち、虚しさや愛しさが目まぐるしく行き交って、胸を打つ鮮やかなラストまで一気読み必至の濃厚濃密な一作です。
ユニ先生は現在、マンガJamやコミックシーモアなどで社会人百合マンガ『ヒトゴトですから!』を連載中。こちらの展開からも目が離せません。
定時であがれたら/犬井あゆ
【あらすじ】「実るかわからない思いでも見届けてみたい」 別の部署で働く水城さんと、ふとしたきっかけでご飯を食べに行く仲になった湯川さん。連絡はいつもコートのポケットを介した付箋メモ交換だった。「暖かくなったら、もう終わっちゃうのかな……」ほんわか湯川さんとサバサバ美女・水城さんのふわ甘な恋の行方は……!?胸がキュッとなるオトナ百合。(公式より)
コミック百合姫で同性の恋人との同棲生活を描いたコミックコラム連載も話題の犬井あゆ先生、初の商業単行本はキャラクターのドキドキが読者の心臓にも伝わってきそうなオフィスラブ。優しいタッチで描かれる大人の恋愛は、どこか初恋の初々しさも残しながらしっかりと社会人百合の味わいを噛みしめることができます。今後の活躍にも期待したいですね。
バリキャリと新卒/えすえす
【あらすじ】レズビアンヘルスで嬢と客として惹かれ合っていた森野と新納。就職を機にヘルスを辞めた森野だったが、就職先の指導係は、ヘルスのお得意様・新納だった…!? この二人、上司と部下の関係だけでは終われない――。(公式より)
期待の新星・えすえす先生初の商業単行本は意表を突く設定から始まるオフィスラブ。ユニークな描写の中にも社会人、特に女性が衝突しやすい理不尽さを切り取る社会派な側面も見もの。もちろん、一作の社会人百合としてしっかりとしたクオリティを誇っており、オススメの一冊となっています。
おとなになっても/志村貴子
【あらすじ】小学校教師をしている綾乃は、行きつけのバーで声をかけられる。二人は初対面ながら意気投合し、そのまま朱里の部屋へ。キスをして再会を約束する。しかし綾乃には「夫」がいて――(公式より)。
百合マンガ界における不滅の金字塔『青い花』でも知られる志村貴子先生。いよいよ社会人百合に本格参戦と聞いて百合オタク達が黙っていられるわけがありません。
本作も先生特有の空気感の中に大人のビターなときめきが散りばめられ、ままならない状況にもがく恋愛感情の交差が巧みな遅筆で描かれています。
これぞ熟練。職人技。百合マンガ界の人間国宝が描く大人の恋模様を堪能してください。
その他オススメ
年の差百合編
いとしこいし/竹宮ジン
【あらすじ】雛と弥生は年の差カップル。女子高生の雛は、弥生の大人な魅力に惹きつけられていて、社会人である弥生は、そんな初々しい雛にときめきながら、二人は真剣なおつき合いをしている。キスすらまだな二人の関係は、この愛しくて恋しい日々の中で、どのように進んでいくのだろうか……(公式より)
本記事の大常連である竹宮ジン先生の新作は。大人の女性を描かせても初々しい少女を描かせても一流の著者による年の差百合は、キャラクターに葛藤や悩みを抱かせつつも読者に濃密な甘酸っぱさを感じさせてくれる愛くるしさ120%の物語となっています。我が家のように安心できる百合を読みたい方は是非。
神絵師JKとOL腐女子/さと
【あらすじ】美人だが恋人ナシ。残念すぎる腐女子OLの相沢 。ある日、彼女が“神”と崇める絵師・ミスミが同人誌イベントに出ることを知り、会場へと向かう。しかし、お目当てのブースにいたのはなんとも可愛らしい女子高生だった――!?
今年アニメ映画化された不朽の名作「フラグタイム」で知られるさと先生が百合にカムバック!女子二人の不器用さが交錯するコメディタッチな本作を読んでいる間、読者はニコニコとニヤニヤの2つの笑いを堪能していることでしょう。さと先生にはもっと百合の畑を豊作にしてもらいたいものです。
不揃いの連理/みかん氏
【あらすじ】振られても仕事。OL・田中伊織は失恋を癒やすため、行きつけのお店でやけ酒中。そして、酔った勢いで見た目がちょっと怖い顔見知りの店員・船頭 南と寝てしまう。失敗したと悔やむ伊織。でも南から「忘れたくない」と告げられて…?だらしないけど世話やきな伊織と、優しいけど色々と事情が複雑な南。年齢も事情も環境もまったく違う2人に訪れた過ちスタートの女の子同士の恋愛模様。(公式より)
人気絵師のみかん氏先生がpixivやSNSに投稿した人気の百合作品がついに単行本化。うなく行かない恋愛を重ねる社会人とワケアリの女の子の恋愛は、ときに穏やかに、ときにヒリヒリした空気を漂わせながらも、読者に幸せな百合経験を与えてくれます。サイドキャラの百合模様からも目が離せない、管理人の個人的MVPな本作を一読あれ。
春とみどり/深海紺
【あらすじ】 好きだった親友の娘を引きとりました――。人づきあいが苦手で、どこにいても居場所がないと感じているみどり(31)は、中学時代好きだった親友・つぐみの葬儀で、つぐみと瓜二つな彼女の娘・春子(14)と出会う。……居場所がないみどりと居場所をなくした春子、そんなふたりが織り成すセンシティブ同居譚。(公式より)
成人女性が年頃の少女を引き取る同棲百合といえばヤマシタトモコ先生の「違国物語」も記憶に新しいところですが、実力派・深海紺先生による本作はまた異なるアプローチを仕掛け、こちらもまた読み心地の良い佳作となっています。胸の中にじわじわと、少しの寂しさと暖かさが染み渡ってくる優しい作品です。
