クリアしました。
総評
アドベンチャーとかギャルゲーとしてはめっちゃ楽しかったです。
メインヒロインはみんな素直だし、神山さんも面白3枚目イケメンで非常に好感が持てる主人公だった。
満足度は高い。でも作りの粗さが酷すぎて今どきこんなことある?みたいなのがかなり多かったのも事実。
結論から言ってしまうとユーザーの体験*1を優先していないハリボテの作りの上手さでなんとか仕上げた残念な作品という感想です。
つまりトータルディレクションの問題。なんでそう思うかっていうと細部から滲む、全体的なユーザーに対する姿勢というか設計時点での妥協具合とかからですね。
逆にモーションやモデル、キャラデザやアニメーションそしてBGMなど、部門部門のクリエーターはめちゃめちゃ頑張ってると思う。
下記の感想で脚本をボロクソ言ってるけど脚本担当というより、社内政治やプロモーションの為にあれやこれやを詰め込もうとした結果だと思ってるので根はもっと深く、開発上部の方にあると思う。具体的には華撃団大戦全般。料理をするにはリソースが足りな過ぎた。ユイはすごく好きだけど。その分帝劇のみにフォーカスすれば満足度はもっと高い作品になっていたと思う。
というわけで楽しかったけど、誠意は感じなかったって感じです。お勧めもしません。
矛盾している様に聞こえるかもしれないけど個人的には超楽しんだ上でそう感じました。価格の事を比較に出したくないけど結構な額とっててこの有様だしな。
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以降ネタバレします。
※ここから先はネタバレありです。
旧シリーズはアニメ見てて内容は知ってるけど、ゲームは一切触ってないので比較はなしです。思い入れも特に無いものと理解してください。
●よく言われているフルボイスじゃない!だからだめ!
ってのは、フルボイスじゃないのがダメなんじゃなくて画一的にモーションとカメラワークを付けちゃってて、ごまかし方が致命的に下手って所が一番の問題。
あとボイスを付けるべきイベントと文字情報で十分なお使いイベントとの選別も出来てない。演技の出来を見せるイベントで声無しはないでしょ。
何でもかんでもフルボイスにするべきっていうのは思考停止*2で(そりゃその方がいいけど)、工数に応じた適切なイベントの魅せ方ってものがあると思う。別にボイスが無くてももっとうまくやれると思う。要するにボイスじゃなくて工夫が足りてない。
◆
●戦闘部分が全体的にダメって言うのはその通り。
今の時代のアクションは、ストレスを極力排除して快適性とリプレイ性を高めたうえで難度の高い操作を達成するまでやり直させるってスタイルに向かっていってるのに(sekiroとかセレステとかが分かりやすい例)、
操作性の悪さで難易度を上げようとしていたり、テンポの悪いリプレイ性という時代に逆行した作り。
思想としては10年前でも古いレベル。
壁走りとか表面的にはパクる割に最近のアクションゲームの面白さを全く研究出来ていない。ゲームに興味ない人が作ってるように見える。
アクションパートのイベントがいちいち硬直したカットシーンが入るのもテンポ悪くてダサい。アクションを選ぶならシームレスイベントとセットで導入するべきだった。それが出来ないなら戦闘中のイベントなんてボイスだけでも十分なのに。
◆
●ストーリーに関してはクラリスとあざみ回がめっちゃよかった。かなり見たかったものが見れたました。コンプレックスや葛藤を乗り越えていく、いつの時代でも普遍の面白さがあるストーリー。あざみ回は捻りもあって質が高い。
さくらの帰郷回もお話は凄く良かったけど、あれを初穂回とするのは正直ひどい。最終話で初穂が急に前に出てくるのはその補填だったのだろうか?チグハグすぎない?
6話のデートシーンまでは細かい不満もありつつ、基本的には大満足だった。けどアナスタシアのストーリーに入ってからは最終話まで失速し続けてしまったのが残念。
アナスタシアがあまりにもシナリオの割りを食ってて見ていられないレベル。
大きく違和感を感じたのが2点あって、
まず一つが司馬を撃ったのにその司馬を差し置いてアナスタシアが仲間だどうだって言ってる点。無限での戦闘において影のMVPとも言える様な活躍をしてる司馬に対してあまりにも扱いが悪いのがお話として破綻している。ギャルゲーといえどもそこにいる人間ならそんなに簡単にメカニックである司馬の事を軽く流せないだろう。アナスタシアの前に司馬は仲間として大切ではないのかという。そこで一気にリアリティが無くなってしまった。所詮ギャルゲーっていう妥協が見えて人間を描く気がない。
アナスタシア自体もキャラクターはよかったのに、「司馬に許しを請い、それが許される」っていう当然の筋が通されていないのはもう脚本の不具合。
もう一点が直後にアナスタシアが裏切ったという事実を指摘しただけのカオルさんにブチ切れてあまつさえ謝らせる神山。謝るのはお前の方だよ。
どちらかと言えばここまでの神山のキャラ的にそうはならんやろ感が強くて、神山というよりこれも完全に脚本が悪いと思ってしまった。反射的に切れても謝るのが筋ってもんじゃん?
