優勝が決まった瞬間、会場の観客席は涙に包まれました。しかしその涙をよく見てみると、かたや嬉し涙、かたや悔し涙―――。
これはRiot Games主催の『League of Legends』(以下LoL)公式国内リーグである「LJL 2018 Summer Split」決勝戦の会場で、実際に私が見た光景です。この日、私は選手の素晴らしい戦いもさることながら、観客席の様子にも思わず目を奪われてしまいました。私が長年愛してきた韓国のeスポーツシーンに引けを取らないファンの熱気を、そこに感じたからです。
ここ数年で「ゲームで真剣勝負をしている」という点や「ゲームを職業にしている人がいる」ということは、日本でもだいぶ伝わったと思います。私もそういった類の記事をたくさん書いてきました。そして少しずつではありますが、選手に注目する動きも出てきています。
LJLでは昨年から全試合をオフラインで実施し、選手の顔が見える大会になりました。試合終了直後にはPlayer of the Matchに選ばれた選手の生の声を聞くことができ、その数日後には選手のパーソナリティにフォーカスした記事を公式サイトで読むことができます。私スイニャンは韓国人選手の通訳および公式サイトの執筆という形で携わらせていただいているのですが、放送や記事のインタビューを通じて選手のファンになる人が増えていくのが感じられて嬉しく思っています。
昨年のレギュラーシーズンの試合はクローズドのスタジオで行われ、決勝戦や開幕戦のみ大きな会場を借りて実施されてきたLJL。しかし今年からは、東京・中野にある「Red Bull Gaming Sphere Tokyo」にて全試合をオフラインで行う形に変わりました。収容人数60人規模の会場ということで、とくに決勝戦においては賛否両論ありましたが、私はその意義と集大成を決勝戦の日にあの小さな会場ではっきりと感じたのです。それはずばり、「ファンダム」の形成です。
「ファンダム」とは、熱狂的なファンのコミュニティのことを指す言葉です。韓国では一般的に使われているのですが、日本語にしっくりくる言葉が見つからないのであえてこの言葉を使わせてください。過去に4000人規模の会場を満員にしたこともあるLJLですが、当時の観客層は単にLoLが好きな人が多かった気がします。つまりゲームそのものの魅力が集めた観客数と言えるのです。
私の知るかぎり、eスポーツ先進国ともうたわれる韓国の成長過程はいわゆる「ボトムアップ」でした。当時人気のあった『StarCraft』というゲームの大会が全国各地域で行われ、やがてそれが広がってプロリーグが発足。小さな会場は選手やチームを応援するファンでいっぱいになり、次第に大きな会場へと場所を移していったのです。
ところが日本のeスポーツは「トップダウン」でいきなり大きな会場に行ってしまったので、おかしな表現かもしれませんが、この成長過程を取り戻す時間が必要だったのではないでしょうか。もちろん熱狂的なファンも存在していましたが、当時は全体的に「プロらしいスーパープレイが見られれば満足」という人の割合のほうが多い印象だったのを覚えています。
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