明石家さんま「老害化する笑いの天才」の限界

「嫌いな芸人」ランキングでついに1位に

要するに、さんまには教養がないので、相手の話を同じレベルできちんと受け止めたうえで、それに対して何か返すということができない。だから、話の中身ではなく、話し方や態度や言葉尻などの細部を捉えて、自分の土俵に持ち込んでそれを笑いにする。もちろんそれ自体がさんまの芸人としての卓越した技術なのだが、それが人によっては「話を聞いていない」という不誠実な態度に見えるということだろう。

これに関しては、今に始まったことではなく、さんまは若手の頃から一貫してこのようなトークスタイルを貫いている。さんまは、あらゆる事象を笑いを取るための素材として平等に扱う。目の前にいる相手が話していることも、それ自体が重要なのではなく、それで笑いが取れるかどうかだけが重要だと考えている。笑いの職人としてのさんまの高すぎるプロ意識が、ここでは裏目に出ている。

さんまの何でも笑いに変える話術はすばらしいものであり、彼自身が何も持たない若手の頃にはそれがとくに魅力的に見えていた。だが、さんまは現在64歳である。共演するほとんどのタレントが自分より年下だ。年配の人間が、一回りも二回りも年下の相手に対して、一切聞く耳を持たないという頑固な態度を取っていれば、印象が悪く見えるのも無理はない。

ただ、テレビタレントとしてプロ中のプロであるさんま自身は、ここで述べたようなことは百も承知だろう。これまでにも、時代の変化に合わせて自分の見せ方を微調整したり、新しいものを貪欲に取り入れてきたからこそ、いつまでも古びないで最前線に立っていられるのだ。しかし、そんな「超人」にも限界はある。

さんま本人も「限界」を自覚か

さんま自身も、近いうちに逆風が来ることを見越していたような節もある。というのも、さんまは60歳になる前の一時期に「60歳で引退したい」とほのめかしていたことがあったのだ。結局、前言を撤回して、それ以降も芸能活動を続けることになった。実はさんまはその時点で「このまま続けていれば限界が来る」ということを何となく悟っていたのかもしれない。

とはいえ、いまだに「好きな芸人」部門で2位をキープしていて、冠番組を多数抱えているさんまの勢いは、すぐに衰えるようなものではない。本稿で述べたようなことすべてが、さんまというお笑い界の巨人の前には言いがかりに近い些末な指摘にすぎないのかもしれない。

ただ、「お笑い怪獣」の異名を取るさんまにも、いつか確実に終わりの日は来るのだ。さんまが「嫌いな芸人」部門で1位になったという事実は、後から振り返ってみれば彼にとっての「終わりの始まり」になるのかもしれない。

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  • 名無し13bf7da736bf4
    この人は多くの芸能人を助けている。一般人にはあまり支持されなくとも、芸能界ではかなり感謝されている人物のはずだ。恋のキューピッドになったり、仕事を紹介したり。全然関係のなさそうな芸能人から、この人の名が急に出ることがあり、かなり厚い人望を持つのは否めない。テレビではあんなにニコニコ人をいじりながら、裏ではかなり信用の厚い芸能人助けをしているのだ。だから大物感が消えなかったし、だから、つまらなくても、活躍し続けたのだろう。
    この人の魅力は我々一般人に向けられたお笑いではないかもしれないが、飛び抜けた広い心と、芸能人とのネットワークを、我々の知らないところでも細やかに大事にしているところではないだろうか。
    up709
    down171
    2019/9/8 06:31
  • といざヤす9fb97ee2a27b
    本筋には関係ないと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが・・・
    遠田さんの過去の記事を見ると、取り上げている芸能界の人物に「敬称」をつけるときと、つけないときがあります。

    その基準が分からないので、読んでいて「あれれ?」と思うことがありますね。
    up336
    down60
    2019/9/8 05:54
  • devo7af7a11d54f7
    こういったプロ?の評論すら、インパクトを重視してかもしれないが「老害」という言葉を容易く使うことに驚いた。たとえばさんまが、まったく人気もなく視聴率も取れず、嫌われるばかりなのに忖度で今なおテレビの中心に居座り他の芸人が困ってるというなら「老害」と呼ぶのも良いだろう。だが今だに人気はあり視聴率もとり、後輩芸人からも慕われている大御所を、嫌いな視聴者が増えたからと「老害化」呼ばわりはどうなのか。お年寄りをただお年寄りだというだけで「老害」と呼ぶ、一部の馬鹿な若者と同レベルのボキャブラリーセンスの人間が作家、評論家を名乗れるのだなあと感心した。どうせなら、さんまは落ち目!ではなく、さんまの人気を越えてゆく若手にスポットをあて、彼らの今後を期待すればよいのに。
    up307
    down33
    2019/9/8 17:57
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2020大予測<br>編集部から(1)

大量の校正用ゲラを読み終えた帰りの電車。見渡すと、やっぱりスマホですね。ゲームの類いか、40代、50代も皆必死の形相です。特集の作家・髙村薫さんの言葉のように、私も誰かの陰謀だと思うことにしました。目を覚ましてほしい、そのためになる一冊です。(堀川)