痩せたいさんと失恋ちゃん/原作:安田剛助 漫画:文尾文
【あらすじ】凛子の初恋は中学生のとき。相手は家庭教師の女子大生・詩織。でも詩織は大学卒業後すぐ結婚すると決まっていた。凛子の初恋は想いを告げる事なく終わってしまう。それから2年後、高校生になった凛子はすっかり体型が変わり、大きくなった詩織と再会する。太ったことが原因で詩織の結婚が破談になり、今もひとりだと知ったとき、抑えていた凛子の想いが溢れ出して――。叶わない想いと知りながら、詩織の側にいるため彼女のダイエットに協力することになった凛子。詩織の体型と、凛子の恋の行方は…?(公式より)
今年無事に大団円を迎えた「草薙先生は試されている。」の安田剛助先生が原作を務め、「私は君を泣かせたい」で注目を集めた文尾文先生が作画を担当したとなれば、興奮しないほうがモグリ。心理描写や萌えさせに定評のある安田先生のシナリオを文尾先生の愛らしい作風と掛け合わせたケミストリーは、時折胸をキュッとさせる切なさと愛おしさの波状攻撃で読者を魅了します。
その他おすすめ
百合えっち編
イブのおくすり/FLOWERCHILD
百合アンソロジー隆盛期と言っていいほど、大量の百合アンソロジーが刊行された2019年。最大の目玉といえばやはり、重版に重版も重ねて続編も刊行sれた「レズ風俗アンソロジー」でしょう。この他にもとにかくえっちなシーンがてんこもりの「いちゃらぶしかない百合アンソロジー」や「初夜百合アンソロジー」など、アダルティックな方面に於いても百合アンソロジーが活気づいた一年でした。ある種この現象が一番、百合人気を象徴する部分であったと思います。
百合えっち文体練習/星井七億
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その他オススメ
理想と恋/日野雄飛
BLをメインに活動している作家が百合を描いたときの傑作率は高いという法則は今回も実証されました。個人的には今年刊行された百合短編集では間違いなくトップの本作。運送業の女子と押しアイドルの百合から舞台をテーマにした中編など、たしかな実力を感じるこの一冊はどうしても多くの人に読んでいただきたいのです。
ヴァンピアーズ/アキリ
異種百合マンガとして話題を呼んだ「ストレッチ」でもおなじみのアキリ先生。期待の新作は少女を描かせたらこだわりが強いアキリ先生の実力が充分に奮われた、少し危なくてどこか笑える、ちょっとえっちな吸血鬼百合。
ヒーローさんと元女幹部さん/そめちめ
変身ヒーローの女子に恋をしてしまった悪の組織の元女幹部というユニークな設定が楽しい、新星・そめちめ先生による百合ラブコメディ。萌えと笑いがハイブリッドに入り混じった、万人に勧められる作品となっています。
海猫荘Days/コダマナオコ
「捏造トラップ」で一躍人気百合作家となったコダマナオコ先生。新連載は美しい土地を舞台にタイプの違う二人の女子をめぐる物語。過去に縛られ現在に向き合うキャラクター達。著者ならではの筆致で鮮やかな人間模様が描かれています。
ハロー、メランコリック!/大沢やよい
社会人百合の超傑作「2DK、Gペン、目覚まし時計。」で一気にその名を知らしめた大沢やよい先生の新作は軽音楽をテーマに、コミュ障女子と個性豊かな女子と囲んだ青春百合。尻上がりに面白くなってきた物語の今後にも注目です。
当て馬カノジョ/鈴菌カリオ
今年度ギャグ百合マンガ枠では間違いなく第1位。好きな先輩に告白したものの、その先輩が好きな女子を自分に振り向かせるための当て馬としての役割を担わされた主人公の逆襲と暴走を描いた本作は、千鳥もびっくりのクセの強さ。打ち切りが決まったことが残念ですが、激しく燃え上がるロウソクのような本作の破壊力を今のうちに。
ここで紹介した作品の他にも、ゆあま先生「イケメンすぎです紫葵先パイ!」、結野ちり先生「スカーレット」、岩下継先生「仕事の後は恋しよう」、はちこ先生「百合もよう~咲宮四姉妹の恋~」、もちオーレ先生「レンタルショップでお姉さんをレンタルする話」など、今年の百合も豊作。是非チェックしてみてください。
今年は「コミック百合姫」で連載しているコラムが紙面リニューアルの波を超えて連載継続が決まったこと、yomucoで百合グラフィックノベルの連載がスタートしたこと(連載は終了済み)、「週刊文春WOMAN」の百合マンガ特集でインタビューを受けたこと、百合同人誌の売上が自身の最高記録に達したことなど、百合活的には色々と忙しい一年でした。悔いと言えば新元号を「百合」にできなかったことくらいです。
なぜ今回からランキング形式でなくなったのかというと、この記事を最初に書き始めた当時は百合マンガの市場がまだ小さく刊行点数も少なめで、市場の拡充をするためにインパクトの強い書き方としてランキング形式を取り入れたものの、現在では市場がとても大きくなってその必要がなくなったこと。
この数年で百合マンガの刊行点数が爆発的に多くなり、私自身が時間的体力的予算的にも補足しきれなくなってしまい、ランキングの精度が落ちてしまったこと。百合作品ににおいて信頼性のあるキュレーターが増えたことにより、私の主観で勝手に決めてきた格付けに意味がなくなってきたことなどの理由があげられます。
なんにせよこれからも肩の力を抜いて百合マンガを紹介していくので、20年代もどうぞよろしく。
いや~、百合って本当にいいものですね。また来年。