CYCLOPSインタビュー(たぬかな選手/黒豆選手/nazomen監督)―大会やコミュニティ紹介、そして将来に向けて―(後編)

プロゲーマーの追っかけ出身である女性ライターのスイニャンがeスポーツ観戦に関するさまざまな情報やコラムを不定期でお伝えします。

前編ではCYCLOPS athlete gamingに加入するまでのお話や各ゲームタイトルの紹介をしてもらいましたが、後編では具体的な大会や練習の話などを中心に語ってもらいました。話が盛り上がりすぎて、ボリュームたっぷりです。早速、お楽しみください!

CYCLOPSメンバー間の横のつながりは?

――ではここからは、同じチームメイト同士、お互いの印象について聞かせてもらえますか。

たぬかな 豆氏(※黒豆選手)は、初めて会ったときからおっとりした感じの人だなと思いました。でもゲーム中はけっこう攻撃的というか、「相手が弱いと気分が乗ってこないんですよねぇ」とか言っていて(笑)。「日本eスポーツリーグ」も全勝だったので、CYCLOPSの格闘ゲームメンバーのどぐらさんやGO1さんと「やばい、豆氏強い!」って話していました。普段とギャップがすごい感じなので女性ファンとか増えそうだなと思ったんですけど、たぶん女性はFIFAを見ない……(笑)。

黒豆 女性プレイヤーがまず全然いないんです。

たぬかな これは私が荒らすしかないかな(笑)。私けっこうFIFA上手いらしいんですよ。どぐらさんとGO1さんは、「うおー!」って言いながらボールどこかに飛ばしていましたけど。

黒豆 たぬかなさんはシュートセンスがあるんですけど、どぐらさんとGO1さんはシュートセンスなかったです(笑)。あれはあれで面白かったですけどね。

たぬかな そしてなぞ氏(※nazomen監督)の最初の印象は「めっちゃ真面目そうな人やな、怖いな」みたいな感じだったんですけど、チームのことを本当に考えてくれていて細かい経理とかのことまで全部やってくれていて、だけどゲームもやっているから選手のこともすごく考えてくれるので良い監督だなと思っています。

 

――では黒豆選手にとってたぬかな選手、nazomen監督の印象っていかがですか。

黒豆 大会成績の報告をするときに、「私これだけやれるんですよ!」みたいなすごい自信に満ちあふれているのがうらやましいです。あと、「女性だから」っていう理由で男性に負けたくないっていうのをエネルギーにしてゲームしている人だなっていう印象を受けていて、実際に強い男性にも勝って結果を出しているという点ですごく尊敬しています。nazomenさんは……僕ゲームのプロについての知識がなくて、「コーチ・監督って何なんやろうな」って思っていたんですけど、チームの運営の人との橋渡しになって選手のために仕事をしてくれているというイメージです。それでいてStarCraft配信を見たときは圧勝していたので、ゲームも上手いなんて神だなと思いましたね。

たぬかな こうやって上司を持ち上げていくスタイル(笑)。

nazomen これで査定がね(笑)。

たぬかな もうちょっとゴマすっておけば良かった!

 

――ではnazomen監督は、こちらの2名の選手たちを見てどうですか。

nazomen うちの選手は全員が「強くなりたい」って思っているんですけど、そのなかでも一番その気持ちが強いのはたぬかなですね。「女性」という部分で見られることを嫌がっているふしがあって、「腕」だけで見られたいという感じなんです。とくに勝ったときは、「この成績獲りました!」ってすごい勢いで報告に来るんですよ(笑)。

たぬかな 負けたら静か(笑)。

nazomen うちのチームの理念として「強くなきゃいけない」っていうのがあって、たぬかな本人も「強くなかったらプロとしてやっている意味がないので弱くなったら辞める」って言っているぐらいなのでストイックだなと思いますね。黒豆はさっきも話に出ましたが、普段はほわんとしている感じなのにプレイを始めると相手が弱いことにキレ出すんです(笑)。「練習にならない!」とか言い出して。

黒豆 同じぐらいの実力の人とやるのが楽しいですね。「負けて悔しい」って思わないとなかなか上達できないので。勝てる状況が続いてしまうと満足しちゃうんですよ。贅沢言うなら、常にボコボコにされたいですね。「こいつには勝てない」と思わされるぐらいの相手と対戦したいです。たぶん世界大会に出ている選手だったら、そういう腕のプレイヤーはたくさんいると思うので。

各ゲームタイトルの大会やコミュニティの紹介

――世界大会の話も出ましたが、それぞれのゲームタイトルにはどんな大会があるのか知りたいです。また海外や日本のプロシーンやコミュニティについても合わせて聞かせてもらえますか。

黒豆 じゃあ、今度は僕からFIFAについて説明します。まず1対1はゲームの販売元が開催している「FIFA eWORLD CUP」が一番大きな大会で、そこで優勝するのを目標にしているプロプレイヤーが多いです。アジアにも強い選手はいますが、ヨーロッパの選手には歯が立たないっていうのが現状ですね。日本のコミュニティとしては、東京ヴェルディのマイキー選手が主体で動いている「東京FIFA会」があって、月1回ぐらい集まってみんなでFIFAをするオフ会をやっています。でも実は1対1より11対11のコミュニティのほうが盛んで、ユーザー大会自体も3つあります。販売本数が年々増えていて上手いプレイヤーも出てきているので、日本はこれからっていう感じですね。

