前編では「サイクロプス大阪所属のプロゲーマーになって」というサブタイトルで、おもに最近のプロとしての活動についてお話を聞かせていただきました。今回はさらにどぐら選手のパーソナリティーに迫る過去の学生時代のお話や、最近の私生活のお話についても語っていただきました。最後まで、どうぞお楽しみください。
――そもそもいつごろからゲームセンターに通い始めたんですか。
12~13歳からですね。行きはじめのころはちょっと寄るぐらいだったんですけど、「ゲーム面白すぎるぞ」って気づいてからは、学校終わってから終電近くまでいました。当時は昼ごはん代として500円もらったとすると、細長くて7~8本入った180円のチョコスティックパンで昼をしのいで、浮いた分をゲームに入れるっていうのが学生時代のテンプレートですね。
――では、学生時代はひたすらゲームに打ち込んでいたのですか。
それなりには普通に遊んだりもしてましたよ。だけど高校のときに付き合ってた彼女とは、ゲームが原因で別れましたね。付き合う前に「おれ予想以上にゲームやるけど怒らんといてな」とか言ったんですけど、「大丈夫、私もゲーム好きやで」とか言ってきて。その時点でもうやばいんですけどね、たぶん分かってないんですよ、こっちの言ってること。それで金曜日ゲームしました、土曜日も当然ゲームしました、じゃあ日曜に遊ぼうって言われるじゃないですか。「いや、ちょっと日曜もゲームしたい……」って言ったら、「えっ?金土ゲームやってるやん」って言われるんですよ。「違うねん、ゲームは一生やりたいねん」ってなったときに当然ケンカになるじゃないですか。そのときに「ゲームと私どっちが大事なの?」って絶対言われるんですよね。
今なら歳もとったし「ゲームと自分なんて比べるもんちゃうで」とか言えますけど、そのときは「いや……ゲームやりたい」ってなって。でもね、野球だったら女はこれ絶対言わないんですよ、おかしいでしょ?甲子園目指して頑張ってる球児に対して「野球と私どっちが大事なの?」なんて、相当空気読めないじゃないですか。むしろ「こんなに野球に打ち込んでる彼を止めない私分かってる」みたいに酔ってくれるんですけど、ゲームだとその理解が得られない。「コイツ一生ゲームやってるやんけ、いつ遊ぶねん」としか思わないんですよね。それで学んで、付き合ってもその子に時間とってあげられないからずっとゲームやってればいいかな、っていう思考になりましたね。
――昔の彼女の話が出ましたが、今もお付き合いしている女性がいると伺っています。
そうですね、付き合って6年ぐらいになります。なんで続いてるかっていうと、彼女下手したら僕よりゲームやってるんですよ。しかもお互いゲームに関して干渉はしないんですよね、自分がされたら嫌っていうのが分かってるから。それでずっときてるので、ほっといたら別れないんじゃないですか、たぶん。彼女も昔は格闘ゲームをやってましたけど、今はRPGとか音ゲーとかですね。最近は『ポケモンGO』とか、とにかくいろいろやってますね。僕は『ダークソウル』がすごい好きなので格闘ゲームに煮詰まるとたまにやるんですけど、いっしょにゲームやると絶対喧嘩になるので、そこは分けてます。
画像 どぐら選手提供
――じゃあ、デートは普通のカップルと同じような感じですか。
これはたぶん僕がダメなんですけど、デートらしいデートはめったにしないんですよね。でもたまに友達もまじえてショッピングモールとか動物園とかは行くんですよ。この歳になって動物園めっちゃ楽しくなってきましたね。たぶん僕若いとき、なんかすごく斜に構えてたと思うんです。でもこの歳になったらそういうのはもう一切ないから、「オオカミかっこいい」とか「トラかっこよすぎる」とか、純粋に目の前のことを受け止められるというか。
それといっしょなのかもしれないんですけど、若いときはお寺に行っても良さが分からなかったけど、この歳になると「寺いいな」って思うようになりましたね。景色もきれいだし、情緒とか風情があるじゃないですか。マイナスイオンも出てそうとか、そういうのをいいなって感じられるようになったんです。旅行先として最初に行きたいなって思うところも“温泉”なんですよ。おっさんになってきてますね、だんだん(笑)。
――そろそろ結婚とかはどうですか。既婚のプロゲーマーも格闘ゲームでは増えてきていますよね。
二人とも結婚にあまり意味を感じてはいないんですけど、どうせこのままずっといっしょにいるわけですし、なんかの区切りでするかもなぐらい。子供できたら、とかですかね。むしろ周りの友達とかで離婚した人もけっこう多いので正直結婚にそんなに良いイメージはないんですけど、それは本人たち次第でなんとでもなるかなとは思います。
――最近eスポーツに興味を持った人になにか伝えたいことがあるそうですね。
日本で格闘ゲームがどんな感じで成り立ったかとか、どんなカルチャーとして今まで続いてきたのかっていうのを知っておいてもらいたいな、って。今は格闘ゲームも“eスポーツ”の仲間みたいに言われていますけど、僕らが子供のころの格闘ゲームって場末のゲーセンとか、駄菓子屋にあった筐体とかだったんですよ。僕は地元の奈良の「キャノンショット」っていうゲーセンに通ってたんですけど、昔は親とかお兄ちゃんに「ガラ悪いから行くな」って言われましたもん。昔はゲーセンって不良のたまり場だったんですよね。