この辺りのシーン以降、脚本を詰める時間が無かったのかゴリ押しで進めるストーリーが消化試合感があって全然入り込めなくなってしまった。
あとあざみを選ぶつもりだったのにストーリー的にさくらに絆されて、さくらEND見たけどエンディングがあまりに酷くてびっくりした。あんな適当ならマルチエンドである必要ないのでは。大概適当なアトリエのマルチエンドの方がもうちょっとまともだよ。
もちろんよかったところもあって、
天宮さくらが憧れてた真宮寺さくらの正体は、タイムスリップものではままあるオチだけど憧れの実態が実は偶像で、何を追い掛けてたかよりもその結果行動した事が大事っていうテーマ性にも合致しててなかなか良かったと思う。帝剣がらみなのかなと思ってたけど、そもそもあんなド田舎に単身さくらが現れるのが都合良いなとは思ってた。
真宮寺さくらの力でみんなが復活するっていうのは前作の主要キャラに持たせる華としては良い落としどころではないかと。過去作は詳しく知らないけどこういうご都合展開は全然あり。
ただ仮にもさくらの声である夜叉にあんなに悪趣味な悪役セリフ言わせる必要なかったんじゃない?テーマ的な意味もなかったろ。そういうところで表面だけのインパクトを狙った薄っぺらさを感じる。そりゃ横山智佐さんも断るぜ。
悪役の薄さはまあそういうものだと思ってみてたけど、信念というか基本的な理念が一切伝わってこなかったのでそういうあたりが時代遅れ感ある。水戸黄門の代官さまですらもうちょっと行動の意図は伝わってくるよ。
朧なんかプリキュアでも割と早いタイミングで消えてくようなタイプの雑魚のメンタリティの割に相当最後まで出張ったよね。
別に勧善懲悪で問題ないけど降魔にどういう喜びがあって人を襲うのか見たいなことが一切描かれないので物語の駒でしかなかった。ドラクエの魔王でももうちょっと感情伝わるのに。そういう詰まってない所は詰めないのが様式美だ、みたいな甘えを感じる。
ところで白秋先生コラボキャラなのに続編前提で引っ張るとか、そんな欲張り方して大丈夫かよ。と思ってしまった。ほんとは早々に朧を退場させて白秋先生が出てくるはずだったんじゃないの?
あとメインヒロイン以外で良かったのは月組のいつきかな。2面性を見事にメロディで表現したいつきのテーマはなかり痺れた。田中先生のBGMは全部好きだけど、いつきの裏テーマが一番好き。
ひろみさんは幻覚作用のある妖しい饅頭の時点で何かしらバックボーンがあるのかなと思ってたので驚きはなかったけど、いつきは全く予想外だった。これシリーズ既プレイだと分かるものなのかな。
◆
●後はアドベンチャーパートについて。
アドベンチャーパートはこんなに金掛かったギャルゲーは他に無いだろってくらい贅沢ですごく楽しかった。
特にコミュニケーションモードの破壊力は凄い。
キャラクターの顔がこちらの想像以上に懐に入ってくるので、思ったより近いっていう迫力と、徐々に盛り上がっていく会話内容も臨場感があって引き込まれた。アドベンチャーパートはこのモードだけでもプレイする価値があると思う。欲を言えばデートのタイミングでもう一回ずつ欲しかったな~。
どん底から劇場を立て直すってサクセスストーリーも分かりやすくて良かったし、さくらを中心に再起を図っていくのはキャラの掘り下げも兼ねていてよく出来ていたと思う。中盤までは本当に満足感が強かった。
ただ一話でさくらをボコボコに殴るシャオロンには強烈な違和感があった。シャオロン、口は悪いけど面倒見ぜったい良い奴じゃん。あそこシャオロンじゃなくて伯林華撃団の方が壁としては適切だろと思ってる。
選択肢の配置に関しては不満があって、上が無難で右がおふざけっていうように配置が固定なせいで内容を見る前からリアクションが分かっているのは良くなかった。
親切仕様のつもりだったのかもしれないけど、これを選んだらどうなるんだろう?という興味が見事にスポイルされている。
ギャグ回答を見るときは信頼度が減ると分かっていて選ばなければいけないので実質無難しか選びにくいという逆に制限の多い本末転倒な仕様になってしまっている。
配置がバラバラであれば想像し、試す、というゲーム性があったのにもったいない。しかも初週はカットシーンがスキップ出来ないのでリプレイ性も低いという、ユーザーに全く寄り添えていないシステム。逆にどう遊ぶのが推奨なのか教えてほしい。
とは言いつつもネタ回答は結構面白いので、信頼度が下がるのを覚悟に選んでしまったりする。なおさら配置にゲーム性があればと思ってしまう。シャッフル機能アップデートしてくれ。
◆
とりとめなく書いてきたけど大体こんなところかな。
アドベンチャーパートは本当に楽しくて、特にコミュニケーションモードは他のギャルゲーでは全く追随出来ない事をやってる。けど、他の要素がもれなくダメ。っていう極端なゲームでした。
自分が個人的に楽しめたかどうかはまた別で、総じてユーザーの体験に寄り添う気がない、時代遅れの残念な設計思想を持ったゲームって印象。
直前にUI/UX*3面でこれ以上ないくらい痒いところに手が届いていた十三機兵防衛圏をやっていたので落差がデカいのかもしれない。そもそもこのゲーム、バックログすらないからね。売り上げは良いみたいだけど、こんなユーザー軽視した作りだとすぐに見放されるよ。
以上!!