 

――MOBA系のゲームなどで5人そろえるのも大変って言われているのに、11人そろえるのが盛んって不思議ですね。鉄拳はいかがですか。

たぬかな 鉄拳の場合、前提として日本と韓国が強いのでアジア系のトーナメントが一番きついです。あと東南アジアも最近レベルが上がってきているんですけど、マレーシアとかタイとかフィリピンでは鉄拳がストリートファイターより流行っているんですよ。

nazomen この前もマレーシアの大会に招待されたんですけど、大会名が「たぬかなインビテーショナル」っていう(笑)。

たぬかな 海外の人からすると子供っぽく見られるからか、すごく応援してくれるんですよね。嬉しいことにサインと写真の列が2時間待ちになったこともあります。コミュニティの話をすると、日本って「闘劇」とかのなごりだと思うんですけど地域対抗戦が盛んだったんですよね。地域の派閥みたいなのがあって強いのが東京、大阪、九州の3つ。ここに強豪が集まっていて、大会になると各地の一軍二軍三軍が一堂に会して頂点を決めるみたいな感じです。それはそれで熱いんですけど、狭いコミュニティ同士でいるのであまり広がらないというか、初心者や中級者が入っていける場が少ないのが今後の課題ですね。

 

――では、StarCraftはいかがですか。

nazomen ここまで聞いたどのコミュニティよりも小規模なんですけど(苦笑)、今は毎週末1Dayのオンライントーナメントをほりけんさんっていうプレイヤーが開いていて、そこに出場するのが日本人コミュニティのベースになっています。そこからSNSなどで交流したりしていますね。1対1のゲームなうえにマッチング機能が優秀すぎて、ゲーム内での交流が少ないんですよ。アメリカやヨーロッパにもプレイヤーはたくさんいるので、対戦には困らないです。ただ圧倒的に強いのは韓国で、プレイ人口が多くて知名度も高く、StarCraftを知らないという韓国人は見たことがないほどです。ちょうど今年からStarCraft1も2も無料化されたので、興味ある人はプレイしてみてください!


――StarCraft人口が増えるといいなあと私も常々思っています。さて、それでは今度はご自身の大会での戦績や、印象に残っている大会の動画などを紹介していただけないでしょうか。

黒豆 戦績は「第1回日本eスポーツリーグ」の全勝優勝と、「第2回eスポーツ選手権」での準優勝があります。そのときSCARZのfantom選手に決勝戦で負けちゃったんですけど、かなり試合内容は良かったし動画も残っているはずなので、その試合をぜひ見てもらいたいですね。負けた試合がベストゲームっていうのも何ですけど、個人的には配信された試合では好きな試合です。最近だと、FIFAって毎週末40試合やるランク戦があってそこで40試合40勝を1回やったぐらいですかね。海外の大会にはまだ一度も出たことがないので、今は海外大会に出ることを目標にプレイしています。

たぬかな 私は「Tekken World Tour」の東アジアオンライントーナメントで準優勝だったんですが、韓国の強豪選手を倒して上がってきたのでこれが一番輝かしい成績ですね。日本で一番強いノビ選手に決勝で負けちゃったんですけど、それも良い勝負ができたので良かったかなと思っています。それとアメリカの200人規模の大会「Combo Breaker 2017」では、韓国人選手に1、2位をとられたもののアメリカ人選手を破って3位になりました。そこで盛り上がったのがプール抜けを決める試合で、かなり強い相手で次をとったら勝ちっていうところで「ダブルKO(相打ち)」だったんですよ。動画もクリップされているので、ぜひ見てもらいたいですね。

nazomen 僕はStarCraft1時代に大きな大会にふたつ出ていて、まず「IEF 2009」っていう国際大会に招待されて行ったのが初めてのオフライン大会でした。韓国で開催されたんですけど、そこでいきなりステージに上げられて世界で一番偉大なプレイヤーと言われる韓国人選手とオーロラビジョンつきで対戦をしたという(笑)。負けましたけど、このときの動画をぜひ紹介したいなと思います。もうひとつは「WCG 2010」っていう世界大会で、日本予選を勝ち抜いてアメリカへ行きました。その後StarCraft2になってからは大きな大会には出ておらず、国内の大会でも2位はけっこうあるんですけど優勝はあまりないんですよね(苦笑)。

CYCLOPSメンバーの日常、そしてこれから……
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スイニャン

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韓国在住経験5年。在韓中の2006年ごろeスポーツと出会い、StarCraft: Brood Warプロゲーマーの追っかけとなる。帰国後2009年ごろからさまざまなWEBメディアで取材・執筆活動を行うほか、語学力を活かして韓国人プレイヤーのインタビュー通訳・翻訳や国際大会の日本代表団引率通訳などの活動も行っている。自らはゲームをほとんどプレイせず、おもにプロゲーマーの試合を楽しむ観戦勢。

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