僕は中学生になってから行ったんですけど、普通のケンカとかも10回ぐらい見て。そういう奴らがいっぱいいるようなところで細々とやるようなゲームだったんですよね。だからすごいニッチな文化だったんですけど、オタクとヤンキーが会話する場所でもあったんですよ。本当にゲームが好きなだけの子と、刺青入れてる兄ちゃんが仲良くしゃべってるんですよ。そういうのを見て、共通の趣味を持っていると人間って分け隔てなく仲良くなるんだなって思いましたね。
――今や格闘ゲームも“eスポーツ”と呼ばれて、プロゲーマーもたくさん誕生しましたよね。
5~6年前までは考えられなかったんですよね。だからほとんどの格闘ゲーマーは戸惑ってると思うんですよ、「eスポーツって何?」みたいな感じで。正直僕もついていけているほうではあると思うんですけど、こんなに早くこんな広がり方をするとはって感じなので、昔からずっとゲーセンでやってた人たちは「今って格闘ゲームでプロがいるの?」っていうレベルだと思います。でも、そういう人たちをないがしろにしないでほしいな、とは思うんですよね。そういう人たちがずっとやってきて、僕らもやってという感じで受け継がれてきたと思うので。近い将来eスポーツ当たり前みたいなプレイヤーが現れるとしても、昔はヤンキーとケンカしながら薄暗いゲーセンで50円入れてやる文化だったということは覚えておいてほしいですね、そこに原点があるので。
今って海外大会とかで試合終わったら握手するんですよ。でも昔を思うと、そんなことしたらもうケンカですよね、「お前煽ってんのか」みたいな。だからたまに海外大会に行き慣れてない人が握手を拒否すると叩かれたりするんですけど、僕は気持ちめっちゃ分かります。ゲームやる奴って普段は仲良くて冗談言いながらごはん食べるような相手でも、負けたら本気でキレようかなぐらいの負けず嫌いが多いんです。“eスポーツ”と呼ばれる文化になっても、格闘ゲームの原点はそれなんです。
――では、今後の目標を聞かせてください。
僕は一応アークゲーがメインなんですけど実はストリートファイターシリーズもやってまして、前作の『ストリートファイターⅣ』のときもわりと強かったとは思うんです。『ギルティギア』の新作が出た時点で古巣のアークゲーに戻ったんですけど、やっぱりカプコンのゲームってウメハラさんだとか有名な人が多くて、そういう人たちとも勝負したいんですよね。「カプコンカップ」に出場できたら一流のストリートファイター選手っていう感じがあるので、今年の目標は『ストリートファイターⅤ』で「カプコンカップ」出場を狙いたいなと思っています。
3月にアトランタで行われる「FINAL ROUND」が、今年のカプコンプロツアー最初の大会になります。いつも『ギルティギア』と『ブレイブルー』で勝って、『ストリートファイターⅤ』ちょっと出てポロッと負けて終わりだったんですけど、せっかくプロになってゲームできる時間が増えたのでそっちも挑戦していきたいなというのが目標です。同時に、ラスベガスで7月に行われる世界最大規模の格闘ゲーム大会「EVO(Evolution Championship Series) 2017」に『ギルティギア』と『ブレイブルー』があるので、できれば両方で良い成績をおさめたいなと思っています。
――最後に、いつも応援してくれるファンの皆さんにメッセージをお願いします。
これ毎回言ってるんですけど、僕のファンって僕に何を求めているんだろうって思って(笑)。イベントに行くと「ファンです」って言われたりサインも書いたりするんですけど、そのたびに「この人俺のなにがええんやろ」って思っちゃうんです。だからもし格闘ゲーマーとして応援してくれているなら、良い結果を出せるように頑張ります。それ以外で僕アホみたいなミスが多くて、たとえばPS4でしか出られない大会にPS3で出ようとしていたとかそういうのでウケたりするんですけど、今年は重大なミスは侵さないように努めるのでそういうのを期待しているのならムダやで、と伝えたいですね(笑)。
というわけで、インタビューは以上となります。私自身、それほど格闘ゲームに詳しくないので今回このような内容となりましたが、今後機会があれば、もうちょっとゲーム内容にフォーカスしたお話も聞いてみたいなと思いました。とくに今までカプコンのゲームしか取材したことがなかった私としては、アークゲーにも興味を持つきっかけになりました。
自らを“話好き”と分析するどぐら選手。明るくサービス精神旺盛でなんでも答えてくれるうえに、ゲームのこととなると熱く語りはじめるタイプとお見受けしました。彼の軽快なトークに私もつい時を忘れ、当初40分を予定していたインタビューがなんと1時間を超えるロングインタビューに。急きょ前後編としてお届けすることになりましたが、いかがでしたでしょうか。このインタビューを通じて、少しでもどぐら選手や格闘ゲームに興味を持っていただけたら幸いです。
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