Rascal Jesterインタビュー(WyverN選手/alleycat選手/Lillebeltコーチ)―シーズン中に成長するチーム―

プロゲーマーの追っかけ出身である女性ライターのスイニャンがeスポーツ観戦に関するさまざまな情報やコラムを不定期でお伝えします

『League of Legends(LoL)』の日本公式リーグ「LJL Summer Split」の前半戦が終了し、現在1勝4敗で5位につけているRascal Jester(RJ)。古参の名門チームでありながら、昨年は2部リーグに降格。その後メンバーを一新して急成長を遂げ、今年再びLJL昇格を決めました。そんなRJから韓国人プレイヤーのWyverN選手、現在サブメンバーのalleycat選手、そしてLillebeltコーチの3名にお話を伺ってきたので、その模様をお伝えします。

「LJL Summer Split」前半戦、成長はしたもののまだ不十分

(奥から) alleycat選手、Lillebeltコーチ、WyverN選手

 

――まずは今シーズンの前半戦を終えて、率直な感想から聞かせてください。

WyverN:勝てる試合を全部落としてしまったのが残念ですね。7th heaven(7h)とBurning Core(BC)の2チームには絶対に勝たなければならないと思っていたのに、7hには負けてしまったので。使えるチャンピオンの種類が、チームとしてまだ十分ではなかったのかなと感じています。

alleycat:僕は、韓国人選手と日本人選手の実力差が大きいのが問題だと思うんです。ゲーム内容も韓国人選手が引っ張っていった試合は勝てますけど、それができないと負けてしまうので、まだ5人のチームになれていないのかなと傍から見ていて思いますね。

Lillebeltコーチ:やっぱり日本人選手がルーキー3人ということで、とくに実力差はありますよね。うちはゲームの経歴は長くても、チーム経験がない選手ばかりなんですよね。ゲームの経歴自体が短い選手がいるのも、辛いところですね。

 

――具体的にどういった部分で難しさを感じていますか。

Lillebeltコーチ:いわゆる「メタ」と呼ばれる「流行の戦術」って、回っているんですよね。サポートというポジションが「メイジタイプのスキルを撃ってレーンから攻撃的に勝つメタ」から「タンクタイプのレーンは弱いけれど敵を捕まえることや味方を守ることができるメタ」になったり、「序盤強いメタ」から「後半強いメタ」になったり、長く競技シーンにいれば2回目3回目ってなるんですけどうちの場合はだいたい初めてで、全部イチからやらなきゃいけないんです。

alleycat:やっぱり日本人選手が勝因にならないのが問題だと思います。勝つ試合って韓国人選手たちが引っ張ってくれるから、日本人選手に力がなくても勝ってしまうっていうのがあると思います。

Lillebeltコーチ:前のシーズンは結果として自分で考える能力が育たなかったので、今シーズンは日本人選手に徹底的に考えてもらうようにしているんですが、そのクオリティを上げるのに時間がかかっている感じですね。

 

――でも昨シーズンに比べるとチームとしてかなり成長しているように見受けられるんですが、そのあたりはいかがですか。

Lillebeltコーチ:成長はしていると思うんですが、明らかに足りない要素があって、それが思い切り出て負けてしまっているんです。7h戦がまさにそうで、あれは僕としては予想外じゃないんですよ。BC戦の1戦目落としたときもそうなんですけど、有利を生かす能力がまだ育っていないんです。

WyverN:コーチの言うとおりだと思いますが、改善しようと努力はしているので、徐々に良くなってきてはいます。

練習室にて(左から)WyverN選手、Lavie選手、Atyamomo選手、NoA選手、Yuki選手

 

――alleycat選手は昨シーズンレギュラーとして出場していましたが、現在はサブに回っていますよね。そのあたりはどのように考えていますか。

alleycat:試合に出たい気持ちはありますが、新しく加入したLavieのプレイを見たときに「この人上手いな」って思ったので、ミッドのポジションを譲るのは抵抗がなかったです。昨シーズンは僕、余裕がなかったんですよ。ほかのメンバーは2部リーグの「LJL Challenger Series(LJL CS)」から頑張って昇格させてきたけど、僕は1部に昇格した後に任されたからミスは許されないという感じでプレッシャーを感じていました。だから今シーズン、休みの期間をもらえたのは良かったですね。

 

――では、「LJL Summer Split」後半戦の目標を聞かせてください。

WyverN:楽に勝てるチームはひとつもないので、できる限り頑張って最低限4位には入りたいですね。なぜなら、もし入れ替え戦の「Promotion Series」に行ったら運が悪ければ2チームとも降格する可能性があるほど、今回の「LJL CS」に出場しているチームがすごく強いからです。

alleycat:僕の目標は3位ですね。前回4位になれたし、その前は5位になれて順当に上がってきているので、同じ順位を目標にしても意味ないかなと思うので。今の自分の役割は、たまに選手たちがゲーム内容について聞いてきたときに答えることだと思っています。コーチや韓国人選手が言うとどうしても厳しい感じになるんですけど、僕は前のシーズンいっしょに「LJL」を戦ってきたので彼らにとって安心感があるんじゃないかな(笑)。

Lillebeltコーチ:昨シーズンもそうだったんですけど、最初の5戦は成長期間と捉えていました。とくに勝てたRound5のBC戦の2、3戦目っていうのは、やっと結果としてワンステップあがったところだったので、あと何ステップかあるんですけど、それを残りの5戦でどれだけ越えられるかという風に考えていますね。結果は後からついてくれば良いかな、どれだけ頑張っても負けるときは負けるので(苦笑)。

