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Taro Yamamoto’s Ambition

「日本一有名な無職」の野望

By 畠山理仁2019年12月28日

北海道を皮切りにれいわ新選組の山本太郎代表の全国ツアーがはじまった。無名の選挙候補者たちの奮闘に光を当てた『黙殺』の著者、畠山理仁が取材を通して見た山本太郎を語る。

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「政権を狙う」「総理大臣を目指す」と公言する「れいわ新選組」代表の山本太郎は、9月後半の北海道を皮切りに遊説を開始。

「3年から5年のうちに、時空の歪みを利用して総理大臣になりたい。それまで日本という国があったら、の話ですが(笑)」

これは今年7月に行われた参議院議員選挙の最中、れいわ新選組(以下、れいわ)の山本太郎代表が私に言った言葉だ。

この参院選に比例区から出馬した山本は、全比例候補者155人中、最多となる991,756票の個人名票を得た。党としての比例得票総数は228万票あまり。得票率は4.55%を記録し、念願の「政党要件(※注)」を獲得した。

しかし、れいわの獲得議席は2つ。優先的に当選する「特定枠」の重度身体障害者・舩後靖彦と木村英子を国会に押し上げたものの、3議席目を狙った山本自身は落選した。

それでも私は「山本太郎は負けていない」と考える。理由は単純明快。4月に新党を立ち上げたばかりの山本にとって、「政党要件」は確実に総理へ近づく一歩になったからだ。

もちろん、自身が落選し、日本一有名な無職になったことは誤算だったろう。しかし、本気で総理を目指すなら、次の総選挙で当選し、衆議院議員になるのが王道だ。その準備のためにも国会に縛られず、自由に動ける立場を得たことはプラスとも取れる。しかも、日本に9つしかない公党の代表として、大きな発言力も確保した。「国会の野良犬」を自称する山本にとって、これほどハマる立場はない。

政党要件の有無は、選挙の結果に大きな影響をもたらす。参院選前のれいわは「諸派」扱いの政治団体だったため、テレビや新聞は選挙中にれいわの動きを報じなかった。まるで「放送禁止物体」であるかのように─。

政党政治が基本の日本において、諸派のまま「時空の歪み」を生み出すことは、ほぼ不可能だ。その意味で冒頭の山本の発言は、根拠なく広げた大風呂敷の域を出ていなかった。

しかし、れいわが政党要件を獲得したことで状況は変わった。資金面では年間億単位の政党交付金が入り、政見放送も行なえる。既存メディアも無視できない。これまでインターネットに頼らざるをえなかった情報発信が、次回は大幅に強化される。山本が言う「時空の歪み」は、にわかに現実味を帯びてきた。

山本の選挙戦略が成功した理由は、ネットでの盛り上がりを過信しなかったことにある。ネットはあくまでも有権者を街に連れ出す手段。実際の勝負は地道な草の根運動だと考え、有権者をいかに巻き込むかに心を砕いた。

まずは4月の結党会見で「候補者を何人擁立するかは皆様の寄付額で決めます」と全国に呼びかけた。ゲームの行方を有権者に委ねるやり方は「AKB総選挙」にも似ている。誰もが当事者として参加でき、経過を楽しみながら結果にも関与できる仕組みだ。

街頭演説会場には必ずボランティアの登録窓口と寄付窓口を設置した。政治への不満は持ちつつも、政治との接点を見つけられなかった有権者たちが列をなした。寄付の最低金額は10円。100万円を超える高額寄付者は少なかったが、寄付者は3万3千人を超え、参院選投票日には総額4億円を突破した。

れいわのこうした戦略には、つねに優秀なブレーンの存在が囁かれる。しかし、私がその点をたずねると、山本は笑って否定した。

「そんな人がいたら、ぜひ紹介してほしい! 候補者も全部自分で口説いています(笑)」

山本は今も全国で「街頭記者会見」を開き、聴衆との間で質疑応答を繰り返す。そして、必ず、「あなたの力が必要です。あなたの力、貸してくれませんか?」と呼びかける。

街頭の熱狂を見て、「山本はヒトラーのような独裁者になるのでは?」と危惧する声もあった。そう指摘すると、彼は真顔で答えた。

「山本太郎に対する熱狂なんてないですよ。ヒトラーとも明らかに考え方が違う。誰もが死にたくなる世の中から、みんなが生きていたくなる世の中に変えたい。そんな、れいわの政策に対する熱狂だと思っています」

山本は9月12日、共産党の志位和夫幹部会委員長と面談し、野党共闘に向けた話し合いのテーブルについた。翌13日には無所属の馬淵澄夫衆院議員率いる「一丸の会」で講演し、連携を図る意向を示した。国民民主党の玉木雄一郎代表も山本との会談に意欲を示している。

しかし、野党共闘の鍵となる立憲民主党との間にはまだ距離がある。私は10月1日、新宿での街頭記者会見を終えた山本に聞いた。立民へのアプローチはどうするのか、と。

「私たちからアプローチはなかなかできない。野党第一党がイニシアチブを取りながら、というのが一番なのかなと思っています。私たちは今、外堀から埋めようとしているので」

そう言うと、山本は自身の言葉に爆笑した。

「普通、言う? そういうこと(笑)」

山本太郎が変えるのではない。民主主義の主人公は、あくまでも「あなた」。時空の歪みが生まれるかどうかは、有権者次第である。

※注 「国会議員5人以上」もしくは「直近の衆院選または参院選で、選挙区か比例代表の得票率が2%以上」

Michiyoshi Hatakeyama

1973年、愛知県生まれ。早稲田大学第一文学部在学中の1993年より雑誌を中心に取材・執筆活動を開始。無名の選挙候補者たちの奮闘に光を当てた2017年の著書『黙殺 報じられない"無頼系独立候補"たちの戦い』(集英社)で開高健ノンフィクション賞を受賞した。

Words 畠山理仁 Michiyoshi Hatakeyama

Natsuki Sakai / アフロ

政治家

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※2014年3月31日以前更新記事内の掲載商品価格は、消費税5%時の税込価格、2014年4月1日更新記事内の掲載商品価格は、消費税抜きの本体価格となります

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