「パワー」の強いコーチとともに和気あいあいと暮らす選手たち

(左から)iSeNN選手、Lillebeltコーチ、alleycat選手

 

――ところでRJのチームの雰囲気ってどんな感じなのでしょうか。まずは、ここにいる3人の人柄から聞かせてもらえればと思います。

alleycat:うちのチームはオーナーとコーチでなんでも決める感じなんですよ。だからそのふたりが「死ね」って言ったら僕たち死ぬしかないんです(笑)。ただLillebeltコーチもこの仕事は初めてなので、こちらから「どうしたら良いかな」とか「これを見てほしい」とか言うようにはしていますね。

Lillebeltコーチ:確かに僕とオーナーですべて決めていますが、alleycatは僕らに意見をはっきり言ってくれるのが良いんですよね。今の環境って僕らが一番上なので、叱ってくれる人が誰もいませんから。

WyverN:ほかのチームは韓国人コーチが多いので、Lillebeltコーチには日本人コーチの道を切り開きたいという意志が感じられますよね。あとこれは僕にとっては良くないときもあるけど、選手が言うことをきかなかったら、権力も腕力もある人が制圧するのが良いと思います(笑)。

alleycat:WyverNはみんなのペットみたいな存在です(笑)。ブルドックみたいな感じで憎たらしい顔してるんですけど、コイツだから仕方ないな、みたいな。人生得する性格だと思いますよ。

 

――WyverN選手の皆に愛されてる感は、見ていてなんとなく分かります(笑)。では、ほかのメンバーについても聞かせてもらえますか。

Lillebeltコーチ:ボットレーンのふたりは真面目ですね。Yukiは責任感が強くて言われたことはちゃんと実践するタイプですが、基本的な考え方に合理性がまだなくて。NoAは意外と我が強いですけど合理的に考えられるので、感情抜きで話せるようになったらLoLでも伸びるのかなと思います。

WyverN:僕と一番仲が良いのはたぶんYukiかな。気楽に接することができる感じです。NoAは自分から何かをやろうというよりは、ほかの人がやろうっていうのについていく感じですね。

Lillebeltコーチ:Atyamomoに関しては練習と本番でパフォーマンスの差が大きいという、あまり見たことのないタイプなんですよね。僕は練習でできなかったことは本番でできないと思っているタイプなんですけど、そういうレベルじゃないぐらい本番に強いので読めないんですよ。

WyverN:でも、実はひとりで悩んでいるんじゃないかな。練習のときも、何か言いたいことがありそうなのに「ごめん」としか言わなくて。ポジションがもともとジャングラーだったから、トップをやるにあたって難しい面があるのは仕方がないなって、僕は思っているんですけどね。

 

――いちばん気になるのは今シーズンから新しく加入したLavie選手なんですが、どんな人ですか。

Lillebeltコーチ:Lavieはマイペースですね。サンダル履きのまま日本にやってきて、携帯と財布を飛行機に忘れてきたっていう(笑)。ゲーム面ではチーム経験がないのでどこまでマインドチェンジできるのかっていう課題があるんですけど、実力はあるので本番でも安心して見られます。

WyverN:特定のチャンピオンの達人なので、得意なチャンピオンのときは自分がやりたいようにやってしまう癖はあると思います。

alleycat:Lavieはひとりで寿司食べに行ったり、マッサージに行ったり、髪切りに行ったりしていて驚きました。日本語全然分からないのに、よくできるなって(笑)。

写真出典:Rascal Jester公式Twitter

 

――試合を見ているだけでは分からない貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございます。最後に応援してくれているファンの皆さんへメッセージをお願いします。

WyverN:うちのチームはあまり強くないのでファンになってもらうのは難しいと思うんですけど、数は少なくても応援してくれるファンの人たちがいるので本当に感謝しています。うちのチームはほかのチームよりも成長スピードが速いと思うので、運が良ければ後半戦も上手くやれるんじゃないかなと思います。

alleycat:僕は言えることなんてないですよ。Lavieのインパクトが強いので、みんな「前のミッド誰だっけ?」ってなってますよ。試合に出ていないので、僕を応援してくれていたファンは消え去りました(苦笑)。

Lillebeltコーチ:僕らは新しいことに取り組んでいます。徐々に結果を出していければと思っているので、「シーズン中に成長するRJ」を見てもらいたいですね。僕のカメラパフォーマンスも、たまにやるかもしれないので見ておいてください(笑)。

(おまけ)ゲーミングハウスで見つけた特徴的な風景

RJは日本人選手のほかに韓国人選手2名とアメリカ育ちのYuki選手がいるため、ゲーミングハウス内の表記が3か国語になっています

Rascal Jester:公式ページ

スイニャン

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韓国在住経験5年。在韓中の2006年ごろeスポーツと出会い、StarCraft: Brood Warプロゲーマーの追っかけとなる。帰国後2009年ごろからさまざまなWEBメディアで取材・執筆活動を行うほか、語学力を活かして韓国人プレイヤーのインタビュー通訳・翻訳や国際大会の日本代表団引率通訳などの活動も行っている。自らはゲームをほとんどプレイせず、おもにプロゲーマーの試合を楽しむ観戦勢。

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